ジュリエット・ビノシュ、「Vision」河瀬直美監督の現場で最も感銘を受けたのは?
2018年6月16日 09:00

[映画.com ニュース]河瀬直美監督の最新作「Vision」(公開中)で永瀬正敏とダブル主演を飾ったオスカー女優ジュリエット・ビノシュが、公開にあわせて来日。映画.comのインタビューに応じ、本作の舞台裏や役作りについて語った。
フランス人エッセイストのジャンヌ(ビノシュ)は、幻の植物“Vision”を探して、アシスタントの花(美波)とともに奈良・吉野を訪れ、山間に暮らす山守の男・智(永瀬)と出会う。智は、山で自然とともに暮らす老女アキ(夏木マリ)からジャンヌとの出会いを予言されており、2人は文化や言葉の壁を超えて次第に心を通わせていく。そんななか、智の前に謎の青年・鈴(岩田剛典)が現れたことで、運命の歯車が動き出す。
「GODZILLA ゴジラ」や「ゴースト・イン・ザ・シェル」に出演し日本との関わりも深く、カンヌ国際映画祭の最高賞を受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督と次回作でタッグを組む予定のビノシュは、「日本という国は、伝統を大事にしている。日本は高度経済成長期を経て、今や世界的にも発展した国の1つだけれど、精神的なものを大切にしていると思うわ」と日本の印象をよどみなく語る。
「自然と人間は、切り離せないもの。自然に戻るということは過去に回帰することではなく、自分の基になっているものを再確認することなの。日本の方は、そういった理念を大切にしている。自然を失って文明だけで生きてしまうと、人は人生に迷ってしまったり、自殺する人までも出てきてしまう。ちゃんと自分のルーツを持ちながら、新しいことに向かっていくのが大事だと思うわ」と含蓄ある言葉を紡ぎ、深い人生観をのぞかせたビノシュ。その凛(りん)としたたたずまいは、劇中のジャンヌそのものだ。劇中では感情を内側から放出させていくような豊かな妙演を見せているが、河瀬監督の独自の演出法を経験したことが大きかったという。
「私自身、今回撮影に参加して感動したわ。河瀬さんは、撮影現場で雰囲気作りをしてくれる数少ない監督だった。演技をするときに、役者にとって“静寂”はとても大切なものなの。静寂があるからこそ、その地に碇(いかり)を下ろせるし、その人物を生み出せる。書道と同じね。真っ白な半紙があるから、そこに字を書ける」。ビノシュはまた、自身の人生体験を作品に反映させていく河瀬監督の映画作りにも感銘を受けたという。「本作には、“置き去りにしたものとどう関係を修復していくか”というテーマが含まれている。河瀬さん自身が、両親から捨てられてしまったという経験を重ね合わせているところがあって、彼女自身にとっても大事なテーマだったと思う。私自身にはそのような経験はないけど、すごく心を動かされたわ」。
さらに、本作のもうひとりの主人公ともいえる“森”が、ビノシュの感性に不思議な力を与えた。「森に入ると、すごく神秘的な何かを感じるの。それがどういうものなのかはうまく説明できないのだけど、私自身が役にハマっていく手助けになってくれたわ。本作はすごく感覚的な映画で、風の音がしたり、光であったり、人物たちを通して、森を生き生きと描いている。そして人物たちの立場からいうと、自然の中にいることで、今まで捨ててきた過去に結びつく、そういう場として“森”が描かれている。同時に、想像をかき立てる映画でもあるわ。自分の過去の記憶をたどりながら想像し、自然の中に身を置くことによって、あるいは人々と出会うことによって、何か感じるものがある。きっとこの映画の中には、言葉では説明できないような“何か”があるの」。
言葉の端々に、あふれる知性を感じさせるビノシュ。河瀬監督、是枝監督、さらには黒沢清監督や深田晃司監督といった日本の実力派たちがフランスで評価されている理由を聞くと、「良い作品だからよ!(笑) 他の解釈はないわ。良い作品が多いからよ」ととびきりの笑顔で答えてくれた。
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