劇場公開日 2006年10月14日

ブラック・ダリア : 映画評論・批評

2006年10月10日更新

2006年10月14日より日比谷スカラ座ほか全国東宝系にてロードショー

妄執を深めていく人物の行動理由が不明

アンダーグラウンド映画の寵児ケネス・アンガーが、聖林黄金時代の闇を書き連ねた暗黒のゴシップ書「ハリウッド・バビロン」。そこに載せられた数々のおぞましい写真のうちでも、もっとも猟奇的かつ美しいのがエリザベス・ショートの人形のような惨殺死体なのであった。

母親が娼婦、しかも殺害されたというオブセッションから生まれたJ・エルロイの原作小説は、そうしたイメージに過剰に寄りかかったものではなく、40年代ロサンゼルスの暝い人間模様を通して多面的に迷宮事件に迫ろうとするものだった。今回のデ・パルマ作品は主人公たちの三角関係を中心に抽出、それはそれで正しい選択だったとはいえるだろう。

ただし、これが上っ面に過ぎてどうにも入り込めない。それぞれの俳優がいまひとつ適材とはいえず、妄執を深めていく人物の行動の理由も、ミステリ的趣向を深めるためか観客にはほとんど不明なまま勝手に物語は進んでいく始末(特にA・エッカート)。色彩を落とした画調にクラシカルなワイプ、大胆なクレーン移動俯瞰やクライマックスのスローモーションとデ・パルマらしいショットはあるがいたって控えめで、ある意味主役といえるロサンゼルスの街並みもどうにも安っぽい。ビジュアル化となればどうしても期待される「死体」の魅惑も裏切られて、結局「ファントム・オブ・パラダイス」の怪優ウィリアム・フィンレイの帰還がいちばん嬉しいというのは、どうにも困ったものではないか。

(ミルクマン斉籐)

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