【世界の映画館めぐり】ウズベキスタン、最新ハリウッド作上映のシネコン&5D設備もある国営劇場
2018年8月11日 10:00
[映画.com ニュース] 前田敦子主演、黒沢清監督の最新作「旅のおわり、世界のはじまり」が撮影された中央アジアのウズベキスタン。かつてシルクロードの中継地として繁栄し、旧ソ連崩壊直後の1991年に独立した共和国です。映画.com編集部が首都タシケントの特色ある2つの映画館を訪れました!
成田からの直行便で約9時間で到着する、東京からおよそ6000キロ離れた首都タシケント。シルクロードの要所ということで、アジアとヨーロッパが交じり合った様々な文化と、旧ソ連時代の建造物や習慣が共にある街で、日本とは全く違う異国情緒あふれる体験ができます。
そんなタシケントの映画館は、ハリウッド映画を中心に上映する日本で言うところのシネコンと、主に国産映画を上映する国営映画館の2種類があります。はじめに訪問したのは、Premier Hall Cinemaというシネコン。日本と同様にタシケントのシネコンの多くも、商業施設に併設されていますが、ここは、ナイトクラブとレストランが入ったビルの隣にある、それほど規模の大きくない劇場です。
取材当時は日本で公開前の「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」「デッドプール2」「モンスター・ホテル クルーズ船の恋は危険がいっぱい?!」などが上映中で、タイトルは全てキリル文字で書かれているため、ポスターの写真がないと何の作品かまったくわかりません。この劇場は作品や時間帯で料金が異なるシステム。午前中が最も安く、時間が進むにつれ、次第に値段が上がります。筆者は「ハン・ソロ」の夜の上映を選択。最も高い時間帯ですが、料金は34000スム、約500円で「ハン・ソロ」3Dを日本より早く見られるなんて!と、お得感とともにますます期待が膨らみます。
施設内は、日本のシネコンとほとんど変わりません。宗教上の理由で、人々はあまり酒を飲まないお国柄なので、ポップコーンやソフトドリンクはありますが、アルコールの販売はなし。あとはマーベルをはじめとしたグッズ販売所がありました。この日は、席数70席ほどのRealD社スクリーンでの上映。土曜の夜ということもあり、若いカップルを中心に、開場してすぐに7割ほどが埋まります。
一足早く見た「ハン・ソロ」は、ロシア語の吹き替えにウズベク語の字幕という超高難易度上映! しかしセリフがまったくわからない分、俳優陣の演技やセットの造形など、映像表現にじっくりと目を凝らすことができ、これまでのシリーズとのつながりも確認しながら楽しめました。
そして、翌日訪れたのが、国営のアリシェル・ナボイ記念映画館 Cinema Palaceという劇場。ウズベキスタンでは、地下鉄をはじめ国営の施設には警察官がおり、入り口で手荷物検査を求められることも。そして、彼ら公務員の撮影はNGです。ここでは主にウズベキスタンで制作された作品を上映するほか、昨年は日本大使館とウズベキスタン国営映画局の共催による日本映画祭が行われるなど、国際的なイベントも行われる施設です。
清掃が行き届き、とても広々した館内はまさに公的な施設という雰囲気。スクリーンのほかに、演劇や音楽の公演用のホールも併設されています。レトロなデザインの売店や、子供向けの遊戯場に心が和みます。この日は、ウズベキスタン映画4作品が上映されていました。料金は一律12000スム(170円)。シネコンの海外作品よりもかなり割安です。同行してくれたコーディネーターの話では、ウズベキスタン人は映画が大好きで、特に若者には、ラブストーリーが人気なのだとか。これは日本と変わりませんね。
滞在時間の都合で、残念ながらウズベク映画の鑑賞はできなかったのですが、劇場内にはソ連時代から映画界を支えた名監督や俳優陣を称える写真や当時を偲ばせる絵画、実際に使われていた映写機、そして日本では見たことのないような機材が展示され、ウズベキスタンでは古くから映画が文化、産業として愛されていることがわかります。そして、筆者が気になったのが4Dならぬ5Dと書かれた部屋。この施設は映画館だけでなく、遊園地にも存在していたので、きっと日本では味わえないようなアトラクション体験ができるに違いありません。
ここからは、タシケントの観光情報を。市民の台所である最大の市場「チョルスー・バザール」では、美しいドームを持つ建物内に、新鮮な生鮮食品が所狭しと並べられています。日本ではなかなかお目にかかれない、馬肉や干しヨーグルトなど珍しい食材も。ドーム外には、ウズベク人の主食でもある窯焼きのパンを売る店、日用雑貨や衣料品、みやげ物店、DVDなどを扱う店舗もあり、目的に応じたショッピングが楽しめます。
タシケント観光で外せないのが、第2次大戦後に日本兵捕虜が建設に関わったナボイ劇場。伝統的なロシア式のオペラハウス建築の館内の6つの部屋には、それぞれウズベキスタン内の地方ごとに異なる文様を彫刻したレリーフが施されています。遠く離れた地で見る、繊細な日本人の手仕事を目の当たりにすると、様々な思いを馳せずにはいられません。「旅のおわり、世界のはじまり」でも、前田敦子さんの重要なシーンが撮影されたのだとか。
グルメは、羊肉とにんじんなどの野菜と米を油で調理した、ピラフの原型とも言えるチャーハンのような米料理「プロフ」。パスタやうどんを思わせる、トマトソースの麺料理「ラグマン」、羊や牛の串焼き「シャシリク」などが代表的なウズベク料理。どれも素材の持ち味を生かした優しい味付けなので、日本人の口にも合います。また、現地の人にはサワークリームのようなさわやかな味わいの乳製品をサラダや前菜に合わせて食べるのが好まれています。市内にはハンバーガー店やカフェも多数あり、カザフスタン料理、ロシア料理など近隣諸国の名物が食べられるレストランや、寿司を扱う和食店も人気です。
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