【第46回日本アカデミー賞】「ある男」窪田正孝に最優秀助演男優賞! 「映画の力は本当に無限」
2023年3月10日 21:27
本作は、「蜜蜂と遠雷」「愚行録」の石川慶監督が、芥川賞作家・平野啓一郎氏の同名ベストセラーを映画化したヒューマンミステリー。窪田は、妻子と幸せに暮らしていたが、不慮の事故でこの世を去った後、別人の戸籍で生きていたことが判明する男を演じた。ミステリアスで影のある一面を繊細に表現する一方で、幼少期から抱えてきた生きづらさや苦しみを、生々しく体現した。柄本佑(「ハケンアニメ!」)、坂口健太郎(「ヘルドッグス」)、目黒蓮(「月の満ち欠け」)、横浜流星(「流浪の月」)らが名を連ねた優秀助演男優賞で、窪田が初受賞を果たした。

受賞前、演じる上での苦労について、窪田は「ストーリー的にキーポイントになるので、情報を出し過ぎてはいけなかったんです。役者は、情報で体のなかを埋めた方が、現場や空間には存在しやすいと思うんですが、あえてそれをしないで、グレーゾーンを残しながら演じる難しさがありました」「出過ぎてもダメだし、引き過ぎてもダメだし、監督と相談しながら演じましたね」と振り返る。

そして、昨年の第45回で最優秀助演男優賞を受賞した鈴木亮平(「孤狼の血 LEVEL2」)からブロンズを受け取った窪田は、「えぇっと……まさか本当にもらえると思っていなかったので、何も考えていませんでした」と、驚きの表情を浮かべる。「本当に『ある男』という作品で、石川監督と出会って、『役の底の底の、本人の中身のもっと深い部分を見つめて撮りたい』と言われて。裸でいるよりも恥ずかしいくらい、全部をむき出しにして、役にぶつかって。それを本当に(安藤)サクラさんが受け止めてくれて、すごく幸せな家族像を描いてくれました」と、妻を演じた安藤への感謝を述べる。
「でも、そういう幸せって本当に一瞬で、人生ではイヤな気持ちになることが多いと思うんですが……。そういう一瞬の人生を、この作品は描いていて、こういうキーになる大役をやらせてもらえたことが、この仕事をしていて本当に良かったなと、いまこの瞬間も噛みしめています」と、言葉を紡ぐ。窪田は本作で、第79回ベネチア国際映画祭、第27回釜山国際映画祭などにも参加。そんな海外映画祭にも思いを馳せながら、「映画の力は本当に無限だし、いろんな人の心をあたためてくれたり、言葉じゃないもので教えてくれたり。そういうエネルギーや力、ポジティブなものが映画にはあるんだなと、一瞬一瞬で感じていて。役者という仕事をできていることに、心から感謝しています。本当にありがとうございました」と、映画への強い思いとともに、スピーチを締めくくった。
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