瀬々敬久監督「菊とギロチン」7月公開 木竜麻生&東出昌大の熱演とらえた場面写真入手
2018年3月8日 10:00
[映画.com ニュース]瀬々敬久監督が8年ぶりに自身の企画によるオリジナル映画としてメガホンをとった「菊とギロチン」が、7月から全国で公開されることが決定。あわせて、主演に抜てきされた新人女優・木竜麻生、東出昌大、寛一郎、韓英恵ら主要キャストの熱演をとらえた場面写真を、映画.comが先行入手した。
舞台は大正末期、不穏な空気が漂う関東大震災直後の日本。物語の軸となるのは、かつて実際に日本全国で興行されていた女相撲の一座「玉岩興行」と、実在したアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たち。力自慢の女力士のほかにも、元遊女や家出娘が集った「玉岩興行」「格差のない平等な社会」を標榜する「ギロチン社」が、ともに抱く「差別のない世界で自由に生きたい」という純粋な願いによって、性別や年齢を越え、強く結びついていくさまを描き出す。
瀬々監督が本作を企画したのは、30年前のこと。「10代の頃、自主映画や当時登場したばかりの若い監督たちが世界を新しく変えていくのだと思い、映画を志した。僕自身が『ギロチン社』的だった。数10年経ち、そうはならなかった現実を前にもう一度『自主自立』『自由』という、お題目を立てて映画を作りたかった。今作らなければ、そう思った」と決心を固めて製作をスタート。「映画は多くの支援があったからこそ完成できた」と明かすように、瀬々監督の思いに賛同した多くの会社や個人による出資やカンパで資金を調達した。「何かを変えたいと映画を志した若い頃、自分はこういう映画を作りたかったのだと初めて思えた。あとはいざ、世界の風穴へ。そうなれれば本望だ」と熱を込めて語っている。
約300人の応募者のなかからヒロインの新人力士・花菊役に選ばれた木竜は「花菊の真っ直ぐなところや、強くなりたいという想いを感じて演じるのにとにかく必死でした。監督をはじめ、この作品に関わった人たちの熱いものがそこにあったと思います」と告白。「ギロチン社」のリーダーで詩人の中濱鐵(なかはま・てつ)を演じた東出は「関東大震災後の混沌とした時代を生きる滅茶苦茶な人々の姿が、衣食住足りた現代に生きる我々の閉塞感をぶち破ります」と宣言し「変な映画です。ですが、この変な映画を心から愛しく思います」と思いの丈を述べている。
花菊と惹かれ合いながらも純粋な夢に殉じる「ギロチン社」の中心メンバー・古田大次郎役に挑戦するのは、俳優・佐藤浩市を父に持つ寛一郎。「実在の人物をモチーフにバラバラの実話を組み合わせ、フィクションを作り出しているところに面白さを感じて撮影に挑みました」と振り返ると「僕はアナキストの役でしたが、一見非情に見える彼らも意外と繊細で、 思想は極端ですが、今の若者と似てる部分があると感じました」と分析している。中濱と心を通じ合わせる元遊女の女力士・十勝川を演じた韓英恵は「腹がよじれる程本気で笑って、本気で喧嘩した日もあった。土俵の上では本気で戦い、このヤロゥ、負けるもんか!と本気で思った」と体を張って立ち向かった相撲シーンを述懐。「私たちは、いつの時代も力強く生きるべきだ。もう戻れない私たちの青春、ぜひご覧ください」とコメントを寄せている。
「菊とギロチン」は、映像制作集団「空族」の相澤虎之助が脚本に参加、黒澤明監督作「羅生門」や溝口健二作品を手がけてきた馬場正男が美術監修を担当。渋川清彦、山中崇、井浦新、大西信満、嘉門洋子、大西礼芳、山田真歩、嶋田久作、菅田俊、宇野祥平、嶺豪一、篠原篤、川瀬陽太が出演し、永瀬正敏がナレーションを務めている。7月から東京・テアトル新宿ほか全国順次公開。