「チャーチル」でオスカー獲得、辻一弘が凱旋!完璧な特殊メイクを生み出すコツとは?
2018年3月20日 15:00

[映画.com ニュース] 「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」で第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した現代美術家でメイクアップアーティストの辻一弘氏が日本に凱旋し、3月20日に都内で会見した。
辻氏に加え、名優ゲイリー・オールドマンがアカデミー賞主演男優賞に輝いた本作。ウィンストン・チャーチル(オールドマン)の首相就任からダンケルクの戦いまでの知られざる27日間を、「つぐない」のジョー・ライト監督が描く。
2012年に映画界を引退した辻氏は、10年来の付き合いとなるオールドマンからの直々のオファーを受け、熟考の末に復帰を決断。「ゲイリーさんが、『(辻が)メイクを担当できるんだったらこの役を受ける』と言ってくれました。でも、映画界を去ると2012年に決心したので、戻ると人生の裏切りになってしまう。(メイクアップアーティストを志したのは師匠である)ディック・スミスさんのリンカーン大統領のメイクを見たことがきっかけだったんです。ようやくこういった機会があって、しかもゲイリーさん本人が持ってきてくれて、人生に1回あるかないかという機会だったのでお受けしました」と復帰までの道のりを明かした。
アカデミー賞を受賞した瞬間の心境を問われると、「あの日はすごく緊張していました。呼ばれた瞬間は、とりあえず上がってスピーチを終わらせようということしか覚えていないです。有名な役者さんがたくさん並んでいるので、とりあえずゲイリーさんだけ見てやろうと。終わってよかった」と振り返った。
今回のメイクについて、「チャーチルとゲイリーの顔はだいぶ違っていて、プロポーションも異なる。“メイクに見えない”メイクをゴールとして、付けすぎずに似せていくのが難しかった。テストメイクを5つくらい行いましたね。今回、色々な方に『メイクに見えない』と言っていただけたので、非常によかった」と手ごたえを明かした辻氏。これほどに完璧なメイクを生み出せた“コツ”を聞くと、「どう完璧にやっても、全くの生き写しにはならない。映画の仕事というのは、万人のほとんどを納得させる結果を出さないと使われないんです。僕のやり方とゲイリーさんの演じ方、プロダクションデザインなどのすべてが合わさって(オスカー獲得という)結果が出たと思う。重要なのは、(監督らの意図を)理解しながら自分を殺さずに結果を出す、ということですね。映画の仕事で1番難しいのが、色々な方から注文が来ること。それをただ聞いてやっていたら、わけのわからない結果になってしまう。しっかりと自分を持っていないといけないんです」と力強く答えた。
辻氏の口からは裏話も飛び出し、「ゲイリーさんに最初に言ったのは、『セットでメイクしたくない』ということ。元々、僕が映画界を去った理由は、大勢の中で仕事をするのが好きじゃなかったからなんです。特殊メイクは最初にセットに入って最後に出るような仕事ですごく大変なので……。メイクが完成した後に、(メイク担当の)2人に話して託しました。メイクにかかった時間は1日に3時間15分から3時間半。撮影は48日間と、タイトなものでした」と明かした。オスカーを獲得したことで、映画界からのオファーが殺到することも考えられるが、「本当にやりたいような映画の仕事だったらやるかもしれませんが、フォーカスを当てるのはファインアート。2020年ころに個展を日本でやろうと思っているんです」と次なる目標に意欲を燃やしていた。
「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」は、「博士と彼女のセオリー」のアンソニー・マッカーテンが脚本を手がけ、オールドマンに加えて「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマス、「ベイビー・ドライバー」のリリー・ジェームズらが出演する。3月30日から全国公開。
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