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再開発に揺れる釜ヶ崎を16ミリで活写 「月夜釜合戦」東京、横浜で2週間限定公開

2019年3月8日 15:00

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16ミリフィルムで撮影された映画を劇場で
16ミリフィルムで撮影された映画を劇場で
(C)映画「月夜釜合戦」製作委員会

[映画.com ニュース]戦後の高度経済成長期から、日本最大の日雇い労働者の街として知られる釜ヶ崎(大阪市西成区「あいりん地区」)を舞台に、古典落語「釜泥」をベースにした人情喜劇「月夜釜合戦」が東京、横浜でこのほど公開される。昨年ポルトガルで開催されたポルト・ポスト・ドック国際映画祭では、日本映画初のグランプリを受賞した。スマートフォンでも映画が撮影できる時代に、敢えて16ミリフィルムカメラを持ち込み、釜ヶ崎の街並みと物語を生きる俳優陣、そこに住む人々を活写した佐藤零郎監督に話を聞いた。

佐藤真監督に師事しドキュメンタリーを学び、大阪長居公園での野宿生活者への強制立退きを芝居で阻止する人々を映した「長居青春酔夢歌」が、2009年の山形国際ドキュメンタリー映画祭千波万波にノミネートされた。

「2006年の秋に長居公園のテント村の空きテントで生活して、2カ月半くらい前作『長居青春酔夢歌』を撮っていました。その公園に住むのは、生活保護を受けるのではなく、アルミ缶拾いもしてるし、日雇いも行くし、自活している人達。代替え地を用意しろ!と訴えたのですが、行政に聞き入れてもらえず、反対の抗議をしても追い出されるのはわかっていて、やるせなさを感じていました。そんなときに、立退きの日に芝居をしようと考えたんです。公園で暮らす人と、支援する人が一緒に排除に来た市職員やガードマン、警察が来たら、テントの小屋のブルーシートの中から突然芝居の為の舞台が現れて、それがとても面白くて。現実の中にフィクションをねじ込んで、現実に対して対抗する。こういうやり方もできるのだと実感しました」

釜ヶ崎を初めて訪れた時の印象をこう振り返る。「ここが日本の風景なのかと驚いたんです。野宿したり、裸のおっちゃんがあふれてて、露店があって、野良犬も歩いていて。若干の怖さがありつつも、懐かしいような不思議な感じを受けた。この区画の外の他の通りは普通なのに、その一角に入ったら、異世界に入っていくような気がして、衝撃というか、興味を覚えました」

「そして、釜ヶ崎が再開発で消えつつあるというのを知ったときに、映像で残したいと。そこで、長居公園の経験を活かせるのではと考えました。それまで、釜ヶ崎で撮りたいと思ってて撮れなかったことは多いんです。やはり露店やバクチをやっている人にカメラを向けられませんし。でも、自分の目には焼き付けられていて。劇映画ならそれを再現できる、フィクションでなければできないことがあるとわかったのです」

初の劇映画製作にあたり、古典落語を下敷きにした脚本、16ミリフィルムでの撮影を選んだ。「当初はタイトルも物語も全く違うものを考えていて、なかなかシナリオが書けなかった時に、『丹下左膳 百万両の壺』や『幕末太陽傳』なんかを見たんです。『幕末太陽傳』は『居残り佐平次』『品川心中』などの落語をモチーフにしていて、それがめちゃくちゃ面白くて。で、落語をモチーフにしたら、一本筋の通ったものが書けるんじゃないかと調べていくうちに『釜泥』を見つけて。その時は雷が落ちてきたような衝撃でした。釜を奪い合う話ですし、家が盗まれるというオチ。これは、釜ヶ崎自体が盗まれるということと重ねてユーモラスに批判できると、オチも含めて情景が見えたんです。その後タイトルは“月夜に釜を抜く”ということわざをそのまま短くした『月夜釜合戦』に決まって。そこからシナリオを13稿くらい書き直していきました」

佐藤零郎監督
佐藤零郎監督

「恩師の佐藤真さんの『阿賀に生きる』も16ミリですし、割と早い段階から映画の魅力、厚みが体感できるフィルムで撮ってみたいという気持ちはありました。それと、僕が初めて釜ヶ崎に来た時に衝撃だった、そのにおいを捉えたかったんです。あとは、対象との関係です。釜ヶ崎は危険な街だというイメージがあるけれど、カメラを持って訪れる人は多くて、テレビクルーも来るし、携帯で写真を撮る人もいるし、僕みたいにドキュメンタリーを撮る人もいる。そこにいる人たちが、誰でも安易に撮られているという感じで、撮られる人もあまりそれを歓迎しているようには見えなかった。結局僕らも一緒なのかもしれないけど、違う気概でやっていることをどうやったら示せるのかなと。16ミリカメラって見た目が鉄の固まりっていう感じでどしっとしていて、3脚を立てて撮ると、すごく目立ちます。スマホは、逃げ道がたくさんありますから。そういうカメラを向けることで、対象としっかり向き合い、批判も受け止めたいということを示せればと思い、16ミリで撮ることを選択しました」

映画は、泥棒、娼婦、ヤクザ、孤児、日雇い労働者、活動家、地上げ屋……ワケありの登場人物たちの生き様がコミカルかつ力強く描かれ、リアルなのかファンタジーなのかわからない不思議な魅力を湛えた喜劇に仕上がった。大島渚監督「太陽の墓場」、田中登監督「(秘)色情めす市場」など同地を舞台にした往年の傑作へのオマージュも見て取れる。

「釜ヶ崎のおっちゃんたちと一緒に見て笑えるかどうか、を第一に考えました。ドキュメンタリーを見られる方もいるんですが、やっぱり人気なのは『男はつらいよ』や『仁義なき戦い』。皆で集まって映画を見る機会があると、おっちゃんたちは寅さんや菅原文太さんを見て泣いてるんです。僕らもこういう一緒に泣けたり、笑えたりする映画を作りたい。そんな作品を釜ヶ崎で撮れたらまずこの映画には意義があると思いました」

釜ヶ崎の街は年々変わり、職安や労働福祉センターなどが入る施設の移転や高級ホテルの建設計画が進んでいるという。中下層所得者の居住地域やスラムを再開発して土地の価値を高級化し、住民構成を変化させるジェントリフィケーションと呼ばれる現象は、そこに元から住んでいる貧困者をはじめとする弱者を排除し、その土地に新たなブランド力を付与して利潤を得るという側面が問題視されている。「釜ヶ崎を知らない人にも、この映画を見てほしいです。こういう場所があって、再開発によって立場の弱い人が追い出されるという問題をいろんな人に知ってほしい」

これまでの経験を通し、「映画と社会変革」を自身の創作のテーマに据えている。「まず自分自身が、この映画を作る過程で変えられたというのが大きいです。映画を撮りながら様々な人と出会い、僕自身の考えが深まって、体験する前の自分と今の自分は確実に違うんです。正直、こんなことやらなかったほうがもっと楽に生きられたなという思いもありますが、満足しています。僕はそういうことが社会変革だと思っていて。映画を見た人にも伝播すればいいと思っています」

月夜釜合戦」は、渋谷・ユーロスペースで3月9日から、横浜シネマリンで4月20日から2週間限定で公開。

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