【コラム/細野真宏の試写室日記】劇場版「鬼滅の刃」は年内に歴代1位になれるのか? 週末ランキング歴代連続1位記録も更新か?
2020年11月27日 10:00

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は想定通り、連休中に興行収入ランキング歴代3位にまで躍り出ましたが、残念ながら想定を下回った作品もありました。
それは、先週末から公開された「STAND BY ME ドラえもん2」です。
映画館は最大の座席数を用意していたので、初週は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」と良い勝負をしそうでしたが、残念ながら座席は効率的に稼働できず、3連休も含め「STAND BY ME ドラえもん2」の4日間の興行収入は6億7131万5100円となっています。
一方の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は3連休だけで14億9245万5350円だったので、「STAND BY ME ドラえもん2」に期待していた映画館側の無念さが伝わります。
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これは様々な理由があると思いますが、大きな理由としては「宣伝が響かなかった」「題材の難しさがあった」ということが挙げられるかと思います。
まず、「宣伝が響かなかった」のは、「のび太、逃げた。」というキャッチコピーは、「韻(語感)」としてはいいのかもしれませんが、あまり「見たい動機」にはなりにくかったと思っています。
また、「題材の難しさがあった」のは、前作で綺麗にまとまっていたものを、再び似たような題材で押してくる点は興味を引きにくかったのでは、と思っています。
この2点は、ある程度は想定されていたものの、今作は「ドラえもん(連載開始)50周年記念作品」ですし、前作は興行収入83.8億円を記録しているため、映画業界は「パート2は8割理論」で67億円あたりは期待できるのでは、と考えていたと思います。
ただ、これまでのドラえもん作品とは違って、春休みや夏休み期間での公開ではないため、平日が弱く、最終的な興行収入は、見込みよりも大分下がってしまうことが想定されます。
正直、「下がる可能性」については映画館のために書きにくいというのはありますが、その一方で「箱割(映画館の座席配分)」を間違えると、機会損失が出てしまい、映画館側が損をしてしまう面があります。
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そこで、公開後なので、個人的な見通しを率直に書きますと、私は、やはり一番最初に見た段階の「永遠の0」→「海賊とよばれた男」というイメージは捨てきれません。
ただ、これは当時、業界が騒然となった推移なので、できれば回避してほしいですが仮に、この推移だと「83.8億円→22.7億円」となってしまいます。
ですので、まずは22.7億円は余裕で超えてほしいと願っています。
ここで、製作費の問題(「STAND BY ME ドラえもん2」の製作サイドの問題)はあえて考えないようにすると、映画館にとってみたら、興行収入が20億円を超えてくれるヒット作品というのは、それほど多いわけではないので、そういう意味で「STAND BY ME ドラえもん2」は映画館にプラスをもたらす作品だと思います。
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そこで、当初の過度な期待は忘れて、「通常のヒット作」という視点に戻して考えるのが現実的では、と考えます。
「STAND BY ME ドラえもん2」は想定通り、「ファミリー層」が55.2%と圧倒的に多く、次いで「カップル」が14.7%となっています。
そのため、週末はまだまだ観客が見込めると思うので、席数(特にIMAX)の調整をしながら冬休み興行も視野に入れて「STAND BY ME ドラえもん2」には頑張ってほしいところです。
さて、「6週連続1位」を記録した「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」ですが、興行収入が発表された11月24日には、23日の段階で「アナと雪の女王」を抜いて歴代3位の興行収入になったことが報道されました。
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そこで、今後の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行の行方を現時点の状況から大まかに予想してみたいと思います。
まず、11月30日(月)には「7週連続1位」となって、歴代2位の「タイタニック」(興行収入262億円)を抜いて、歴代2位に踊り出ることが報道されると思います。
そして、12月4日(金)には、「鬼滅の刃」の単行本の最終巻である23巻が発売され、これがかなり大きな報道になると思います。
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実は、出版業界の大きな悩みに、出版物が売れずに、全国のリアル書店がどんどん倒産し続けている問題があります。
若い世代であれば「ネット書店で買えば問題ないのでは」と思われるかもしれませんが、日本は「世界一高齢者の割合が多い国」なのです。
しかも、リアル書店の倒産がこのまま加速すると、さらなる出版業界の縮小、地方の雇用問題等にも発展しかねない大きな問題でもあるのです!
実際にリアル書店の売り上げは、ネット書店やデジタル書籍などの影響で3年連続でマイナスになっています。
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ところが、ここにきて「鬼滅の刃」効果で、コミックの売り上げが10月の段階で1.5倍(前年同月比)にも増えてきていたりと、帝国データバンク調べでは、リアル書店の倒産件数が過去最少になる可能性が高くなってきているのです。
その流れも受け興行収入も加速され、12月7日(月)には「8週連続1位」のニュースになる可能性が高いと思います。
そして、12月14日(月)は、「来場御礼入場者特典第3弾」の効果もあり、「9週連続1位」のニュースになる可能性が高いと思います。
さらに、12月21日(月)は、冬休みを前に、「いつ『千と千尋の神隠し』を抜き、歴代1位に輝くか」というカウントダウンもあり、「10週連続1位」のニュースになる可能性が高いと思います。
そして、冬休み期間に入る12月28日(月)は、冬休み効果に加えて「来場御礼入場者特典第4弾」の効果もあり興行収入が加速され、「11週連続1位」のニュースになる可能性が高いと思います。
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実は、この段階で、これまで「千と千尋の神隠し」が記録している「週末ランキング歴代連続1位」である「V11」と並ぶことになるわけです。
現時点では、12月25日(金)公開の一部の作品が完成していないこともあり、見ることができていない作品もありますが、最も大きな壁と見られていた「STAND BY ME ドラえもん2」を超えられたので、この推移は現実味を帯びてきています。
そして、年末の12月31日(木)には視聴率が異常に高い「紅白歌合戦」で「鬼滅の刃」が再び脚光を浴び、年始の1月1日(金)からの興行にプラスに働く面が出てきて、単独歴代記録の「V12」も夢ではないのかもしれません。
このように、毎週のように話題が尽きないこともあり、現状では「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は年内に歴代興行収入1位になる可能性が高いと思っています。
どの分野でも同じですが、「記録は更新され続けることで活性化していく」ものなので、これは非常に良い傾向です。
しかも、「鬼滅の刃」という作品は、まだまだ映像化作品としては続きがあるので、ますます新陳代謝が進み、経済効果も見込め、日本が世界に誇れる作品が増え、非常に明るい現象だと思います。
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