死体役ならこれを見ろ?「スイス・アーミー・マン」監督コンビ、ラドクリフに名作アニメを推薦
2017年9月20日 14:00
[映画.com ニュース] 「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフが死体を演じ、「オクジャ okja」「プリズナーズ」で知られるポール・ダノと共演した映画「スイス・アーミー・マン」を手がけたダニエル・クワンとダニエル・シャイナートの監督コンビ(通称:ダニエルズ)が、映画.comの質問に答えた。
無人島でひとりぼっちだった青年が、死体と共に故郷への帰還を目指すサバイバルアドベンチャー。孤独に耐え切れなくなり命を絶とうとしたハンク(ダノ)は、浜辺に打ち上げられた男性メニー(ラドクリフ)の死体を発見する。死体に浮力と推進力があることが判明すると、ハンクは死体にまたがり、島からの脱出を試みる。第49回シッチェス・カタロニア国際映画祭では、作品賞と主演男優賞に輝いた。
本作の最も大きな特徴は、何といってもタイトルにもなっている“便利死体”だろう。ナイフ、缶切り、栓抜きなど多数の機能を備えた「スイス・アーミーナイフ」のごとく、数多くの用途を持った死体という意味だが、その発想はどこから生まれたのか。クワンは「中学生くらいのころに事実として知ったのは、人は死ぬときに、うんちを漏らし、オナラをしながら死ぬということ。『最悪!』と思いながらも、どこか笑っちゃったんだよね。それを美しく、逆にキャラクターたちが勝利するような物語にできないかという風に思ったんだ。そこからオナラをする死体のアイデアが出てきて、どこか荘厳な話にしていけたら面白いんじゃないかと考えたんだ」と本作が長年温め続けてきたアイデアを形にしたものであり、自分たち自身をも投影したと語る。
映画史上誰も見たことのないような奇抜な死体に命を吹き込んだのは、誰もが知る人気実力派のラドクリフ。「ハリー・ポッター」以降、個性的な役柄に次々とチャレンジしてきたが、本作で演じたメニーのインパクトは群を抜く。シャイナートは「役柄として、肉体的な部分も必要になってくるけど、ダニエルはそういう部分を持っていたし、曲を歌える人でなくてはならなかった」と明かす。クワンによれば、「メニーの片目のまぶたが重そうな表情はラドクリフのアイデアだよ。『ハリー・ポッター』で顔が知られているからこそ、そうじゃない顔に見えたら面白いんじゃないかと彼から提案してくれたんだ」とラドクリフの意見を積極的に取り入れていったという。
逆に2人からは、独創的な死体を生み出すべく「小さな選択が、大きな効果として観客に受け止められるんじゃないかということを、最初の方によく話していてね。例えば、座り方1つによって色々感じさせることができる。観客がほれ込んでくれるような、メニーが話し出す前から思い入れてくれるような見え方を模索して、演技に反映してもらった」(シャイナート)となかなかに高いハードルを設けたそうだ。参考資料としては、「スパイク・ジョーンズ監督がIKEAのために手がけた“Lamp”というコマーシャルや、『バンビ』の氷の上で一生懸命立とうとしているシーン、『メン・イン・ブラック』のゴキブリ男の演技(ビンセント・ドノフリオ)がすごいと思ったから見てもらったよ」(シャイナート)と語る。
ダノに関しても「撮影の1年ほど前から関わってくれていたんだ。何稿も脚本を読んで、コメントを寄せてくれていて、そのおかげで物語内のプロットが変わったりもしたよ。特に(劇中に登場する女性)サラとの関係性だね。そこにはポールの意見が多く取り入れられて、最初とは変わっていったところの1つだ」(シャイナート)と意見交換を密に行い、作り上げていったようだ。
映画ファンにおいては、「ムーンライト」「ルーム」「エクス・マキナ」「ロブスター」「ウィッチ」といったエッジの効いた作品を手がけてきた気鋭の配給会社A24が配給を務めているのもうれしいところ。ダニエルズの2人にA24の魅力を聞くと、「A24は僕らのことをすごく応援してくれたし、彼らのおかげで映画のレベルが上がったと思う。気持ちの上でも、笑いの面でも、より多くの人に届けられる作品になったよ」(シャイナート)、「他の配給会社では、この独特のユーモアとか、設定のせいで怖がられたこともあった。でも、彼らはすごく面白がってくれて、『これをうち(A24)で扱わなかったら、窓から飛び降りてやる!』なんて言ってくれた人もいたよ。『これはA24作品だ』と言い切ってくれて、絶対に権利を買いたいと言ってくれた。これだけ作品のことを理解してくれる彼らと一緒にやりたいと思ったんだ」とよきパートナーとして、蜜月の関係を築いたようだ。
「スイス・アーミー・マン」は、9月22日から全国公開。
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