古川雄輝、日韓合作「風の色」で直面した“試練”、その果てに到達した“たくましさ”
2018年1月25日 06:00
[映画.com ニュース] 「脳内ポイズンベリー」や「ライチ☆光クラブ」などで知られ、「曇天に笑う」(3月21日公開)、「となりの怪物くん」(4月27日公開)が控える古川雄輝が映画.comのインタビューに応じ、1人2役でマジックにも挑戦した「風の色」について語った。
東京で暮らしていた涼(古川)が、100日前に姿を消した恋人ゆり(藤井武美)を探して北海道へ向かったところ、自分とそっくりのマジシャン隆(古川・2役)の存在を知り、さらにはゆりとうり二つの女性・亜矢(藤井・2役)と出会う。その後、涼が不思議な出来事に巻き込まれていくさまが描かれる。
7歳でカナダに移住し、16歳で単身米ニューヨークへ。30歳となるこれまでに、国内外の多数の作品に出演してきた同世代きっての国際派・古川。本作ならではの魅力を、「見る国の人によって、感覚が大分違ってくる」点だと考察し、「邦画だと思わず、洋画だと思って見てほしい」と呼びかける。「わかりやすいところでは、ナレーションが入るところですね。日本だと表情やアングルだけで見せるところを、全部セリフで言う。そのあたりは、監督と大分相談しました。『これ(言葉にして)言います? 多分言わないですよ』って。でも監督は『言うよ?』っておっしゃる。笑いの部分も、日本人の感覚としては『ん? これは笑っていいのかな、どっちかな』っていうシーンでも、富川(韓国・第21回富川国際ファンタスティック映画祭)で上映したとき、みんながゲラゲラ笑って見ていた。日本人が『大人のラブストーリーだな』と思っても、韓国の若い女の子からしたら『割と定番じゃない』って思うかもしれない。そういった、文化がぶつかったことによる“ズレ”が映っていると思います」。
日韓合作映画だからこそのケミストリーともいえるが、古川は“日本代表”として、脚本にも積極的に意見を述べたという。「作品にもよりますが、(脚本についての意見は)基本的には言わないです。僕の仕事ではなく、脚本家さんの仕事ですから。ただ今回は、韓国の脚本家さんが書いて日本語訳しているから、どうしても日本人離れしているものが出てきてしまう。ですので、『ここは日本人的感覚で言うと、こう言った方がいいんじゃないですか』とか、『1人2役だから、分かりやすく涼は(1人称を)“僕”にして、隆は“俺”にしませんか』というのは最初の方から結構言いましたね。『語尾を変えないと日本語的におかしい』というようなニュアンスは韓国の監督さんからするとわからないので、そこは僕がちゃんと言いにいかないと、と思っていました」。
古川の言葉の節々からは、生来の生真面目な性格と、座長としての強い自負が伝わってくる。撮影時にも「何もかも、報告されるのが直前なんです。『今日はこれやります』『次のシーン、これ。はい、泣いて。はい、本番』とか、なかなか事前の準備ができないなかで撮っていました」と俳優としての対応力・即興スキルを試されるような果敢な状況が続いたが、見事に乗り切ってみせた。肝となるマジックのシーンでも、「監督の頭の中にしか撮影するもののイメージがないから、現場で監督に『どのマジックをやりますか』と聞いて、『これとこれがいい』って言われたものをそこから練習して、本番までに仕上げて。本番も、『エキストラさんの生の反応を見たいから、ガチでやってくれ』って言うんです。カットを割るんじゃなく、1発目で『はい、やって』というような状態なので、プレッシャーは大きかったですね」と聞くだけで物怖じしてしまうような“逆境”に直面したという。
中でも困難を極めたのは、氷水の中に飛び込む脱出マジックのシーン。体を本物の鎖で巻かれて水中に沈められていくシーンは、一歩間違えば命の危険も伴うものだった。「過酷でしたね。本当に体調を崩しちゃいましたし。本作を超える大変さは、今後ないと思います。(本作のマジック監修を務めた)Mr.マリックさんも、『これ以上大変なことは多分ないだろうね』っておっしゃってたぐらい」と実感を込めて語った古川は、本作の撮影を通して「強くなったって感じですね」とたくましさを垣間見せ、「今後も海外の作品に出たい」と先を見据える。
ここまで、真摯に作品について語っていた古川だったが、好きな映画について話を向けると相好を崩し、映画青年の一面を垣間見せる。「『シンドラーのリスト』が1番好きな映画ってよく言ってるんですが、正直決められなくて。大体、80年代にやっていた映画が好きなんです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『インディ・ジョーンズ』とか『ダイ・ハード』とか……あの当時の映画が、1番面白いんですよね」とほほ笑んだ。
「風の色」は、1月26日から全国公開。