パリの日本映画祭キノタヨ 「カツベン!」が観客賞、「月夜釜合戦」は映画祭初の2冠
2019年12月13日 14:00

[映画.com ニュース] パリで開催された第14回キノタヨ現代日本映画祭が授賞式を迎え、観客賞にあたるソレイユドール(金の太陽)賞を周防正行監督の「カツベン!」が受賞した。また審査員が選ぶ審査員賞と最優秀映像賞を佐藤零郎監督の「月夜釜合戦」がダブル受賞、今年初めてもうけられた映画音楽賞を鈴木雅之監督の「マスカレード・ホテル」(音楽/佐藤直紀)が受賞した。
約1200人の投票者によって選ばれた「カツべン!」は、サイレント映画時代に活躍した弁士たちを主人公にした、周防監督のオリジナル脚本によるエンタテインメントドラマ。日本のサイレント映画の歴史や弁士の活動、当時の日本の風情といった文化的な要素が海外の観客の興味を引き、全体的に娯楽性あふれる物語にまとめた功績が一般観客から好評を得たようだ。この機会に周防監督や関係者が誰も出席できなかったのは、残念である。
「月夜釜合戦」は、近年再開発の手が伸びる大阪の釜ヶ崎を舞台に、ヤクザの家宝の釜が盗まれたのをきっかけに街を揺るがす大騒動に発展するさまを、渋川清彦らプロの俳優と地元の住民の混成によって描いたフィクション。ユーモラスかつエネルギッシュで、ライブ感あふれる、監督の力技による演出が魅せる。舞台に登壇した佐藤監督は、驚きと喜びの入り交じった面持ちで、「これ、まさかどっきりカメラじゃないですよね!? わりとそういうのに騙されやすい性なんで(笑)」と言いながら、興奮も露に「にわかに信じ難いです(笑)。錚々たる作品が並ぶなかで、そこに自分も加わることができて、しかも賞まで頂くとは、本当にありがとうございます。不思議な心地です」と語り喝采を浴びた。

審査員団は授賞の理由を、「政治的要素と娯楽性が融合し、プロとアマチュアの入り交じったキャストたちによる群衆劇に魅了されました。脚本、演出も素晴らしく、土地の人たちが実際にどんな生き方をしているかをこの映画で発見する喜びがありました。自由な撮影の活力が、画面から溢れ出ている。この賞によってフランスでも配給が決まることを願っています」と称賛した。
セレモニーは今回初めてパリの東洋美術の殿堂であるギメ東洋美術館のオーディトリアムで開催され、授賞式に続きクロージング作品として、衣笠貞之助の無声映画「狂った一頁」が、フランス人の弁士シリル・コピーニによる、フランス語と日本語を混ぜた活弁と、音楽演奏付きで上映された。満席の観客は、この粋な計らいによるユニークな体験を満喫した。
ギメ美術館では映画祭後も、今回の受賞作品を2日にわたり一般上映する。また映画祭は今後、2020年2月まで、フランスの地方都市を巡回予定。前回に比べ一都市増えたそうで、現代日本映画を普及させる成果は、地道ながら確実に浸透しているようだ。(佐藤久理子)
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