吉田恵輔監督、東京国際映画祭での特集上映に意欲 憧れの塚本晋也監督への思いを語る
2021年10月6日 15:05
第34回東京国際映画祭の「Nippon Cinema Now」部門で特集上映される吉田恵輔監督が10月4日、同映画祭の安藤裕康チェアマン、プログラミング・ディレクターの市山尚三氏とともに、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見した。
同映画祭は、今年からメイン会場を六本木から日比谷、有楽町、銀座エリアへと移転するほか、17年ぶりのプログラマー交代による部門改変を実施。映画館でのフィジカル上映を基本としながら、大きなテーマとして“越境”というコンセプトを掲げる。仏女優イザベル・ユペールが審査委員長を務めるコンペティション部門には、113の国と地域から1533本の応募があり、審査員を務める青山真治、クリス・フジワラ、ローナ・ティー、世武裕子とともに全15作品を審査する。
Nippon Cinema Now部門で、「監督特集 人間の心理をえぐる鬼才 吉田恵輔」と銘打たれ「空白」(古田新太主演)、「BLUE ブルー」(松山ケンイチ主演)、「ヒメアノ~ル」(森田剛主演)が上映される吉田監督は、「塚本晋也監督の照明スタッフとして数十年間働いてきました。天才を身近にして、海外から評価されているところを間近で見てきて、ずっと憧れを持っていたんです。あまりにも身近に天才がいると自分は選ばれる側の人間ではないのかなと思ってきたんですが、今回、東京国際映画祭の特集に選んでいただいたのをきっかけに僕の作品を海外の人にも知ってもらい、憧れの塚本監督には及ばないとは思いますが、少しでも近づいていけたらいいなと思っています」と挨拶した。
報道陣とのQ&Aでは、「塚本監督のどこが素晴らしいのか」と問われた吉田監督。「誤解がないように言うのですが、20歳くらいの頃、日本映画ってダサいなって、とがっていたんです。その頃、塚本監督の『鉄男』という作品と出合って、こんなにかっこいい作品があるんだ、すごいなと思ったんです。誰が監督か知らずに観ても、映画を塚本監督作品だと分かるオリジナリティがあるところに憧れます」。
市山氏は、特集上映を吉田監督でと決めた理由を「これまでもクオリティの高い素晴らしい作品を作り続けているのに、これまで特集などをされてこなかったことが理由です」と説明。さらに、「『空白』という作品が今年公開した日本映画を代表する大傑作であることがあげられます。来年以降、この特集をきっかけに吉田監督の作品が海外でもどんどん注目を集め、特集などでも取り上げてもらえるようになればと思っています」と語った。
また、同時期に開催される東京フィルメックスと連携することで、映画祭のカラーが混在する可能性について質問が飛ぶと、昨年まで東京フィルメックスでプログラミング業務に携わってきた市山氏は、真摯な面持ちで説明した。
「東京フィルメックスを後進に、誰かに譲るべきだとずっと思ってきました。ヨーロッパの主要な映画祭は、プログラム・ディレクターが何年かごとに変わりながら進んでいっている。東京フィルメックスも東京国際映画祭もそうあるべきだと思うんです。どうしても映画祭と言うのはプログラム・ディレクターのカラーが反映されてしまうもの。今年の東京国際映画祭では僕のカラーが出ているかもしれません。もちろん、東京フィルメックスでは選ばなかった様な作品も今回選考していますが、僕のカラーというものは反映されていると思います。東京フィルメックスと東京国際映画祭、ふたつの映画祭を観ていただければ、今のアジアの主要な映画はほぼカバーできれいるのではないかと思っています。東京フィルメックスの選考も、僕だったら選ばないような作品が選ばれていたりしていますので、東京フィルメックスのプログラムを確認してどちらも楽しみにしていただければと思います」
第34回東京国際映画祭は10月30日~11月8日、日比谷、有楽町、銀座地区で開催される。
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