「ジョーカー」が金獅子賞!第76回ベネチア国際映画祭を制す
2019年9月9日 12:00

[映画.com ニュース] 第76回ベネチア国際映画祭が9月7日(現地時間)に閉幕し、金獅子賞にトッド・フィリップス監督、フォアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」が輝いた。DCコミックの映画化作品が金獅子賞に輝いたのは史上初である。
審査委員長のルクレシア・マルテルは開幕の審査員会見で、ハリウッド大作とインディペンデント映画といった区別はしないと語っていたが、授賞の理由を「本作は多くの点で素晴らしく、特にビジネスが重視される映画産業のなかで、リスクを負ってこうした作品をつくったことは評価されるべきです」と語った。審査員を務めたメアリー・ハロン監督も、「伝統的な悪役を現代にふさわしい形でよみがえらせ、情を感じさせるキャラクターに変えた。フォアキン・フェニックスの演技が素晴らしいのはもちろんですが、映像やプロダクションデザインなど、さまざまな点で感銘を受けました」と言い添えた。
審査員大賞は、下馬評の高かったロマン・ポランスキーの「An Officer and a Spy」が受賞。ドレフュス事件として知られるフランスの冤罪事件を、「忘れられたヒーロー」ピカール中佐の視点から描き、社会性とエンタテインメント性が融合した、見ごたえのあるものになっている。
男優賞をさらったのは、ジャック・ロンドンの原作をイタリアを舞台に脚色した「Martin Eden」で、骨太な魅力を見せるルカ・マリネッリ。一方の女優賞は、ロベール・ゲディギャン監督の長年のミューズである、「Gloria Mundi」のアリアンヌ・アスカリッドが輝いた。
ベネチアは年々、アカデミー賞をにらんだキックオフの場として注目されるが、今年は「ジョーカー」に加え「アド・アストラ」、ノア・バームバックの「マリッジ・ストーリー」、スティーブン・ソダーバーグの「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」など、アメリカ映画の良作が揃った。もっとも、このうちバームバックとソダーバーグはNetflix作品で、これは昨年の「ROMA ローマ」からの傾向と言える。
脚本賞はヨン・ファンによる1967年の香港の暴動を背景にした中国のアニメーション「No.7 Cherry Lane」、審査員特別賞はフランコ・マレスコ監督がイタリアン・マフィアの現在に残る傷跡を振り返ったドキュメンタリー「The Mafia Is No Longer What It Used to Be」、そして新人俳優に与えられるマルチェロ・マストロヤンニ賞は、オーストラリア映画「Babyteeth」でパンクな若者に扮し瑞々しい演技を見せたトビー・ウォレスにおくられた。
今年の審査員の意見は満場一致にはならなかった様子で、マルテルは「議論の末の審査員による授賞が、必ずしも満場一致になる必要はないと思います。わたしは民主的なやり方で決めました」と発言。また未成年の少女にわいせつな行為を働き訴えられた過去のあるポランスキー監督に対して、「作品について語るなら、その監督についても語ることは避けられないと思います。ポランスキー監督は、世界に対する彼のとても興味深いビジョンを今回の作品で描いています。ですから、彼自身について語ることを避けた方が、作品に対するより良い判断ができるとは、わたし自身は考えていません」と余韻を残す発言をした。(佐藤久理子)
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