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こんな時期だから、なお尊い! ウイルスに打ち勝って幕を開けた2022年1~2月の10本を熱烈レビュー!!【若林ゆり 舞台.com】

2022年2月18日 19:00

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忘れがたい10本の作品をレビュー
忘れがたい10本の作品をレビュー

新型コロナウイルスの感染が始まって2年を経てなお、厳しい状況が続く演劇界。今年に入ってからはオミクロン株が拡大し、「公演中止」の悲報が相次いでしまった。けれど、こんな世の中だからこそ、生で舞台を味わえることの尊さを痛感する今日この頃。上演する側も観劇する側も覚悟をもって臨んでいるゆえか、作品の発するメッセージ量がすごく、まるで突き刺さるように、鮮明に伝わる感覚が確かにあるのだ。そこで、この1月末~2月中旬にかけて中止の危機を乗り越え(または一部中止期間を乗り越え)上演された、忘れがたい10本の作品について記しておきたい。


▽「hana -1970、コザが燃えた日-」

(左から)アキオ(岡山天音)、ナナコ(上原千果)、おかあ(余 貴美子)、ハルオ(松山ケンイチ)は家族だった
(左から)アキオ(岡山天音)、ナナコ(上原千果)、おかあ(余 貴美子)、ハルオ(松山ケンイチ)は家族だった
撮影:田中亜紀

まず、がしーっと心を鷲づかみにされたのが、ホリプロ製作、栗山民也演出、畑澤聖悟オリジナル脚本(舞台版「母と暮らせば」のコンビ)による「hana -1970、コザが燃えた日-」。ときは沖縄返還の2年前、沖縄のコザ地区(現在の沖縄市)で市民が米兵への怒りを爆発させた“コザ騒動”の起きた夜。戦後沖縄を象徴するようなバー「hana」を経営する「おかあ」(余貴美子)のもとには娘のナナコ(上原千果)とヒモのジラースー(神尾佑)がいるが、さらにこの夜、教師をしている次男のアキオ(岡山天音)、ヤクザ者の長男ハルオ(松山ケンイチ)が帰ってくる。そこで過去と現在が交錯し、胸を突くような“真実”が姿を見せる。

ハルオを演じる松山
ハルオを演じる松山
撮影:田中亜紀

いびつで愛おしい家族の歴史と心のあり方を通して、いまに続く沖縄の立場や問題、やり場のない慟哭がぐいぐい浮かび上がってくるセリフ劇は、スリリングで圧倒的。「演劇の力」をまざまざと感じさせる衝撃作だった! 東京公演が一部中止となり、大千秋楽を迎えるはずだった宮城公演が中止となってしまったのは実に残念。必ずや再演されるべき作品だ(沖縄での上演も)。公演についての詳しい情報は公式サイトへ(https://horipro-stage.jp/stage/hana2022/)。

ジラースー(神尾佑、左)とおかあ(余)
ジラースー(神尾佑、左)とおかあ(余)
撮影:田中亜紀

▽「天日坊」

(左から)地雷太郎の中村獅童、天日坊の中村勘九郎、人丸お六の中村七之助
(左から)地雷太郎の中村獅童、天日坊の中村勘九郎、人丸お六の中村七之助

コクーン歌舞伎第十八弾「天日坊」は、河竹黙阿弥の隠れた名作を宮藤官九郎が現代の味付けでよみがえらせた意欲作。10年ぶり、待望の再演である。将軍頼朝のご落胤(らくいん/身分の高い男性と、正妻以外の身分の低い女性との間に生まれた子)になりすまし、罪を重ねながら波瀾万丈の旅を続ける天日坊の自分探しは、「アッ」と思わせる仕掛けがいっぱい。ワクワクさせられることこの上なしだ。「いま」を映すようなセリフ回しやトランペットの音色など、古い歌舞伎を刷新し塗り替えようとする「コクーン歌舞伎」のなかでも斬新さは随一。

自分を探そうとする天日坊(勘九郎)
自分を探そうとする天日坊(勘九郎)

初演時には荒削りで生真面目さが滲んでいた(それはそれで魅力的だった)中村勘九郎の天日坊は、10年を経てより深く厚く、より軽妙に、より人間味のある悪党像を投げかけてくる。あの父君、中村勘三郎の姿が重なるような。何より、「歌舞伎、面白い!」と素直に感嘆できること請け合いだ。同じく円熟味を増した中村獅童中村七之助コンビに加え、今回初役で北條時貞を演じる中村虎之介、傾城高窓太夫を演じる中村鶴松がキュートで新鮮。2月26日まで東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演中。詳しい情報は特設サイトへ(https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/22_kabuki/)。

(左から)お六(七之助)、太郎(獅童)
(左から)お六(七之助)、太郎(獅童)

▽「SINGIN' IN THE RAIN ~雨に唄えば~」。

映画スターのドン・ロックウッド(アダム・クーパー、中央)とリナ・ラモント(オリビア・ファインズ、中央右)は偽装カップル
映画スターのドン・ロックウッド(アダム・クーパー、中央)とリナ・ラモント(オリビア・ファインズ、中央右)は偽装カップル
撮影:阿部章仁

この時期、個人的に最もハラハラしながら祈るような気持ちで待ち望んでいた舞台といえば、「SINGIN' IN THE RAIN ~雨に唄えば~」。サイレント映画がトーキーに移り変わる時代のハリウッドを舞台にした、とびきり愉快でロマンティックな名作ミュージカル映画を完全舞台化。アダム・クーパー主演で3度目となる来日公演は、昨年上演の予定だったが、今年の1月22日開幕に延期されていた。そこへオミクロンである。イギリスからの来日カンパニーが欠かせないだけに「今回もダメかもしれない」と半ば諦めかけていた……が、2月2日に開幕が押したとはいえ奇跡の上演実現! よくぞ来てくださった。古きよきミュージカルの醍醐味であるハッピー感を、史上最大級に味わわせてくれるこの作品、これほど湧きあがる喜びを噛みしめた観劇体験はないかも!

ドン(クーパー)と親友コズモ(ロス・マクラーレン)、新人女優キャシー(シャーロット・グーチ)のご機嫌なナンバー「Good Morning」
ドン(クーパー)と親友コズモ(ロス・マクラーレン)、新人女優キャシー(シャーロット・グーチ)のご機嫌なナンバー「Good Morning」
撮影:阿部章仁

表題ナンバーをどしゃ降りびしょ濡れ席で見ることは叶わなかったけれど、どの曲でも歌い出し、踊り出したいほどの興奮を味わった。こんな時期だからこそ、ライブでしか味わえない至福の体験だったと心から思う。制作陣とクーパーらカンパニーの全員に、心からの感謝を捧げたい。東京公演は終了、大阪公演は2月18日~21日、オリックス劇場で行われる。詳しい情報は公式サイトへ(https://singinintherain.jp)。

土砂降りの中で歌い踊るドン(クーパー)
土砂降りの中で歌い踊るドン(クーパー)
撮影:阿部章仁

▽「SLAPSTICKS」

ハイになった女優のメイベル(壮一帆)に困惑するジョー(木村達成)
ハイになった女優のメイベル(壮一帆)に困惑するジョー(木村達成)
撮影:若林ゆり

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の戯曲を気鋭の演出家が手がける「KERA×CROSS」シリーズ第4弾は、サイレントコメディの撮影現場を舞台とする「SLAPSTICKS」。昨年12月に東京・北千住のシアター1010でスタート。ツアー公演を経て、シアター・クリエでの凱旋公演が2月に開幕した。これは93年に「ナイロン100℃」の第2回公演として初演、2003年にはパルコ劇場で、オダギリジョー主演により再演された作品。今回は、サイレントコメディ映画に魅せられた若き助監督ビリー役を木村達成、演出は映画「サマーフィルムにのって」の脚本などでも知られる三浦直之

アリス(桜井玲香)とジョー(木村)の映画デート
アリス(桜井玲香)とジョー(木村)の映画デート
撮影:若林ゆり

1920年代ハリウッド、現在のように「コンプライアンス」や「働き方改革」なんてまるでない時代。舞台は実際にサイレントコメディの映像をチラッと映しながら(これは初演以来)、面白い映画を作ることに命を懸けていた、ハチャメチャで愛すべき映画バカたちの姿を綴っていく。

ロスコー・アーバックル(金田哲、右)を思うジョー(木村)
ロスコー・アーバックル(金田哲、右)を思うジョー(木村)
撮影:若林ゆり

内省的で傍観者的だったオダギリ版ビリーに比べると、木村ビリーはよりイノセントで感情豊か。自ら盛大に巻き込まれ、映画愛もビシビシ感じさせることで“青春”の色合いが増し、後半、失われたものへの哀惜を訴えるような場面とのコントラストが鮮やかに出た。幕切れに表出する三浦オリジナルの演出はもう少し短くてもよかったのではと思うが、全体として出色の出来だと思う。シアタークリエ公演は2月17日まで。詳しい情報は公式サイトで(https://www.tohostage.com/slapsticks/)。


▽「ラ・マンチャの男

セルバンテスが演じるドン・キホーテ役の松本白鸚
セルバンテスが演じるドン・キホーテ役の松本白鸚
写真提供:東宝演劇部

日生劇場では、松本白鸚が50余年にわたり演じ続けてきた「ラ・マンチャの男」が、いよいよラストランを迎えている。70年に市川染五郎(当時)としてブロードウェイに乗り込み、10週間にわたる公演を成功させたことなど、まさに伝説と偉業の遍歴だ。これが見納めになるなんて! 小学生の頃から数え切れないほど見てきた筆者にとっては感慨無量である。

アルドンザ役に返り咲いた松たか子
アルドンザ役に返り咲いた松たか子
写真提供:東宝演劇部

この公演も初日を開けて2日後に、まさかの公演中止。一度は涙をのんだ筆者も、再開後に観劇することができた。この白鸚演じる「ラ・マンチャ」に、何度魂を揺さぶられ、心を奮い立たされてきただろう。今回も、齢80を目前にしているとはとても思えない声の艶、深み。前回まで以上に白鸚自身の生き方、心意気とドン・キホーテの精神がピタリと重なって響いてくる。独特のリズミカルな節回しがなんとも心地よく……。「一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿のために戦わないことだ」。白鸚の声で、このセリフを何度も反芻しながら生きていきたいと切に思う。公演は東京・日生劇場で2月28日まで。詳しい情報は公式サイト(https://www.tohostage.com/lamancha/)で確認できる。

(左から)サンチョ(駒田一)、キホーテ(白鸚)、アルドンザ(松)
(左から)サンチョ(駒田一)、キホーテ(白鸚)、アルドンザ(松)
写真提供:東宝演劇部

▽「The View UPASTAIRS -君の見た、あの日-」

過去にスリップしたウェス(平間壮一、左)はパトリック(小関裕太、右)と恋に落ちる
過去にスリップしたウェス(平間壮一、左)はパトリック(小関裕太、右)と恋に落ちる
撮影:森好弘

小品ながら見応えのあった公演が、ミュージカル「The View UPASTAIRS -君の見た、あの日-」。73年に米ニューオーリンズで起きた放火事件をモチーフに、LGBTQの人々を描いた群像劇。オフ・ブロードウェイ作品の日本初演である。ときは現代、デザイナーのウェス(平間壮一)はニューヨークからニューオーリンズへと移り、廃墟と化した建物を買う。すると突然70年代、当時“はみ出し者”たちが強い絆を育んでいたバー「アップステアーズ・ラウンジ」へとタイムスリップ。さまざまな個性と事情を抱えた彼らと触れあうことで、ウェスの中で何かが変わる。

みんなの絆の芯となっているウィリー(岡幸二郎)
みんなの絆の芯となっているウィリー(岡幸二郎)
撮影:森好弘

痛ましい事件が題材であるから、覚悟して臨んだ。しかし、そこで目にしたのは美意識の高い空間と衣装、レベルの高い歌とダンス、マイノリティたちが生き生きと過ごすコミュニティの温もりだ。もちろん彼らには差別社会の醜悪さが立ち塞がっているし、苦悩も傷も深い。そんななかで彼らが“生きた証”こそが、見る者を魅了し問いかけてくるよう。まとめ役を担いつつ場をさらう岡幸二郎の声と存在感が、作品に奥行きを与えた。東京公演は終了。ライブ配信のアーカイブが2月18日午後8時まで購入・視聴可能で、大阪公演は2月24日~27日、森ノ宮ピロティホールで行われる。詳しい情報は公式サイトへ(https://theviewupstairs.jp)。

ウェス(平間、前列左)のお手製コスチュームで歌うフレディ(中央)
ウェス(平間、前列左)のお手製コスチュームで歌うフレディ(中央)
撮影:森好弘

▽「シラノ・ド・ベルジュラック

ガスコン青年隊とシラノ(古川雄大)
ガスコン青年隊とシラノ(古川雄大)
撮影:若林ゆり

これまでに数え切れないほど映像化・舞台化がなされてきたエドモン・ロスタンの傑作戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」だが、この尖り方、斬新さにはビックリだ。マーティン・クリンプ脚色、ジェイミー・ロイド演出、ジェームズ・マカボイ主演で評判を取り、ナショナル・シアター・ライブによって映画館公開もされたバージョンの、谷賢一演出による日本版。

思いが溢れるシラノ(古川)
思いが溢れるシラノ(古川)
撮影:若林ゆり

主演の古川雄大はどこから見ても美形そのものだが、鼻を付けずに醜男シラノを演じる。幕開けからスタジアムのベンチを思わせる無機質なセットにボイスパーカッションが響いたと思えば、見事に韻を踏んだ名調子の丁々発止をラップバトルに置き換えてみせるなど、徹底的に現代化&簡略化した象徴表現で鋭く見せる演出。

クリスチャン(浜中文一)の代わりにロクサーヌへの恋心を伝えるシラノ(古川)
クリスチャン(浜中文一)の代わりにロクサーヌへの恋心を伝えるシラノ(古川)
撮影:若林ゆり

演者はほとんど客席に向かってしゃべり、演技しているが、朗読劇ではない。このやり方だとロスタンが描いた自己犠牲のロマンは薄まってしまうし、言葉も表現も直接的になり情緒に欠けすぎと思える部分もあった。翻訳は苦労したと思うが、ラップ的なものと日本語の美とは親和性が高いとは言えず、言葉の魔力が不足気味。それでも観客の想像力に挑むような、言葉と想像力との格闘技のような芝居作りにはゾクゾクさせられた。ヒンヤリと鋭い世界観の中で、古川の情熱的な、人を思う気持ちの切なさがまっすぐに届いたのも印象的。2月20日まで東京芸術劇場 プレイハウスで、2月25日~27日にCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで上演。詳しい情報は公式サイトへ(https://www.cyrano.jp)。


▽「ボディガード」

ステージに立つレイチェル(新妻聖子)
ステージに立つレイチェル(新妻聖子)
撮影:岸隆子

ホイットニー・ヒューストンケビン・コスナー主演で92年に大ヒットした映画「ボディガード(1992)」のミュージカル版は02年にロンドンで生まれ、19年に来日ツアー公演が上陸。そして20年の春には柚希礼音新妻聖子ダブルキャストのレイチェル、大谷亮平のフランクで、日本キャスト版を観劇できるはずだった。ところが新型コロナの影響で、上演できたのは大阪での5公演のみ。多くの観客にとって幻となってしまった。その再生版が、いよいよ東京でも幕を開けた。

レイチェルを抱き救出するフランク(大谷亮平)
レイチェルを抱き救出するフランク(大谷亮平)
撮影:岸隆子

ストーリーはほぼ映画版の通りだが、ミュージカルの強みは、レイチェルのショーシーンが楽しめること! もちろん「エンダーーー」で知られる名曲「I will always love you」もバッチリ聞くことができる。さらに今回は歌姫May J.が加わり、トリプルキャストというのもお楽しみだ。

恋心に揺れるレイチェル(柚希礼音)
恋心に揺れるレイチェル(柚希礼音)
撮影:岸隆子

筆者は柚希・新妻のレイチェルを観劇(May J.さん申し訳ない)。小柄でありながら圧倒的な声量と歌唱力を誇る新妻は、レイチェルとしての説得力抜群。もう鳥肌ものの声! 母親としての芯の強さと脆さ、マイペースさを感じさせる役作りも楽しめた。対して柚希レイチェルはショースターとしての華やかさとダイナミックなダンス、パンチの効いた歌で客席を魅了し、“恋する乙女”の繊細な内面もかわいらしく表現。正反対でどちらもチャーミング、甲乙付けがたい。May J.版も見たい! 2月19日まで東京国際フォーラム ホールCで上演。詳しい情報は公式サイトへ(http://bodyguardmusical.jp)。


▽「笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-」

数奇な人生を辿るグウィンプレン(浦井健治)
数奇な人生を辿るグウィンプレン(浦井健治)
写真提供:東宝演劇部

ミュージカル「笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-」は、「レ・ミゼラブル」のビクトル・ユーゴー原作。子どものころに貴族の慰み者として売り買いされ、口の端を笑った形に引き裂かれたグウィンプレン(浦井健治)と、彼が拾った盲目の美少女・デア(真彩希帆、熊谷彩春)をめぐる数奇な愛の物語。これは28年にサイレント映画化されており、この映画のグウィンプレンが「バットマン」シリーズのジョーカーに多大な影響を与えているのは有名な話だ(本ミュージカルの元になったのは12年の映画「ヴィクトル・ユゴー 笑う男」)。

(左から)惹かれ合うグウィンプレン(浦井)とデア(熊谷彩春)
(左から)惹かれ合うグウィンプレン(浦井)とデア(熊谷彩春)
写真提供:東宝演劇部

日本では19年に続く再演であり、コロナによる中断を経て再開した。とにかく「いかにも帝国劇場の東宝グランドミュージカルらしい」作品と言える。美しい舞台美術と衣装、スターキャスト、フランク・ワイルドホーンらしい大曲たち、幻想的な世界観に浮かび上がるヒューマニズムとロマンティシズム。「金持ちの天国は貧者の地獄でできている」というテーマに戦慄しながら、悲劇と愛がもたらすカタルシスに耽溺できるのだ。ふたりを拾って育てるウルシュス(山口祐一郎)の無償の愛にも涙腺崩壊。無垢の化身デアは、思わず守りたくなる可憐な熊谷、はかなげ心許なげでありながらどこか凛とした真彩、どちらもいい。2月19日まで東京・帝国劇場、3月11日~13日に大阪・梅田芸術劇場メインホール、3月18日~28日に福岡・博多座で上演。詳しい情報は公式サイトへ(https://www.tohostage.com/warauotoko/)。

純粋無垢なデア(真彩希帆)
純粋無垢なデア(真彩希帆)
写真提供:東宝演劇部

▽「ロッキー・ホラー・ショー

フランク“N”フルター(古田新太、右)と人造人間ロッキー(武田真治)
フランク“N”フルター(古田新太、右)と人造人間ロッキー(武田真治)
撮影:細野晋司

伝説的カルト映画を生んだカルトミュージカルの金字塔「ロッキー・ホラー・ショー」も、ツアーのトップバッターになるはずだった神奈川公演が中止となるが、大阪、広島、北九州を経て東京で幕を開けた。これは5年前に好評を博した河原雅彦演出のバージョン。なんと、松本白鸚の「ラマンチャの男」、アダム・クーパーの「SINGIN' IN THE RAIN」と並んで「古田新太のフランク“N”フルター見納め興行」なのである。

狂気と圧巻のフルター(古田)
狂気と圧巻のフルター(古田)
撮影:細野晋司

いやぁ、この作品はストーリーなんてハチャメチャそのもの、ただリチャード・オブライエンがB級SF怪奇映画2本立てへの偏愛とグラムロック愛をぶっ込み、好きなように作っただけのミュージカル。これがどうしてカルト化したかと言えば、客が勝手に盛り上がったから。つまり盛り上がった者勝ちなところに価値がある祭ゆえ、観客をめいっぱい参加させちゃおうという河原の演出は大正解。今回はコロナ禍ゆえできないこともある。

巻き込まれたブラッド(小池徹平)とジャネット(昆夏美)
巻き込まれたブラッド(小池徹平)とジャネット(昆夏美)
撮影:細野晋司

しかしいま、できる範囲で、ライブの醍醐味を味わい尽くせるこの作品のなんと楽しいことか! 声が出せない代わりに音声の出るガンとかペンライトも、ロビーで買える(ちょっと高いけど)。古田新太のフルターはティム・カリーと比べればそりゃセクシーさには欠けるが、声は至ってセクシーだし、変態性、ふざけたカリスマ性は天下一品! 小柄な小池徹平昆夏美カップルのかわいさも悶絶もの。ただ夢みてちゃダメ! 大騒ぎして夢にならなきゃ! 最高だから! 2月28日まで東京・PARCO劇場にて上演。詳しい情報は公式サイトへ(https://stage.parco.jp/program/rhs2022)!

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