「ダンボ」ティム・バートン監督が最も悩んだのは?
2019年4月2日 13:00
“大きすぎる耳”を持つ子象のダンボが、サーカス団の仲間の力を借りて、引き離された母象の救出に挑む。ダンボの命運を握るサーカス団員、ホルト役でコリン・ファレルが出演するほか、マイケル・キートン、ダニー・デビート、エバ・グリーンらが共演。日本では3月29日に公開を迎え、国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)で2位に初登場した。
これまでも「シザーハンズ」「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」など、特異なキャラクターに寄り添い、救いの手を差し伸べてきたバートン監督。アニメーション版には「ダンボが大きい耳という欠点を強みに変えるというところがすばらしいと思った」と敬意を込めつつ、「人間たちの物語もダンボの物語と比例して描かれているんだ。例えば、ホルトは片腕を失い、妻も失い、仕事も危ない、子どもたちともすれ違っている。“ありのままでいなさい”と言葉で言うのは簡単だけれど、短所が肉体的なものや精神的なものだったら、それを変えていくのは難しい。今回ダンボが空を飛ぶというのは、それを伝えるすばらしい象徴だと思ったんだ」と、本作に加えた自身のエッセンスを説明する。
見どころでもあるダンボの飛行シーンは、バートン監督を「厄介なところ」と悩ませた部分でもあった。「実写で象を飛ばすということに説得力をもたせるのは、難しいんだ。アニメーションでは簡単に描けても、実写では技術的にも苦労はある。本作でダンボは空をたくさん飛んでいるけれど、それでも抑え気味にした。やりすぎてしまわないよう、繊細なバランスだったよ」。
こだわったからこそ、ダンボが空を飛ぶシーンは躍動感あふれる映像になり、ホルトをはじめ、登場人物たちがダンボの飛行を願う演出も際立つ。「ダンボの周りの人間たちは喪失感を抱えていて、葛藤しているんだ。みんな気持ちが沈んでいるから、ダンボを見て『飛ぶんだ』と応援し、実際にダンボが飛ぶことによって彼らも解放されていくんだよ」。
「アリス・イン・ワンダーランド」に続き、監督としてディズニーと再タッグを組んだバートン監督。もともとはアニメーターとしてディズニーに勤めており、「昔は大変だった。アニメーターとしてうまくなかったけれど、一生懸命努力していたよ」と懐かしむ。当時は、自身のやりたいことを仕事として貫くことに悩んだときもあったそう。同じ悩みを抱える人が多い時代、そんな人々へ向けて「僕は当時、仕事をする傍らで自分のやりたいこともやっていたんだ。ピアノの演奏とかなんでもいいけれど、何か自分の好きなクリエイティブなことをプラスのものとして持っていると、自分の魂にとってもいいことだと思う」と、バートン監督流のアドバイスを送った。