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【「L.A.コンフィデンシャル」評論】1950年代ロサンゼルスの暗部を描いた、フィルム・ノワールの最高峰

2020年5月11日 21:00

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実力派俳優たちの若き日の姿を確認することができる
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[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(https://eiga.com/alltime-best/)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論を毎週お届けいたします。今回は「L.A.コンフィデンシャル」です。

1998年の第70回アカデミー賞は、作品賞を含む11部門を制した「タイタニック」の独壇場となった。しかし当初、前哨戦の結果なども含め作品賞の本命と目されていたのが、カーティス・ハンソン監督がメガホンをとった「L.A.コンフィデンシャル」である。結果は助演女優賞(キム・ベイシンガー)と脚色賞の2部門受賞に留まったが、90年代を代表するフィルム・ノワールとして未だ色褪せることなく、最高峰の作品といえる。

舞台となるのは、終戦から10年も経っていない50年代の米ロサンゼルス。戦勝国のアメリカであっても混沌とした状況が続いており、ましてや当時のロス市警はマフィアとの癒着が強固で無法地帯だったと言われている。その不穏な様子は本編にもちりばめられており、刑事たちの尋問などはめちゃくちゃ。その手口は、現代では「拷問」レベルである。

作家ジェイムズ・エルロイは、そんなロスの暗黒部分を「ブラック・ダリア」に始まる「L.A.4部作」として発表。3作目となる今作は、元刑事を含む6人が惨殺された事件を受け、ロス市警の刑事たちが警察内部にうごめく腐敗と対峙し、多くの血が流れていくさまを描いている。原作では8年間にわたる物語だが、映画では3カ月間に凝縮したことで先の読めない展開を演出している。

ストーリーを牽引していくのは、女性に暴力をふるう男を憎悪する腕っぷしの強い熱血刑事バド(ラッセル・クロウ)、出世のためなら簡単に仲間を売るため孤立するエリート刑事エド(ガイ・ピアース)、刑事ドラマのアドバイザーをしているが裏でゴシップ記者に情報を流し賄賂を受け取る汚職刑事ジャック(ケビン・スペイシー)の3人。それぞれの思惑が三者三様で飽きさせることがないのだが、更に警察上層部、マフィア、娼婦、億万長者、検事などが絡んでくるため、情報量が多すぎて見る者に多少の混乱を招く。

だが、この混乱は欠点ではない。ご都合主義的な要素は一切なく、伏線が張られまくっているため、3人の刑事が持ち寄る情報が組み合わさっていくさまは、実にスリリングで小気味いい。さらに、50年代のロスを見事に再現してみせたプロダクションデザイン、決して華美ではないが仕立ての良さが伝わる刑事たちのさりげない衣装も秀逸だ。

クロウとピアースにとっては出世作となったわけだが、その若々しく溌剌とした姿に隔世の感を覚える。スペイシーが随所に見せる“顔芸”も当時からのもので、不意にほくそ笑んでしまう。最後になるが、今作は謎解きを楽しむ類の作品ではない。あくまでも、主人公たちの心の動きを追うことに主眼を置くべきである。鑑賞後に体感する寂寥感を伴う余韻は、正統派フィルム・ノワールの系譜を受け継いでいることを証明しているのだから。

(大塚史貴)

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