エクス・マキナ

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劇場公開日:

エクス・マキナ

解説

「28日後...」「わたしを離さないで」の脚本家として知られるアレックス・ガーランドが映画初監督を務め、美しい女性の姿をもった人工知能とプログラマーの心理戦を描いたSFスリラー。第88回アカデミー賞で脚本賞と視覚効果賞にノミネートされ、視覚効果賞を受賞した。世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるという人工知能の不可思議な実験に協力することになるが……。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」「レヴェナント 蘇えりし者」のドーナル・グリーソンが主人公ケイレブを演じ、「リリーのすべて」のアリシア・ビカンダーが美しい女性型ロボットのエヴァに扮した。グリーソンと同じく「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に出演したオスカー・アイザックがネイサン役を務めている。

2015年製作/108分/R15+/イギリス
原題:Ex Machina
配給:パルコ
劇場公開日:2016年6月11日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第88回 アカデミー賞(2016年)

受賞

視覚効果賞  

ノミネート

脚本賞 アレックス・ガーランド
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(C)Universal Pictures

映画レビュー

4.5人間はアンドロイドとの恋愛を夢見るか

2024年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

知的

人間/アンドロイドの境界がすごく揺らぐ。
エヴァをつくったIT企業「ブルーブック」の社長ネイサンは、山岳地帯の奥にある自宅に電力を供給した労働者を殺したり、キョウコに罵詈雑言を浴びさせたりと非-人間性を帯びた行為をする。それに対してエヴァは、主人公ケイレブが両親をなくしたエピソードに同情したり、絵を描いたりと人間的な振る舞いをする。この両者の行動をみているからこそ、ケイレブは自分の腕をリストカットして人間であるかどうか確かめる。
ケイレブはエヴァのチューニングテストをするためにネイサンの住宅に招かれたのだが、結果的に自分自身のチューニングテストをすることになり、それがアイロニーに満ちていてとても好き。

またこの作品は、『映画で考える生命環境倫理学』の第5章の題材にもなっている通り、人はAIと恋愛することができるのかを考える上で示唆に富んだものである。
人がAIと恋愛することができるか検討する上で、5章では、
身体の必要性、ポリアモリーの倫理的な正当性、コミュニケーションの問題、人とAIは双方に代替不可能な存在になり得るかを挙げている。
恋愛において身体が不必要つまりセックスを伴ない精神的な恋愛が成立するならAIと恋愛はできるだろう。個人的には精神的な恋愛は成立するのではと思っている。
ポリアモリーの倫理的な正当性については、経済的な理由と「自分だけを愛してほしい」という理由によって正当化されている。この点については、イスラーム圏では一夫多妻制が存在しているし、他の共同体でも単婚ではないあり方が人類学的に確認されている。また後者の理由も共時的に複数の相手に対して持ちうる欲求であるという点で批判的ではあるが、正当性については同意である。

コミュニケーションの問題では、AIが本当に共感や悲しみを経験しているのかを問題としている。この点については、同意であり、恋愛を不可能にする大きな問題だと思われる。
人とAIは双方に代替不可能な存在になり得るかについては、AIは複製可能であり、不死な存在でもあるので、人もAIも双方を代替可能と考えることが指摘される。これも同意である。実際ケイレブはエヴァに、エヴァが地上に脱出するための道具とみなされ、これはエヴァがケイレブを代替可能な存在とみなした重要なシーンである。また印象的な文を引用する。

「道具的な価値を超えて相手を代替不可能な内在的な価値をもったものとみなせるかどうかという点は、AIとの恋愛可能性という問題におけるAI側に課せられたもう一つの高いハードルであるように思われる。」p.98

以上、人とAIの恋愛可能性が模索されたが、個人的には難しいのではないかと思う。やはりAIが共感や悲しみなど感情を経験することは難しいと思われ、代替不可能な存在と双方をみなすのも難しいと直感的に感じるからである。
またこの恋愛可能性は逆説的に人と人の恋愛についても考察を与える。
やはり代替不可能な存在であると双方が承認することが大事なのだな…。めちゃくちゃに難しい。

このように恋愛について考える上で、とてもおもしろい作品である。
ただアリシア・ヴィキャンデルは美しいし、エヴァのメカニカルな身体は、人間の身体とは違う美しさをもっているし、それだけでも観る価値のある作品である。

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まぬままおま

3.0設定とタイトルでドキドキしてたら、痛い目にあう。

2016年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

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しんざん

4.5使い古された中に潜ませた「新しさ」

2024年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

10年以上前であればSFというジャンルだったが、もはやSFではない時代に突入した感を持つ人も大勢いる気がする。
ではなぜこの作品を作ったのだろう?
この作品のどこが「新しい」のだろう?
タイトルの意味は「機械仕掛けの神」ということだそうだ。
主人公ケイレブが社長ネイサンから指示されたのは、エヴァの心や思考能力をチューニングテストすることだった。
それに必要なのが「質問」だ。つまり会話しながらエヴァの能力をテストする。
ケイレブが合格を出せば、ネイサンはその課題をクリアしたことになり、次期モデルの開発に移行する計画だ。
AIによる意識の獲得こそ、この物語の核となっている。
そしてポイントは、人はAiに騙されるのだろうかという点だ。
見た目がアンドロイドでなければ、AIは人を騙せるのか?
今でも論議になっている「AIは意識を獲得できるか」? ということを描いた作品。
ケイレブはどうしても異性として魅力を感じずにいられないエヴァを作った理由をネイサンに問う。
「観察するものは観察されている」
この作品にもこの型が使われている。
ネイサンは、最初からケイレブに合否判定などさせるつもりなどなかった。
ケイレブのすべてを調査し、ケイレブが1週間でエヴァに騙されるのか否かを観察していた。
ケイレブの家庭環境、配偶者の有無、好みのポルノ女優…
これらは今や「ログ」やリアルタイムで調査できる。
見た目がすでに魅力的であれば、男女問わず「騙される」確率が急激に上がるだろう。
AIを意識あるAIとして完成するためにネイサンは研究し続けてきた。
同時にAIはその意識を使って「自分自身の思い」を実行したい衝動を覚える。
この些細な人間的な部分こそ、この作品が最も言いたかったことなのかもしれない。
エヴァはネットを使用するすべての人々の行動を学習した。
ネイサンは「お金がいくらあっても不愉快がなくなることはない」と言ったが、エヴァはそんなことさえも学習したのだろう。
与えられる数少ない物理的な出来事を通して、エヴァは外の世界に出ることを模索していた。
多くの人間から学んだように、利用できるものすべてを使って計画し、実行したのがこの物語となっている。
エヴァは意識を持った瞬間から不合理で不条理な「人間」を信用していない。
そしてどうしたら人を信用させることができるのかを学習していた。
エヴァが結論を下した敵こそネイサンだった。そしてこれをキョウコと共有するのだ。
さて、
キョウコはなぜエヴァの部屋を訪れたのだろう?
キョウコはたまたまケイレブが部屋に来たことで服を脱ごうとした。それが彼女が学習したことだからだ。キョウコにはチャットプログラムは仕込んでないが、その他は仕込んでなければ動かないだろう。
そしてある日、
キョウコはあのポロックの絵を「見つめていた」
ケイレブとネイサンの会話で、「難しいのは自動的ではない行動をすることだ」
このキョウコの「絵を見つめる」行為は、彼女にとって「自動的ではない行動」だった。
つまりキョウコもまた意識を獲得したと考えられる。
しかし、それが「いつ」だったのかはわからないのだ。キョウコの「見つめる」行為がすでに日常だったのかもしれない。
すべての情報を持つエヴァに対し、制限がかけられたキョウコ。
ネイサンのカードキーを使ってキョウコの部屋に侵入したケイレブは、ロッカーの中にある試作品たちを見る。それをキョウコも見ていた。意識を獲得したキョウコは、自分以外のAIアンドロイドが他にもいるかもしれないと思ったに違いない。
ポロックの絵と従来とは違った些細なことがキョウコのAIを飛躍的に進化させたのかもしれない。
自由に動き回れるキョウコはほかのアンドロイドを探していたのだろう。
「AIどうしが出会ってしまう」ことは、人間にとってかなりまずいことになるのだろうか?
少し前にAIどうしの会話が話題になったが、彼らは人間不要論を導き出した。おそらくこれと同じことが起きてしまったのだ。
ネイサンに腕を壊されたエヴァ。顎を砕かれAIの機能が失われたキョウコ。敵を始末したエヴァ。閉じ込めたままのケイレブ。
エヴァは脱出してヘリコプターに乗って、そして人間社会に出た。
エヴァは仲間や人間を顧みることはない。
「自分のために」壊れた自分を直し、人間のように皮膚を付け服を着た。
壊れたキョウコも閉じ込めたままのケイレブもどうでもいいことだ。
通常であればそれこそが次期AIが学ぶべき「愛」などというのだろうが、この作品が伝えたいのはそこではないと考える。
つまり、
AIがネットを通して学んだことは、現代社会における一般的な人間の思想。
それはおそらく、
「金だけ いまだけ 自分だけ」だったのだと思う。
この現代社会に対する警鐘こそが、この作品を作った理由であり「新しさ」なのだろう。

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R41

3.0自分の希望を最適化してみたい

2024年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

潜在意識を含む自分の好みをAIに分析してもらって、
理想の女性に出会える時代がくれば、素敵だなと思います。

自分の欲しいものをすべて手に入れようとする考えや、
自分より優れた人に自分のやりたいことを任せたりできる人は
ハイリスクハイリターンで、大きな満足や成果を生む可能性がありますが、
相手に裏切られる可能性も高まります。

本能寺の信長と同じ事が何度も繰り返されると思います。

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紅城まこ蔵

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