小林稔侍&壇蜜「星めぐりの町」はこれまで以上に“自分自身”が投影された映画
2018年1月26日 08:00
舞台は、愛知県豊田市。妻を早くに亡くし、娘で整備士の志保(壇蜜)と2人で暮らす豆腐職人・島田勇作(小林)のもとに、東日本大震災で家族を失った少年・政美(荒井陽太)が引っ越してくる。深く傷ついていた政美だったが、勇作とふれあううち、次第に心を開いていく。「蝉しぐれ」などで知られる黒土三男監督がメガホンをとった。
「不能犯」(2月1日公開)や、「家族はつらいよ」シリーズの最新作「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」(5月25日公開)が控える小林は、意外にも本作が映画初主演作となった。76歳にして悲願を達成し、必要以上に力が入ってしまいそうなものだが、本作では「特別役作りはしなかった」という。そこには、これまで歩んできた俳優人生につながる“思い”があった。
「僕が東京に出てきたのは終戦後15~6年経ったころですから、本当にまだ大変なときでした。そういう背景があったから、この撮影をやっていますと『この少年(政美)は、芸能界に入ったころの自分だったな』という思いがあるわけです。そのときにこの豆腐屋の親父のような(自分を導いてくれた)方がいてくれたから、今日まで来られたな、というね。そして今は、50何年たって、僕が今度、その豆腐屋の親父になって、この若い少年を引っ張るお手本にならなくちゃいけないんだと思ったんです。僕はそう思いながら撮影をしましたし、自分の70何年かの人生の中で、映画で自分を投影しながら撮影できたっていうのは、とっても感慨深いものがありましたね」。「お芝居には違いないんですが、素になってできた」と語る小林は、「逆に、“こんな俺でいいのかな”と思いました。お芝居をしっかり固めて、“今日やったぜ! どうだ!”ということは一切なかったから。着ているものも、靴下1枚まで自分のもの(私物)だったんです」と照れ笑いを浮かべる。
壇蜜も小林と同じく、本作にはこれまで以上に自分自身が投影されていると明かす。「普段着ている物とか、結んでいる髪の形とかが、前の仕事をしていたときの自分によく似ていて“こんな偶然あるんだなぁ”って思いましたね。裏方の仕事をしていたっていうのも、ちょっとリンクしてましたし。こうやって生活で得た物がそのまま映画になって生かされることもあるんだな、というのは、本当にびっくりしました。勢いのままに、自分の体を美しく見せることに集中して撮っていたものとはまた違いますから。それは“壇蜜”になる前の自分が画面の中にいるようで、本当にこの映画の中での志保と、以前の自分がとてもかぶっているように感じました」。
2人の話しぶりからは、劇中で描かれる“スローライフ”にも似た、穏やかな現場の空気感が伝わってくる。リラックスして撮影に臨めたのには黒土監督のサポートも大きかったそうで、「監督は、僕そのものを転がしてくれました。(撮影中)“ここちょっとまずかったな”って思っても、カットがかかってから『(小林)稔侍さんってそういう俳優ですよね』って、僕の失敗やダメなところまでちゃんと認めてくれて、画にしてくれる方なんです」(小林)、「初めて監督にお会いしたときに、(志保が)バイクに乗ったり整備士だったり、ちょっと勇ましい感じの女性だったので、『私はこんなに高い声で、歩き方もぽてぽてしてますし、大丈夫ですか?』って言ったら、『あ、それで大丈夫だから』って(笑)。その一言で、『私が投影する隙間をちゃんと作ってくれてるんだな。監督が作ってくれてるから、ちゃんと演じよう』という気持ちに、すぐになりました」(壇蜜)と明かした。
パーソナルな部分をさらけ出した、自分自身と向き合っているような作品。だからこそ、出来上がった作品を見たとき、壇蜜は「テストの点が良かった子どもみたいな気持ちになりましたね。『よかった、できてて!』って」と感じたという。対する小林は、「僕は自信たっぷりに『これ(この演技を)見てください』っていうタイプの俳優じゃなく、『こんな俺でいいのかな……』という感じ(笑)。だからこそ、監督にはうまく泳がせていただいていたんでしょうね。オールラッシュ(粗編集版の試写)を見た黒土監督が、『稔侍さんが今までやった仕事で、稔侍さんらしいというのは、これが1番じゃないですか』っておっしゃったんです」としみじみと語った。
「星めぐりの町」は、1月27日から全国公開。
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