「SW」の聖地・日劇の巨大手描き看板を手掛けた絵師 製作秘話&「SWとともに」あったキャリアを語る
2019年12月5日 08:00

[映画.com ニュース] 大ヒット映画シリーズの最新作「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」が、12月20日から公開となる。第1作「スター・ウォーズ」(1977)の公開時、東京・有楽町にあった日本劇場(日劇)に掲示され話題を呼んだ手描き看板を手掛けた絵師・北原邦明氏が、最新作で再び絵筆をとり、巨大看板を完成させた。制作秘話や40年にわたる本シリーズへの思いについて、話を聞いた。(取材・文・写真/編集部)
北原氏は、1978年6月に東京宣伝に入社し、映画看板制作の道に進んだ。本シリーズをはじめ、「ハリー・ポッター」シリーズ、「タイタニック」「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「バグズ・ライフ」「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」など超大作の看板を次々と担当し、年間130作品を手掛けたこともあったそう。映画看板を手掛ける絵師自体が少なくなってしまった今、現役で活動している数少ない職人のひとりだ。
「スター・ウォーズ」の看板は、北原氏が東京宣伝で担当した初めての仕事だったという。全体的な下書きを2、3人で担当し、1カ月かけて完成させた。
「以前は駒込の会社で映画看板の収集をしていて、東京宣伝に移った時に、看板を作り始めました。僕は下っ端だったので、トレースやデッサン、絵の具づくりの仕事を手伝わせてもらいました。原画をスクリーンに映して、その上に紙を貼って、マジックペンで描いていきます。鉛筆だと、こすったら消えてしまうので。(最初は)どういう映画か知らなかったんですが、『すごい大きい看板だな』と見上げながら仕事をしていました。業界に入ったばかりで慣れないなか、作業を進めましたね」
巨大看板への反響もあり、日劇時代を経て2018年2月に惜しまれながらも閉館したTOHOシネマズ日劇は、スター・ウォーズファンに“聖地”と呼ばれるようになった。幼い頃からSF映画好きだったという北原氏は、映画館で第1作を鑑賞した頃の衝撃を振り返る。
「『すごいな』って、鳥肌が立ちました。それぞれのキャラクターの設定がなかなかよくできていて。昨日も映画を見に行ったんですが、その時に『スカイウォーカーの夜明け』の予告編が流れて……、それだけで十分感動しましたね」
そんな北原氏のお気に入りキャラクターは、ハリソン・フォード演じるハン・ソロ。ジェダイのルーク・スカイウォーカーと妹レイア、相棒チューバッカとともに冒険を繰り広げ、銀河一の高速船ミレニアム・ファルコン号を操る伝説の運び屋だ。
「大好きです。ハリソン・フォードは他の作品でも、不死身な感じがしますよね。ソロはフォースを持っていませんが、仲間たちと一緒に戦う。そこがいいです」

本シリーズへの深い思い入れをのぞかせる北原氏。再びオファーが来た時は「来たな」と運命を感じたそうで、「やっぱりもう一度看板を作ることができるのは、嬉しかったです」とほほ笑む。40年の時を経て、制作ステップや画材に変化はあったのだろうか。
「まずは、画材の変化ですね。昔は顔料をすり潰して絵の具を作っていたんですが、今は缶入りのネオカラーを混ぜて使っています。わざわざ顔料から作らなくて済むようになったので、作業は楽になりました。次に、バランスを見るために、デジタルカメラを使えるようになったことが便利ですね。描いていると全体のバランスが分からなくなるので、デジタルカメラで撮影して確認しながら、作業しています」
様々な技術の進歩や熟練の技術により、最新作の看板は2週間で完成させた。「最初はこのカイロ・レンの顔あたりから始めて、少しずつ細かい部分に移動して描いていきます。細かいデザインは、やっぱり難しいですね。小さく描かれたキャラクターの顔だと、小さくてもある程度は似せないといけないので、気をつけています」と語る。
最後に、映画看板の良さを聞いてみた。
「インクジェットが登場して、こういう手描き看板は衰退していく流れなのかもしれません。でも、劇場からは『なくしてくれ』って言われたりもする“ハケ目”(絵筆のあと)や、例えば肌色を強調してキャラクターの顔が背景に溶けこまないように前面に出すこだわりなど、手描きの良さもあると思います。昔の看板は、それぞれ書き手の個性が出ていました。僕の場合、(名ゼリフ『フォースと共にあらんことを』にちなんで)フォースじゃないですが、『スター・ウォーズ』とともにあったキャリアでした。今回のようなオファーが、またあればいいですね」
新作は、はるか彼方の銀河系を舞台に、スカイウォーカー家をめぐる壮大な物語のフィナーレを飾る。「スター・ウォーズ」から始まる最初の3部作、続く「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」(99)から始まる3部作では、銀河の頂点に君臨した暗黒卿ダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカー、父を倒し平和をもたらしたアナキンの息子ルークの姿が描かれた。しかし、ルークの妹レイアと英雄ハン・ソロの息子カイロ・レンは、祖父ダース・ベイダーに傾倒。ルークの意志を受け継ぎフォースを覚醒させたレイと、カイロ・レンが対峙し、世代を超えた“光と闇の戦い”が繰り広げられる。“スカイウォーカー・サーガ”完結となる「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」は、12月20日から日米同時公開。
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