是枝裕和監督が凱旋会見「安藤サクラの演技がケイト・ブランシェットを虜にした」
2018年5月24日 08:00
[映画.com ニュース] 第71回カンヌ国際映画祭(5月8~19日)のコンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督が5月23日夜、帰国し、東京・羽田空港内で凱旋会見を行った。
日本人監督のパルムドール受賞は1997年、今村昌平監督の「うなぎ」以来、21年ぶりの快挙。「海街diary」(2015)以来3年ぶり5回目のコンペ部門で、自身初のパルムドールを手にした。是枝監督はこれまでに7回カンヌに参加。「誰も知らない」(04)では、主演の柳楽優弥に最優秀男優賞をもたらし、「そして父になる」(13)では審査員賞を受賞した。
次回作の打ち合わせのため、米ニューヨークから帰国した是枝監督。黄金に輝くパルムドールのトロフィーと数日ぶりに再会すると、笑み。「ようやく日本に帰ってきて、スタッフのにこやかな顔を見たら、ちょっと実感が出てきました。ただ、公開は来月ですから、宣伝活動も始めないといけない。緩んだ笑顔を見せている場合でもない。公開に向けて走りたいと思います」と語った。
「授賞式から数日が経過して、具体的な実感は?」と聞かれると、「これだけの記者が集まっているんだから、大きな賞なんだな、と。実感はちょっとずつですね。トロフィーは本当に重いんです。授賞式からディナーまで持っていて、筋肉痛になりました。治ったのは昨日です。まだ相談していないので、僕が持って帰ってもいいものか、分かりませんが、一晩くらいは抱いて寝ようと思います」と最高の笑顔を見せた。
ニューヨークでは早くも次回作の打ち合わせを済ませてきた。海外のサイトではカトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュが母娘役で共演するとも伝えられているが、「(話すと)いろいろ差し支えがある。まさかこんなことになるとは思っていなかったので、次回作の打ち合わせの予定を入れてしまった。近々正式発表になると思うので、待ってください。打ち合わせはうまくいきました。その時は(賞を)取れて良かったと思いました。(相手からは)『断れないな』と言われました」と報告した。
受賞に至った理由についての自己分析を聞かれると、「こんな風に褒められたということを喋ることになるんですけども、大丈夫ですかね? 夜中に公式のディナーがありまして、審査員とご飯を食べました。審査委員長のケイト(・ブランシェット)さんは公式の記者会見でも、演出と撮影と役者、そのトータルでよかったという話をしていましたが、その時は安藤サクラさんのお芝居について熱く熱く語ってくれました。(審査員の)女優たちは彼女のお芝居、特に泣くシーンの芝居がすごくて、『もし、今回の審査員の私たちがこれから撮る映画の中であの泣き方をしたら、安藤サクラの真似をしたと思ってください』と。それくらい、彼女の、この映画における存在感は大きく、虜にしたんだなということがよく分かりました」と語り、安藤をはじめとする出演者のアンサンブルが成功の要因とアピールした。
配給のギャガによれば、パルムドールの反響は大きく、当初予定の200館の公開規模から300館以上に拡大されることが決まった。6月2、3日には先行上映も行う。海外セールスも好調で、既に149の国と地域での公開も決まり、今後もさらに増えていく見通しという。書き下ろし小説「万引き家族」(宝島社)も5月28日の発売を前にして、初版4万部に加え、重版3万部が決まった。
「万引き家族」は犯罪を繰り返しながら、生計を立てる“家族”の物語。ある日、虐待を受けていた幼い娘を一員に加えたことから、やがて、それぞれの秘密が明らかになっていく。リリー・フランキー、樹木希林、安藤、松岡茉優らが出演。6月8日から全国で公開。