オスカー俳優ジェフリー・ラッシュがたどり着いた、ジャコメッティの“素顔”とは?
2017年12月13日 16:00
[映画.com ニュース] 「英国王のスピーチ」や「鑑定士と顔のない依頼人」で知られるオスカー俳優のジェフリー・ラッシュが、彫刻家アルベルト・ジャコメッティを演じた「ジャコメッティ 最後の肖像」について語った。
彫像「歩く男I」などで知られ、“20世紀で最も重要な芸術家”とも称されるジャコメッティの知られざる姿を描く本作。「トランスフォーマー」シリーズや「スポットライト 世紀のスクープ」「美女と野獣」の俳優スタンリー・トゥッチが監督・脚本を務め、ラッシュに加えて「コードネーム U.N.C.L.E.」「ノクターナル・アニマルズ」のアーミー・ハマーらが出演する。舞台は1964年のパリ。ジャコメッティ(ラッシュ)の絵のモデルを引き受けた作家で美術評論家のジェイムズ・ロード(ハマー)が、完璧な美を追求するジャコメッティに振り回されていく。
役作りのため、鼻やあご周りに特殊メイクをし、さらに体にパットを装着し、大きめの洋服を着ることで外見からジャコメッティに似せていったというラッシュは、「珠玉のような脚本だと思ったよ! 光栄にもスタンリー(・トゥッチ)から、“これは君のための作品だ。ぜひ君に出てもらいたい”と言ってもらった。生きる伝説ともいえるほど有名な芸術家のためにモデルを務めたロードの経験を描いた、非常によくできた作品だよ。創造的プロセスに伴うジレンマを、ロードが洞察力に満ちた分析をしているんだ」と出演の喜びを語る。
「ジャコメッティはインタビューの多くでこんなことを言っていた。“形而上学的な問題や実存的な問題は忘れてくれ。俺はただ石膏をいじくって、粘土をこねくりまわしてるだけなんだ。自分がどこに向かっているのかなんてわからない。ただ遊んでいるうちに、何かが生まれてくるだけなんだ”ってね」と巨匠の人となりについて言及したラッシュは、「ジャコメッティは自分に躁(そう)病的な衝動があることを自覚していて、それらを追求しているだけなんだ。悪意があったり、身勝手な形で追求したりしているわけじゃなく、そうする必要があるからそうしているのさ」と劇中でもたびたび見られるエキセントリックな言動の真意を解説。
さらに、本作に流れるトーンについて「巨匠の仕事の偉大な瞬間を描くという、伝記映画が陥りがちな罠は絶対に避けたい、とスタンリーは考えていたんだ」と明かしつつ、「この映画で描かれるのは、ジャコメッティが長年暮らし、制作活動をした、ひどく乱雑でボロボロのアトリエで起きる、面倒な出来事ばかりだ。名声を得た人間や、芸術品を作る苦しいプロセスを見てきたスタンリーには、素晴らしいリズム感がある。カメラの使い方にしても、彼は(撮影監督の)ダニー・コーエンと協力して、素早く撮影してくれた。ゲリラ的な映画作りといってもいいくらいだ。壁にとまっているハエのように、目立たないカメラワークが芸術的だよ」とトゥッチの手腕を絶賛。「スタンリーの脚本は、鮮やかに描かれたキャラクターたちのちっぽけな陳腐さを見せてくれる。彼らは、知名度も学術的評価も名声も富も手に入れた人たちだけれど、みんなつまずきながら、かなり平凡で陳腐な形で人生を歩んでいる。そこから自然なコメディが生まれてくるんだ」と魅力を語っている。
「ジャコメッティ 最後の肖像」は、2018年1月5日から全国公開。
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