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「ザ・バットマン」終盤登場のキャラ、影響大の日本映画について――マット・リーブス監督が語る

2022年6月15日 12:00

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1966年から放映されたテレビシリーズ「バットマン」に関連した製作秘話も!
1966年から放映されたテレビシリーズ「バットマン」に関連した製作秘話も!
DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and (C) DC.

THE BATMAN ザ・バットマン」のダウンロード販売が、本日6月15日よりスタート。これを記念して、監督を務めたマット・リーブスのロングインタビューが披露された。

本作の主人公は、両親が殺害された復讐を誓い、悪と敵対する存在“バットマン”になって2年目のブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)。権力者が標的になった連続殺人事件が発生し、その犯人を名乗る知能犯リドラー(ポール・ダノ)が仕掛ける謎に挑む。

リーブス監督のロングインタビューは、充実の内容だ。1966年から放映されたテレビシリーズ「バットマン」(インタビューでは「バットマン66」表記)に関連した製作秘話だけでなく、映画の終盤に登場する“あの”キャラクター、「THE BATMAN ザ・バットマン」に影響を与えた日本映画を明かしている。

※本記事には、映画のネタバレとなる箇所があります。未見の方は、十分にご注意ください。

画像2DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and (C) DC.
――これまでの映画では、バットマンは完璧なキャラクターとしてのイメージがありました。しかし今作のバットマンは、未熟で、人間味があり、とても共感できるキャラクターとして描かれています。ロバート・パティンソンはそのキャラクターを繊細に演じられていましたが、監督から見て、ロバートの演技でもっとも思い出深いシーンは?

オーマイゴッド! ロバートの演技でもっとも思い出深いシーンかい? ロブの演技は、映画全体を通して、僕たちのことを運んでくれる演技なんだ。キャラクターの視点(で見ているもの)が、観客がビジュアルで見ているものであり、また経験しているものであるというアイディアなんだ。

彼は、このキャラクターのすべての側面を見せていると感じるから、一つの演技を選ぶのは僕にとっては難しいよ。彼は、キャラクターの激しい怒りも見せるし、弱さも見せる。アルフレッドにあることが起きた後、病院でアルフレッドと話している時、ロブはすごく感情的だった。ロブが演じてみせたことは、キャラクター全体に、そういう幅をもたらすことだったと思うんだ。彼は、すべての面で、このキャラクターを見せてくれたと感じる。僕にとっては、それがもっとも素晴らしいことだったよ。

僕はこのキャラクターを、彼の人間性を感じることが出来るバージョンのバットマンにしたかったんだ。それが、ロブがキャラクターに持ち込んだことだよ。彼は、まったく予想外の視点から、すべてのことを考えるんだ。弱さだけじゃなくね。僕たちは、カウルとケープを身につけている探偵であることが、どれほど奇妙なことかについて話し合っていた。

ロブは「もし僕が、これらすべての警官たちと一緒に犯罪現場に行ったら、とても自分を意識してしまうと思う。だから、僕は、シャーマンみたいであるべきだと感じる。まるで、その空間を歩いている幽霊みたいなんだ」と言っていた。僕たちはあのシーン(バットマンが殺人現場の現場検証に登場するシーン)をそういうふうにやることにした。

彼はまるで幽霊のような存在だったんだよ。ロブは、このキャラクターのすべての側面にすごくたくさんのことを持ち込んだ。

この映画を作る上での目標は、このキャラクター全体を掘り下げることだったと思う。

画像3DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and (C) DC.
――本作に登場する新しいバットモービルは、マッスルカー(排気量の大きなアメリカ車)にインスパイアされたそうですが、バットマンとペンギンによる圧巻のカーチェイス・シーンで、特に注目して欲しいところを教えてください。

バットマンの映画を、印象的なカーチェイスなしに作ることは出来ないよ。僕は子供の頃にアダム・ウェスト主演の「バットマン66」を見ていたんだけど、昔のLincoln Futuraを基にしたあのバットモービルが、僕の夢のバットモービルだったんだ。

それで、僕が今作でやりたかったこと、それは、なぜ誰かがバットモービルを使うのかを考えないといけなかった。バットモービルを乗り回すのはあまり理にかなっていない。とても目立ってしまうから。そうだろう? だから、ある目的があることを意味していたんだ。僕にとって、その目的とは、(バット)スーツと同じだった。

それは、暗闇から出てくることを意味していた。ほとんどホラー映画みたいにね。だから、車が登場するところは、とても重要な瞬間なんだ。なぜなら、それは基本的に、バットマンがビースト(野獣)として登場するということだからだよ。

スティーブン・キングの「クリスティーン」という小説がある。取り憑かれたみたいな車が出てくるんだ。僕はバットモービルをビーストのようにしたかった。影から飛び出してくる動物みたいに。それはまた、バットマンの“容赦のなさ”も反映している。彼には、70年代の映画「フレンチ・コネクション」みたいな、取り憑かれたような衝動があるんだ。ああいうカーチェイスだよ。とても実用的で、とてもリアルに感じられるんだけど、またとても直感的で、ほとんどホラー映画みたいなんだ。

だから、僕にとって重要だったことの一つは、バットマンがただ暗闇から出てくるだけじゃなかった。彼がこれらの混沌とした状況を経験しながらも、彼はある意味、火の中に飛び込むんだ。彼が、車の野獣であるというアイディア、そしてそれがマッスルカーであり、バットマンが自分で作れたかもしれないようなアメリカ車であるということ。それがまさに目標だったんだよ。

画像4DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and (C) DC.
――映画を何回か見た時になら気づくかもしれない、小ネタはありますか?

もちろん。さっきも話したけど、僕は「バットマン66」からバットマンのファンなんだ。あのアダム・ウェストの古典的な番組で、彼の書斎にシェイクスピアの胸像がある。そして頭を持ち上げてボタンを押すと、2本の柱が現れて、バット・ケイブに降りて行けるんだ。

だから、僕はプロダクション・デザイナーのジェームズ・チンランドに、僕たちは、ライブラリーにあのシェイクスピアの胸像を置かないといけない、と言ったよ。だから、「バットマン66」のちょっとしたものがいろいろある。火が噴き出すタービン・ジェットのアイディアでさえ、「バットマン66」から来ているんだよ。この映画のトーンは、あのキャンピーな(滑稽なほどに大袈裟に演じられた)番組とはまったく違う。

でも、僕のバットマンに対する愛は、元々あの番組から来ているんだ。だから、ちょっとした細かい所にこだわって作った所が沢山あるよ。

画像5DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and (C) DC.
――本作で監督はバットマンとキャットウーマンの関係をどのように描きたかったのでしょう。

バットマン(ブルース)とキャットウーマン(セリーナ)に関して興味深いのは、このストーリーでは、二人とも孤児だということ。彼ら自身そういうことを分かち合っていることに気づいていないけど、二人を結びつけている何か本能的なことがある。でも、彼らはまったく違うバックグラウンドから来ている。

ブルースを孤児にしてしまうトラウマが起きた後、彼にはセーフティネット(安全網)があった。それは、億万長者であること。そして、ヴィジランテ(自警団員)になる能力としてその資産をセーフティネットとして使ったんだ。それはある意味贅沢というものだ。

セリーナに(トラウマになるようなことが)起きた後、彼女はそういうものを何も持っていなかった。だから、彼女は自身の機転を利かせないといけなかった。サバイバーなんだよ。

キャットウーマンは、バットマンが彼女のことをどのように思っていて、どういう人か決めつけているのをわかっている。なぜなら、彼女が不道徳な世界に存在しないといけないことだけで、彼女自身も不道徳に違いないと思っているからだ。そして、バットマンはキャットウーマンを正しくない方法で、判断している。でも、それは彼が保護されてきたからなんだ。そして二人の関係が、彼にある種の“目覚め”をもたらすことになる。彼が今まで見ないで済むよう、保護されてきたこと、そして現実があることに気づくんだ。彼はこれまで一度も、彼女のようにサバイブしないといけないことがなかった。

彼らは、根本的に正反対だけれど、同時にとても深いつながりがある。二人の関係は、お互いに惹かれ合うけど、決して一緒にはなれないという、ある意味古典的な(フィルム)ノワールみたいな関係なんだ。

それは、この映画の核の一つである実に興味深い綱引きだと思う。この映画は、アクションやスペクタクル、ホラーに満ちている映画である上に、多くの意味においてラブストーリーでもあるんだ。だから、彼らの関係はとても重要だよ。

画像6DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and (C) DC.
――映画の終盤に、リドラーが、アーカム・アサイラムで誰かと話しているシーンが出てきますが、将来的に重要になるんでしょうか?

将来的にどうなっていくか、ということを話すのは難しい。僕たちにプランはあるけれど、それは本当に、この映画の世界をファンがどのように受け取ってくれるかにかかっているんだ。今後、どういうことをするかについて、たくさんアイディアは持っている。

ここで言えることは、僕はこのストーリーを、バットマンだけのオリジン・ストーリーにしない、ということをとても意識的にやった。

これは、初期の頃のバットマンの話なんだ。「バットマン」のコミックで知ることになる多くの伝説的なキャラクターたちは、みんな彼らのオルターエゴ(別人格/分身)として登場する。だから、彼ら全員のオリジン・ストーリーなんだ。

僕たちは、キャットウーマンになりつつあるセリーナ・カイルに会う。彼女はまだキャットウーマンじゃない。親玉になりつつあるペンギンに会う。でも、彼はまだペンギンじゃない。

それはまた、アーカム・アサイラムにいるこの特別なキャラクターにとっても同じことだ。彼はまだ、僕たちが知っていて、彼がそうなる伝説的なキャラクター、ジョーカーじゃない。でも彼は、最終的にそうなるすべての要素を持っているんだ。

僕はこのストーリーを、リドラーとジョーカーが、一緒にいるところで終えたかった。なぜなら、権力構造が解体した後に、希望がある状況は初めてのことなんだ。バットマンは、この腐敗がもたらしていた締め付けから、ゴッサム・シティを自由にするのをある意味助けた。

でも今、初めて希望がありうるかもしれない瞬間である一方、権力の真空地帯があるということでもある。それは、多くの人々が、災難を抱えることになることを意味している。これらの男たちはそういうことを代表しているんだ。

だから、ストーリーの最後、セリーナとバットマンのシーンで、彼女は「あなたは、この街が決して変わることはないことを知っているでしょう」と言う。

彼女は正しいよ。なぜなら、彼ら2人(リドラーとジョーカー)が一緒にいるところを見たところだからだよ。それは、ゴッサム・シティにおいて、トラブルが終わることは決してないという一つの例なんだ。

――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

僕は「クローバーフィールド HAKAISHA」で日本に行ったんだ。日本文化は僕にとってとても重要だ。実際のところ、日本が、特に日本映画が、この映画に影響を与えたんだ。

僕のインスピレーションの一つは、黒澤明の「天国と地獄」だからだよ。

三船敏郎のキャラクターが、映画全体で彼を苦しめてきた誘拐犯(山崎努)に向き合うシーンがある。そして誘拐犯は、「ずっとおまえは丘の上に住んでいて、俺は下にある地獄にいたんだ」ということを話す。それは、彼らのイメージがお互いに投影されている、非常に心に残るシーンなんだ。

僕にとって、そこには何かがあり、それは、リドラーとバットマンの関係に埋め込まれているんだよ。

だから僕は、この映画を日本のファンと分かち合うことにとても興奮しているよ! なぜなら、日本文化は、今作に非常に影響を与えたからだ。そして、僕に影響を与えたんだ。僕は日本映画が大好きなんだよ!

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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