第72回カンヌ映画祭最高賞はポン・ジュノ 2年連続、家族をテーマにしたアジア映画に栄冠
2019年5月26日 10:35

Photo by John Phillips/Getty Images
[映画.com ニュース]第72回カンヌ国際映画祭が現地時間の5月25日に終幕を迎え、ポン・ジュノ監督の「Parasite」がパルムドールに輝いた。昨年の是枝裕和監督作「万引き家族」に続き、今年も家族をテーマにしたアジア映画が受賞する形となった。
ポン・ジュノ監督は受賞会見で、「パルムドールを頂いて、とても驚いています。とくに審査員長が満場一致と語っていたことにはびっくりしました。自分は映画を作るときに、どんなタイプの作品にしようなどと考えたことはありませんが、結果的にさまざまなジャンルが混ざったような作品で、それがみなさんに評価されたということはとても嬉しいです。今年は韓国映画の100周年に当たるので、その年にカンヌで評価されたことは、大きな贈り物だと思っています」と語った。また本作を作るにあたって影響を受けた監督として、アルフレッド・ヒッチコック、クロード・シャブロル、キム・ジウンの名前を挙げた。
グランプリに輝いたのは、発表になった途端、プレスのあいだではどよめきが見られたマティ・ディオップの初長編「Atlantique」だ。新天地を求めてアフリカからヨーロッパへ渡ろうとする青年と、彼を思うヒロインの物語。白昼夢のようなムードと独創的な音楽が神秘性を醸し出し、審査員に評価されたが、批評家の意見は割れていた。
監督賞には「いまさらこの賞をあげなくても」という意味で驚きの声があがった、ダルデンヌ兄弟の「Young Ahmed」。イスラム原理主義に狂信的な13歳の少年が辿る悲劇を描く。女優賞には、こちらもダークホースだった「Little Joe」に主演したエミリー・ビーチャムが輝いた。一方、男優賞は評価の高かったペドロ・アルモドバルの「Pain and Groly」に主演したアントニオ・バンデラスが受賞。バンデラスは「ペドロから祝福のテキストを受け取った」と語ったが、これでまたアルモドバルはパルムドールを逃した形となった。
審査員賞は、治安の悪い郊外の住民と警察の対立を描いた過激なフランス映画「Les Miserables(原題)」と、ブラジルの寓話的なサスペンス映画「Bacurau」が仲良く分けあった。前者のラジ・リ監督は受賞会見で、本作をマクロン大統領に見てもらう計画があることを明かした。
脚本賞には、パルムドールに推す声もあったセリーヌ・シアマの「Portrait of Lady on Fire」。さらに、相変わらずユーモラスなアプローチで政治的なメッセージを伝えるエリア・スレイマンの「It Must Be Heaven」が、審査員から特別表彰を受けたが、もっと大きな賞に価するのではという声も聞かれた。また評価の高かったテレンス・マリックは無冠に終わった。
全体を振り返るなら、パルムドール以外は下馬評と異なる意外な選択が多かった。政治的なテーマを持つ作品が目立ったことについて尋ねられた審査員長のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは、「賞は民主的なプロセスで選ばれた。映画は我々が生きている社会を反映するものだが、授賞にあたっては、政治的なメッセージや誰の作品かといった要素は一切関係なく、純粋に映画的な見地に依った」と断言した。(佐藤久理子)
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