【独占インタビュー】菅田将暉&杏、“親子”の縁が繋いだ確かな信頼関係
2021年10月23日 10:00
ビンチェンゾ・ナタリ監督が1997年に発表したカナダ映画「CUBE」は、謎の立方体で構成されてトラップが張り巡らされた謎の迷宮に閉じ込められた男女6人の脱出劇を描いたシチュエーションスリラーで、低予算ながら世界的なヒットを記録した。そんなカルト的人気を誇る「CUBE」が、ナタリ監督初の公認リメイク作品として日本で新たに製作されると聞き、耳を疑った人は少なくないだろう。オリジナル作品を鑑賞したことのあった菅田将暉と杏も、オファーを受けた当初は同様の反応を示したと朗らかな口調で話し始めた。(取材・文/大塚史貴、写真/根田拓也)
菅田「最初は、海外のチームが日本版の『CUBE』を、日本の文化に合わせた密室劇として撮るという話だったんですよ。そこで改めて観直したんですが、やっぱりすごく良く出来ていて、僕らに出来ることってあるのかなとも正直思いました。でもその後、コロナの影響で向こうのチームが来られなくなったわけですが、テーマ自体はあまり変わっていない。オリジナルだと警察官がいたり殺し屋がいたり、職種が結構違いますよね。日本で殺し屋っていうと、現実味を出すのは難しい。変に職業がついていない状態でやる方が面白いんじゃないかなと思ったのを覚えています。それにコロナ禍でしたから、実生活とリンクした撮影でしたね」
杏「大枠は一緒なんだけど、細かい部分は全然違うんですよね。私が演じた役も、原作とは全く異なりますから。ある意味で、別もののような感じで、あまりオリジナルを意識することなく作品に取り組めたかなとは思います」
日本版のタイトルは、「CUBE 一度入ったら、最後」。全方向に扉が付いた謎の立方体の部屋で目覚めた男女は、菅田、岡田将生、斎藤工、杏、田代輝、吉田鋼太郎。密室劇の概念とは趣が異なることもあり、コロナ禍での撮影も相まってストレスを感じることはなかったのだろうか。得てしてこういう作品の場合、現場は逆に明るかったりするものだが……。
杏「自分が移動しているので、どこに何人いるのか……。バラバラに撮っていたりするので、分からないんですよね。模型が現場に置いてあって、今はここで、そこにトラップがあって……って書いてあるんですけど、結局分からない(笑)」
菅田「模型を見ても頭に入って来ないですよね。景色が変わらないのも単純にきつかったし、リハーサルが大変だったなあ。皆でいま何をしていて、どこにいて、次に撮るカットは自分が出て来た側の壁なのかとか……」
杏「カメラ位置が変わるだけで、上下左右が変わらないから撮れちゃうんですよね。カメラマンの方が一番苦労したんじゃないかな」
菅田「景色が変わらないよって言っていましたよね」
杏「撮影としてはCUBEが3面あって、ほとんど1面が空いている状態。ついつい『この手前が…』って言いたくなるんですが、『いや、手前って概念がこれにはないよな』って。手前がどうとかっていう言葉は、本来出てこないよねってっていう話をたくさんしましたね」
ふたりを目の当たりにすると、否が応でも2013年のNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」を思い出してしまう。2013年9月30日~14年3月29日に放送された同ドラマで、杏が主人公のめ以子、菅田はめ以子の長男・泰介の青年期を演じ、共演を果たしている。泰介が学徒出陣で出征する前夜、め以子に「やりたいこと、いっぱいあるんや。もう一度野球もしたいし、お酒も飲んでみたい。僕は、僕にそれを許さなかったこの時代を、絶対に許せへん」と感情を発露するシーンが印象深い。ここからは、筆者が「ごちそうさん」の話題を振ってからのふたりのクロストークをしばらくお楽しみいただきたい。
菅田&杏「8年前!? 怖い怖い怖い!」
杏「10代だった?」
菅田「20歳くらいだったはずです。いやあ、怖いですねえ」
杏「会うのは、忘年会とかかもね」
菅田「そうですね。大きな事務所ではないので、事務所でばったり会ったり、年2回はみんなで集まることがあるのでそこで会ったり」
杏「あれは違いますね。お互い、CMの撮影でばったり会ったんです」
菅田「時期的には『CUBE』の撮影直前のタイミングでしたね」
杏「親子役や夫婦役を一度やると、得も言われぬ親近感が湧くんですよね。『ああ、頑張っているなあ』って。陰ながら応援する気持ちになるんです。あとは母親役だったので、『忙しくしていてちゃんと寝ているかな?』という気持ちにもなりますね」
菅田「そうそう、食べてる? 寝てる? って心配してくださっていますよね。『ごちそうさん』以来、共演がなかったので、いち役者として『そういえば出会う機会がないなあ』と思っていたところに今回のお話だったので、すごく嬉しかったですよ。役も上下があるわけでもなく、対等な立場で始められる役どころだったので面白かった。あとやっぱり、今回は杏さんの目! お芝居としても重要な部分ですが、どんなに暗くても、どこにいても、杏さんの目だけははっきりと確認できました」
杏「今回は確かに目を意識していた部分はあるかもしれないなあ」
菅田「あの迫力は、他の人には出来ない感じはありましたね」
また、今作には菅田演じる後藤裕一の弟・後藤博人役で、ふたりの所属事務所の後輩・山時聡真が出演している。これまでにNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」やNHK連続テレビ小説「エール」、映画「約束のネバーランド」などで確かな存在感を放ってきた新鋭だ。今作でも出演シーンが決して多いわけではないが、愁いを帯びた横顔、兄をじっと見据える眼差しを通して、観る者に強いインパクトを残している。
菅田「さんちゃん、良かったですよね! 事務所に入りたての頃、本当に小さかったんですよ。上から目線になっちゃうけれど、余計な芝居をしないし、ちゃんと佇まいと心で現場にいた。事務所の後輩たち、めっちゃ焚きつけましたよ(笑)。『いやあ、さんちゃん良かったなあ!』って。16歳といえば、僕がこの仕事を始めた時ですけど、お芝居するうえであんなにじっと出来なかったですよ。もっとアピールしなきゃっていうのがあったから。本当に素晴らしかった」
杏「ヒリヒリする感じが伝わってくる表情でしたね。ちゃんと寝てね! ってことですかね。あと、本は読んだ方がいいですね。台本をもらった時のイマジネーションって、普段から本を読んでいると、文字から考えを巡らしやすくなる気がするから」
菅田「(読書家として知られる)杏さんが言う『本を読んだ方がいい』って、非常に説得力がありますね。僕もあんまり読んでいない側の人間なので……」
菅田は22年、良き先輩と敬う小栗旬が主演するNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に源義経役で出演するほか、フジテレビの「ミステリと言う勿れ」で初めて月9ドラマに主演する。杏も、放送が始まったばかりのTBS系の日曜劇場「日本沈没-希望のひと-」に正義感の強い週刊誌記者・椎名実梨役で、主人公・天海啓示に扮する小栗と対峙している。意欲作が今後も続くふたりにとって、心の拠りどころはどこにあるのだろうか。
菅田「去年は『キャラクター』『CUBE』と近い距離で撮影していたんです。コロナの状況もあったので、この時期はとにかく撮ることを 続けなきゃ! と思っていましたね。『危ないからやめよう』と言うことも出来たわけです。それも、命を守るために大事なこと。スタッフさんたちは電車通勤ですから、いつ誰に何があってもおかしくないじゃないですか。それでも、今も撮り続けなければ、作り続けなければ……という感覚しかないんですよね」
杏「現場が止まった時も、トップコートのみんなで絵本動画を作ったりしたけれど、作りたいという気持ちが抑えられなかった」
菅田「その確認にはなりましたよね」
杏「撮影が中止や延期になることもあったのですが、その時の自分の落ち込み方が今まで感じたことのないものだったんです。これまで走り続けてきて、こんなにストップすることってなかったから。『ああ、こんなに好きだったんだ』という気持ちになりました」
菅田「そういう気持ちになれて、良かったですよね」
杏「10年後、15年後、『あの時こういう状況だったんだよね』と振り返ることもありそう。そういう意味でも、忘れがたい作品になりましたね」
一方が思いの丈を話し始めると絶妙な間合いで相槌を入れるなど、あうんの呼吸で会話をリズミカルに進めていくふたりの波長に合わせているうちに、瞬く間に取材時間が終わりを告げようとしていた。親子役として初共演を果たしたふたりが今作を経て、3度目のタッグがいつになるのかと思いを馳せるのは気が早すぎるが、確かな信頼関係を構築する菅田と杏の芝居に対する真摯な思いは観る者の琴線に訴えかけるだけの説得力を持ち合わせているのは間違いない。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
十一人の賊軍 NEW
【本音レビュー】嘘があふれる世界で、本作はただリアルを突きつける。偽物はいらない。本物を観ろ。
提供:東映
映画料金が500円になる“裏ワザ” NEW
【仰天】「2000円は高い」という、あなただけに伝授…期間限定の最強キャンペーンに急げ!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 NEW
【人生最高の映画は?】彼らは即答する、「グラディエーター」だと…最新作に「今年ベスト」究極の絶賛
提供:東和ピクチャーズ
ヴェノム ザ・ラストダンス NEW
【最高の最終章だった】まさかの涙腺大決壊…すべての感情がバグり、ラストは涙で視界がぼやける
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
“サイコパス”、最愛の娘とライブへ行く
ライブ会場に300人の警察!! 「シックス・センス」監督が贈る予測不能の極上スリラー!
提供:ワーナー・ブラザース映画
予告編だけでめちゃくちゃ面白そう
見たことも聞いたこともない物語! 私たちの「コレ観たかった」全部入り“新傑作”誕生か!?
提供:ワーナー・ブラザース映画
八犬伝
【90%の観客が「想像超えた面白さ」と回答】「ゴジラ-1.0」監督も心酔した“前代未聞”の渾身作
提供:キノフィルムズ
追加料金ナシで映画館を極上にする方法、こっそり教えます
【利用すると「こんなすごいの!?」と絶句】案件とか関係なしに、シンプルにめちゃ良いのでオススメ
提供:TOHOシネマズ
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ
【ネタバレ解説・考察】“賛否両論の衝撃作”を100倍味わう徹底攻略ガイド あのシーンの意味は?
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ハングルを作り出したことで知られる世宗大王と、彼に仕えた科学者チョン・ヨンシルの身分を超えた熱い絆を描いた韓国の歴史ロマン。「ベルリンファイル」のハン・ソッキュが世宗大王、「悪いやつら」のチェ・ミンシクがチャン・ヨンシルを演じ、2人にとっては「シュリ」以来20年ぶりの共演作となった。朝鮮王朝が明国の影響下にあった時代。第4代王・世宗は、奴婢の身分ながら科学者として才能にあふれたチャン・ヨンシルを武官に任命し、ヨンシルは、豊富な科学知識と高い技術力で水時計や天体観測機器を次々と発明し、庶民の生活に大いに貢献する。また、朝鮮の自立を成し遂げたい世宗は、朝鮮独自の文字であるハングルを作ろうと考えていた。2人は身分の差を超え、特別な絆を結んでいくが、朝鮮の独立を許さない明からの攻撃を恐れた臣下たちは、秘密裏に2人を引き離そうとする。監督は「四月の雪」「ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女」のホ・ジノ。