実際の強盗犯が出演「アメリカン・アニマルズ」監督がドキュメンタリーの手法を採用した理由
2019年5月17日 16:00
[映画.com ニュース] 家族にも友人にも恵まれ不自由のない生活を送る大学生4人が、“何者かにならなければ”という現代社会特有の欲望と衝動に突き動かされ、12億円の画集を盗み出す完全犯罪を計画する--。そんな事件を映画化した「アメリカン・アニマルズ」が、5月17日に公開される。エバン・ピーターズ、バリー・コーガンら旬の若手俳優陣のほか、なんと実際の犯人までもが出演し、犯行当時を回想するという実験的な手法を用いて話題を集めた作品だ。来日したバート・レイトン監督に話を聞いた。
「彼らと手紙のやり取りをして、その動機を聞くうちに、ただの強盗ストーリーではなく、今の社会と若者に訴えかけるものがあると感じました。何か特別な人間にならなくてはいけない、そういうプレッシャーの中で、現代の若者たちは生きています。平均的であることや普通であることはつまらないと思われている、その風潮はまさに当時の彼らが感じていたことなんです。それが、彼らの犯罪のきっかけになった。そこを掘り下げれば、単なる強盗映画ではない、深みのある作品になるのではと考えたのです」
「ドキュメンタリーは、わざわざ劇場に行かずにテレビで見ればいいと考える観客も多いと思うので、もう少し手を加えて、より広い人々に見てもらう作品を作りたかったのです。また、この事件自体は、ドキュメンタリーで伝えるほど重要ではないと感じました。方向性を失った若者たちが、間違った判断をしてしまう……彼らは『レザボア・ドッグス』『オーシャンズ11』などの映画を参考にして、ファンタジーの世界に入り込みます。観客にも、そのような流れを体験して欲しかったのです。ドキュメンタリー風に始まり、だんだんファンタジーに入っていく。その過程を上手くドラマとして描く手法を選びました」
「また、実際の犯人たちが出演するというドキュメンタリーの要素を入れたのは、これがフィクションでありながらも、実話だということを繰り返し思い出してもらうため。ドキュメンタリーの部分があると、これは、自分の身にも起こりうることなのだとわかり、作品により深く入り込んでいくことができます。挑戦的ではありましたが、その二つの要素を融合させてみたのです」
「私がコンタクトを取ったことで、彼らもなんとなくこれが映画化されるのではと頭の片隅にあったかも知れませんが、4人とも最初は懐疑的でした。家族もつらい思いをしていましたし、ハリウッド的なコメディとして面白おかしく描いて欲しくないということもあったでしょうから、躊躇していました。そして“彼らをヒーローとしては描かない”、“純朴な若者たちだった”ということを伝え、必ず真実に基づいて描く、と丁寧に説明したことで、彼らの信頼が得られたと思います。一方で、彼らに編集には口出しはさせないこともお願いしました。事件を派手なエンタテインメントとせず、事実を伝えて、こういうことをしたら、こういう結果になる、という警告としたいと伝えたら、理解してくれました。あとは、被害にあった図書館員に満足してもらうことが、私にとって一番重要でした。彼女がこの映画を見て納得してくれたのでとてもうれしかったです」
「彼らは『アメリカの鳥類』のほかに、人間の進化について書かれたダーウィンの本を盗みます。彼らはダーウィン的な進化はとっくに遂げており、人間が生きる最低限必要なものを既に手に入れ、それから更に別の次元を欲している。そういう人間がダーウィンの本を選ぶことが皮肉だと思ったのです。また、動物的な行動をする若者という意味合いを織り交ぜてこのタイトルを選びました」
「私は幼い頃から人間の実話に興味を持っていました。真実をビジュアル的にどう見せていくか……そういう流れを考えることが好きでした。また、両親がアーティストなので、自分も何かしらアートに関わるのだろうと思っていました。映像作りはもちろん楽しいのですが、ストーリーの部分により興味があるので、映画監督を志したのです。映画は写真、音楽、小説、ストーリーテリング全ての要素が含まれ、それが実現できる表現方法です」
「今回の作曲家はイギリスの大きな賞にノミネートされました。既存の曲を使う場合は、1960~70年代の楽曲が多いです。今流行している楽曲より重みがあり、我々の中で密着しているので、その当時の曲を使って作品を盛り上げることを好んでいます」
「黒澤明監督は日本に限らず、世界的に尊敬されている監督ですね。『羅生門』で、登場人物のそれぞれの視点から描くというやり方は、今回の作品でも多少は影響を受けています。最近見たのは、是枝裕和監督の『万引き家族』。素晴らしく美しく、ユニークな作品。是枝さんもドキュメンタリー出身だということは、作品から感じます。まだ全ての作品を見られていませんが、これから振り返って見たいです」
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