【コラム/細野真宏の試写室日記】「G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ」は日本が舞台! かなりの“日本愛”が感じられる作品
2021年10月21日 10:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
本シリーズは、これまで2009年にチャニング・テイタム主演の「G.I.ジョー」(原題は「G.I. Joe: The Rise of Cobra」)、そして2013年にドウェイン・ジョンソン、ブルース・ウィリス、イ・ビョンホンが共演した「G.I.ジョー バック2リベンジ」(原題は「G.I. Joe: Retaliation」)が日本でも大規模公開されていました。
正直に言うと、この2作品については、それほど作品のクオリティーが高いわけでもなく、私はそれほど興味を持つことができませんでした。
そんな「G.I.ジョー」シリーズですが、3作目の「G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ」が10月22日(金)から日本で公開されます。
ただ、この作品の原題は「Snake Eyes: G.I. Joe Origins」と“G.I.ジョー オリジンズ”になっていて、「バットマン」シリーズでいえば、クリストファー・ノーラン監督による「バットマン ビギンズ」のような位置付けで、リブート作品となっているのです!
そのため、前2作の予備知識は基本的には必要ありません。
では、そもそも「G.I.ジョー」とは、どのような作品なのでしょうか?
「トランスフォーマー」シリーズなどでも有名なアメリカを代表する玩具メーカー「ハズブロ社」の人気キャラクターの1つで、【戦闘のエキスパートチーム「G.I.ジョー」】VS【悪の組織「コブラ」】がベースの構造となっています。
本作では、“G.I.ジョー オリジンズ”として、マスクで顔を隠し、謎に包まれた忍者「スネークアイズ」の誕生秘話を描いています。
この「スネークアイズ」というメインのキャラクターは、もともと「日本の忍者軍団に入り修行を積んだ」という設定があるのです。
そして「忍者」なので、“ハリウッド映画史上、最大規模となる日本ロケ”を数カ月にわたって敢行しているのです!
東京のお台場のレインボーブリッジではバイクチェイス、大阪の岸和田城、世界遺産でもある兵庫県の姫路城、そして当然(?)「映画のロケ地ランキング1位の茨城県」でも撮影が行われています。
ちなみに、城が舞台となっているのは、「忍者のアジトは城にある」という設定だからです。
このようにハリウッド映画としては非常に珍しく“なんちゃって日本”ではない(一部のセットでは、設定上そういうシーンもあります)ので、日本語を話すシーンも片言ではないのです。
これは、メインに平岳大、石田えり、(主に海外で活動している)安部春香といった実際の日本人キャストが出演していることも関係しています。
とは言え、あくまでハリウッド映画なので、“ハリウッド映画では宇宙人でも英語で話す”ように、本作においても日本人が英語で話すシーンが圧倒的に多くなっています。
もちろん、冒頭以降の舞台は日本になるので、日本語でも話します。
面白いのは、「字幕版」では、日本語で話す時には「英語」が字幕で出るのですが、コミックのような感じで“日本語も一緒に出る、凝った英語の字幕”が飛び出したりするのです。
ただ、「吹替版」では、最初から全員が吹替によって日本語で話すため、この「字幕版」の“日本語も一緒に出る、凝った英語の字幕”が一度も出ないのが少し残念です。
とは言え、正直、「吹替版」の方だと内容が分かりやすい面もあり、一長一短で、どちらが優れているとは言えない感じでした。
ちなみに、エンドロールは「字幕版」と「吹替版」は同じもので、単調に英語の文字が流れていくのではなく、日本語をバックにデザインするなど、かなり珍しいハリウッド映画となっています。
このように、本作は、「字幕版」も「吹替版」もそれぞれに「日本愛」を感じ、どちらもおススメしたい出来上がりとなっているのです!
また、アクションシーンも、あの「るろうに剣心」シリーズのアクションを手がけた谷垣健治が「アクション監督」を担当。「るろうに剣心」×忍者という感じで、アクションの新たな領域に踏み込んでいるのも見どころの一つです。
主演のスネークアイズ役は、大ヒット作「クレイジー・リッチ!」でブレイクし、「ラスト・クリスマス」「ジェントルメン」などでも有名なヘンリー・ゴールディング。監督は日本でもヒットした「フライトプラン」(興行収入31.2億円)や「RED レッド」(興行収入12.2億円)のロベルト・シュヴェンケが務めています。
本作は、経済的な面からも興味深く、実は、制作費8800万ドル(大まかに100億円)の1%程度に相当する約9600万円を日本が国として「補助金」を出しているのです。
それは、内閣府の「外国映像作品ロケ誘致プロジェクト」(正式名称「地域経済の振興等に資する外国映像作品ロケーション誘致に関する実証調査事業」)に選ばれたからです。
この「外国映像作品ロケ誘致プロジェクト」というのは、日本で撮影してもらうことで、経済効果を生み出そう、という試みです。
本作以外では、中国でメガヒットを記録した中国映画「唐人街探偵 東京MISSION」があり、こちらは、秋葉原や新宿などで撮影し、中でも栃木県の足利市に「渋谷のスクランブル交差点」のセットを作り上げたことでも有名です。
この「渋谷のスクランブル交差点」のセットは撮影後も残っているため、今後の映画は、そのセットを再利用できるようにもなっています。
ちなみに、内閣府によると、本作「G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ」の場合は、茨城県での撮影の際には約75%が日本人スタッフだったり、撮影の段階で約19億円を日本で使ったとのことです。
日本で撮影し、日本の俳優やスタッフを使うなど、日本国内で大規模に制作費を使ってくれると、日本経済にとってプラスに働きます。
さらに今後、世界的にメガヒットする作品であれば、(新型コロナウイルスの影響が正常化することが前提ですが)観光地としても魅力的に映り観光客の増加にもつながり得る仕組みでもあるわけです。
通常の企業のように「出資」によって製作委員会に入るのではなく、「補助金を出す」という仕組みで割り切るのは、国だからこそ可能な仕組みと言えるでしょう。
本作は、このような視点からも注目に値する、端々から日本愛を感じられる作品となっているのです!
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