小松菜奈、初めてのNYで“ライジング・スター賞”!「どんどん海外作品に挑戦したい」
2019年7月3日 14:00
[映画.com ニュース] 中島哲也監督の映画「渇き。」で衝撃的な演技を披露して一躍注目された小松菜奈は、その後も「バクマン。」「溺れるナイフ」「恋は雨上がりのように」「来る」といった数々の話題作に出演。そんな目覚しい活躍を続ける小松がこのほど、第18回ニューヨーク・アジア映画祭でアジアの若手スターに贈られる「ライジング・スター賞」を獲得。同映画祭で上映された出演作「サムライマラソン」への思い、そして受賞の喜びを語った。(取材・文/細木信宏)
マーティン・スコセッシ監督(「 沈黙 サイレンス」)、バーナード・ローズ監督(「サムライマラソン」)といった“海外の監督”とタッグを組んできた小松。今回の受賞について「本当に光栄で、とても嬉しいです。今回、初めてニューヨークに来たんですけれど、役者として、ひとりの人間として、海外の人たちにこうやって評価して頂くのは、すごくありがたいことです。この賞に恥じぬように、これからもっと役者として追求し、人としても大きく成長していけるような女優になりたいです」と語り、多くの名作が生まれたニューヨークで、新たな一歩を踏み出した。
ニューヨーク・アジア映画祭のオープニングナイトを飾った「サムライマラソン」は、外国の脅威が迫る幕末を舞台にした物語。安中藩主・板倉勝明(長谷川博己)は藩士を鍛えるために15里の山道を走る遠足を開催するが、伝達の行き違いによって幕府への反逆とみなされてしまう。やがて、安中藩取り潰しを狙う刺客が藩士不在の城に送り込まれ、遠足参加中に藩の危機を知った安中藩士の唐沢甚内(佐藤健)は、その計画を阻止するために動き出していく。「ラストエンペラー」のジェレミー・トーマス氏がプロデューサーを務め、「不滅の恋 ベートーヴェン」「キャンディマン」のバーナード・ローズ監督がメガホンをとった今作にあって、小松は板倉の娘・雪姫に扮している。
今作のローズ監督の演出手法は、小松にとって新鮮だった様子。なかでも“即興でセリフを変えられた”という点に、俳優としてのやりがいを感じたそうだ。
小松「最初は、すごく難しかったです。共演者がどういうセリフで来るのかわからず、すごい緊張感があって、そのなかでお芝居していたので、最初はそれに慣れるのに必死。生きている心地がしませんでした。でもその演出をこなしていくうちに、それにハマっていく自分がありました。通常のセリフだと、ある程度先が見え、演じる上でも安心できるのですが、今回の演出では相手の共演者が何をしてくるのかわからないので新鮮でした」
なるべく“生の芝居”を見たいというタイプのローズ監督は、現場に立つとすぐにカメラを回し、リハーサルも一切しない。そんな演出方法を繰り広げるローズ監督に、小松自身が自ら提案したアイデアはあったのだろうか。
小松「実はありました。それは今作の冒頭のシーンで、板倉勝明が雪姫の絵を破る場面。そこでは雪姫のセリフのシーンが最初にあったんですが、私は言葉を発すると何か“薄い感じ”がしてしまい、言葉だけでは伝わらない部分を大事にしていきたいと思ったんです。そこで、監督に“セリフを発せずに演じること”を提案してみたら『そう思ったのなら、やってみたら良いんじゃない』と言ってくださいました」
撮入の1カ月前から殺陣の練習に励んでいた小松。現場では、思わぬ出来事に直面したようだ。
小松「雪姫、唐沢、そして森山未來さん演じる辻村が3人で一緒に敵と戦うという、最も面白い見せ場のようなシーンがあって、練習でも『格好良いシーンだなあ』と思っていました。ところが現場に入ったら、ローズ監督に『それはリアルじゃない。これは練習してきたからできたもの。リアルな殺陣は、ダンスのように斬りつけるものではない』と言われてしまい、それまで練習してきたものがカットされてしまったんです。私はすごくショックで残念だったんですが、監督の安定した演技を求めないやり方はすごく勉強になりました」
これまで多種多様な作品に参加してきた小松だが、一体どのような点を重視し、出演作を選択しているのか――その答えから見えてきたのは、あらゆる役柄に挑戦し続けるという意欲的な姿勢だった。
小松「基本的に、マネージャーさんとの話し合いの中で“脚本を通して感じたこと”“この監督さんならやりたい”“興味を持った題材だったらやりたい”ということを伝えています。今はあまり考えすぎず、与えられた役柄にひとつひとつ取り組んでいき、年齢を追うごとに自分で決めていっても良いかなと考えているんです。でも今は若いから、少女漫画の映画化作品などに出演しつつ、俳優として色々な顔を持っていた方が良いと感じています。自分自身に誇りを持ち、カメレオンのように変化できる女優になりたいんです」
そして「今後も海外作品を視野に入れながら、演じていきたい?」と尋ねてみると「はい、勿論ありますね」と告白。「海外の作品に出演してみて、日本映画の良さもよりわかるようになったんです。(自分の周りに)色々な風を吹かせてもらって、海外の役者さんとの出会い、異なる国の人たちとの話し合い――同じ現場を経験できるだけでも、全てがこれからの経験になります。その経験が積み重なっていくので、機会が与えられるのであれば、どんどん海外の作品にも挑戦していきたいと思っています」と強い意志を宿した目で答えてくれた。
同世代のなかでも、ひとつ飛び抜けた存在感を示してきた小松。主戦場を海外に移して挑戦していく姿が、近い将来見られるかもしれない。
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