キャラクター 劇場公開日:2021年6月11日
解説 菅田将暉と本作が俳優デビューとなる「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukaseの共演によるダークエンタテインメント。「20世紀少年」など数多くの浦沢直樹作品にストーリー共同制作者として携わってきた長崎尚志によるオリジナル脚本を、「世界から猫が消えたなら」「帝一の國」の永井聡監督のメガホンにより映画化。漫画家として売れることを夢見て、アシスタント生活を送る山城圭吾。ある日、一家殺人事件とその犯人を目撃してしまった山城は、警察の取り調べに「犯人の顔は見ていない」と嘘をつき、自分だけが知っている犯人をキャラクターにサスペンス漫画「34」を描き始める。お人好しな性格の山城に欠けていた本物の悪を描いた漫画は大ヒットし、山城は一躍売れっ子漫画家の道を歩んでいく。そんな中、「34」で描かれた物語を模した事件が次々と発生する。主人公・山城役を菅田、殺人鬼・両角役をFukaseがそれぞれ演じる。
2021年製作/125分/PG12/日本 配給:東宝
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2021年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
とにかくFukaseが良い。ナチュラルボーンサイコキラーっぽさがすごい。芝居経験がないからこそ、役を作らずにそのままの佇まいで人殺しを演じようとしたのが成功だったんだろうと思う。多分、本物のサイコキラーはあんな風に社会の中にしれっと溶け込んでいて、映画でよくあるように奇妙な雄叫びを上げたりとか、大げさなことはしないんだろうと思う。余談だけど、たまに神木隆之介に見える瞬間がなぜかあった。どこか似ている気がする。 Fukaseが演じた両角は殺人を楽しんでいる。それは異常なことだ。だが、だれの中にもその異常な感覚に通じるものは持っている。菅田将暉演じる漫画家は、それを開けられてしまい、漫画でそれを発揮するようになっていく。そして、そんな人物を描いたこの映画を観ている我々観客にも、それはある。だから、異常な殺人を犯す人物を安全な場所から観て楽しめるわけだ。でも、実際に犯行におよぶわけにもいかないので、こうして映画で発散する。おかげ今日も僕の周りは平和だ。
このところ、「鬼滅の刃」のメガヒットによって、ようやく「作者」に大きなスポットライトが当たるようになってきた風潮は非常に好ましいと感じています。 基本的に世の中ではベストセラーでも「本のタイトル」は知っていても、「書いた人」にまでは興味が向かない傾向があるものなのです。 そのため、まさに今のような状況下に相応しいのが本作だと言えます。 原案を「週刊ビッグコミックスピリッツ」の元編集長の長崎尚志が担当しているので、世の中の関心が高まっている「マンガ家」の実情が、非常にリアルに分かるようになっているのです。 そして、菅田将暉が演じるマンガ家と、バンド「SEKAI NO OWARI」のボーカル・Fukaseが演じる殺人鬼というキャスティングも良く、特に初演技のFukaseの佇まいが自然と奇妙な殺人鬼に見えるのです。 また、脇を固める小栗旬と高畑充希、中村獅童の存在感もあり、物語が散漫にならずに集中力が途切れません。 これは、永井聡監督の力量にも関係しているのでしょう。 永井聡監督というと、長編デビュー作「ジャッジ!」や「帝一の國」のようなコミカルな映画が合っていると思っていましたが、脚本が面白ければ本作のようなシリアス路線でもクオリティーの高い作品になることが分かりました。 このように、世の中の「タイミング」と多くの「才能」が面白いように合致したのが本作。 一見すると少し意外な形のラストシーンで終わりますが、これは「性格」や「行動」、つまり「キャラクター」を考えるとしっくりくるのではと思います。 始まりからラストまでの「化学反応の過程」が面白い体験型エンターテインメント作品なのです。
2021年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
菅田将暉とFukaseの一騎打ち。「20世紀少年」など数多くの浦沢直樹作品にストーリー共同制作者として携わってきた長崎尚志によるオリジナル脚本を、永井聡監督のメガホンで映画化。 オリジナル作品がいかにかけがえのないものであるか……。菅田とFukaseの一挙手一投足から目を離すことができないほど前のめりになって作品世界を楽しむことができる意欲作だ。 また、ふたりの個性を際立たせる小栗旬の存在感は特筆すべきである。中村獅童や高畑充希も好演を披露しているが、「風の谷のナウシカ」のアスベル役、「もののけ姫」のアシタカ役の声を担当したほか、「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオの日本語吹き替えを務めた松田洋治が非常に重要な役で出演している点も見逃せない。
【鑑賞のきっかけ】 劇場公開時は、全くノーチェックの作品でしたが、サスペンス映画として、なかなか評価が高いようでしたので、動画配信で鑑賞してみました。 【率直な感想】 <着眼点が素晴しい> もしも、売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら? しかも、その顔を“キャラクター”化して漫画を描いて売れてしまったとしたら? 上記は、公式ホームページの文章で、本作品の発想の原点を簡潔に表現したものです。 本作品の主人公・山城圭吾(菅田将暉)は、サスペンス漫画を目指していて、新人賞への応募や出版社への原稿持ち込みなどを行っているのですが、「絵はとてもうまい。しかし、登場人物、特に犯人のキャラクターが魅力的でない」となかなかデビューできなかった。 そんなある日、閑静な住宅街の一軒家で、一家4人が惨殺されている現場の第一発見者となってしまう。 清田俊介(小栗旬)と真壁孝太(中村獅童)の二人の刑事から事情聴取された際、彼は、実は犯人の姿を目撃していたにも関わらず、何も見ていないと証言。 そんな彼は、犯人の顔を思い出して、作品を描き上げ、売れっ子漫画家となっていくが…。 というものです。 私は長年にわたり、ミステリ小説を読み、ミステリ映画を観続けていますが、このような設定の作品は初めてでした。 物語は、主人公・山城が、どのような形で、犯人と接点を持ち始めるのかという点と、二人の刑事がどのような捜査をしていくかという点が、興味を惹くところなのですが、観客に飽きさせることのない巧みな展開となっており、高く評価できる作品に仕上がっていたと思います。 ただ、一点、物語中盤で、結末への展開が予想できてしまった部分があり、そこだけが、ちょっと残念に思いました。 <大河ドラマの共演者たち> 2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」には、菅田将暉(主人公・山城圭吾)が源義経役で、小栗旬(清田俊介刑事)が北条義時役で、中村獅童(真壁幸太刑事)が梶原景時役で出演していました。 私が感心したのは、いずれの俳優さんも演技が達者であるということです。 本作品と大河ドラマでは、演じる人物の「キャラクター」が全く違います。 俳優さんの顔つきはもちろん同じだし、声も同じ。 でも、顔の表情や、話し方は全然違う。 これが演技というものなのか、と。 優れた俳優は、自分に与えられた役柄の「キャラクター」を見事に演じているのだな、と実感させられました。 【全体評価】 思いがけない着想により構成された物語を、優れた俳優が、実力を発揮して演じきった、評価が高いのにも納得の作品でした。