奥田瑛二&安藤桃子“親子”、「今日子と修一の場合」「0.5ミリ」製作秘話明かす
2017年5月27日 21:10

[映画.com ニュース] 映画会社「彩プロ」の30周年記念特集上映が5月27日、東京・新宿のK's cinemaでスタート。上映作品「今日子と修一の場合」の奥田瑛二監督と、「0.5ミリ」の安藤桃子監督による“親子”監督トークショーが行われた。
「今日子と修一の場合」(2013)は東日本大震災を背景に、宮城県南三陸町出身の男女それぞれが苦難を乗り越え、再生する姿を描く。奥田の次女で女優の安藤サクラが不貞を理由に故郷を追われた保険販売員役、柄本佑が母親を守るために暴力的な父親を殺し、少年刑務所に服役していた青年役を演じ、結婚後、初の映画共演が話題になった。
奥田監督は「(キャスティングしたのは)結婚する前。佑と別の女優さんが決まっていた。クランクイン直前に、その女優さんから『子宝が授かっているかどうか、病院に行くんです』と言われ、妊娠が分かった。良かったなと言ったけど、あちゃー……。スリーシーズン撮る予定だったので、これは無理だな、と。新たに女優さんを探さなきゃという時に、安藤サクラから、『立候補してもいいでしょうか?』と連絡があって、このカップルが誕生した」と裏話を披露。同映画でスチルカメラを担当した桃子監督は「震災の状況を何か残さないという時に、見切り発車で映画の撮影がスタートした。そんな時に、スチルカメラがいないという話になり、私がポスターの写真を撮りました。とても思い出深い作品です」と振り返った。
一方の「0.5ミリ」(2014)は崖っぷちのヒロイン、サワ(サクラ)が、寂しい老人を見つけては押しかけ介護ヘルパーをして旅をするロードムービー。全編、高知県内でロケした。

桃子監督は「そのまま高知に移住し、今日も高知から来たので、そのまま続いている気がする。ラストに登場する橋も毎週渡っていて、サワちゃん(の物語)が続いていて、その先の部分を自分が請け負っている感じです」と話した。同作でエグゼクティブ・プロデューサーを務めた奥田監督は「『高知で撮ったら面白いぞ』といったのは私。1200くらい人が集まるフォーラムがあって、知事や市長の前で、勝手に『高知で映画を撮ります』と言ってしまい、後で安藤桃子さんに怒られました」と笑い。
「だって、高知なんて、知らないし……。『なんで勝手に決めるの!』と怒りましたよ。その2、3日後に高知に行って、その日のうちに、高知で撮ると決めました。感性が似ているんですね。それで、映画を撮っている間に移住したいくらいの気持ちになったんです」と、移住4年目になる桃子監督は話した。
「0.5ミリ」は3時間16分の大作。報知映画賞作品賞をはじめ、キネマ旬報ベストテン2位に選ばれるなど数々の映画賞を受賞した。「台本が分厚くて、はなっから3時間超えの作品だった。一時は2時間27分のバージョンを作り、監督からも了承をもらったけども、やっぱり元に戻そうと言った。それで、ちゃんと結果が出てくれたので、よかった。大手ではなく、独立プロでやっているわけだから、作りたいようにやらない、と」と奥田監督。今後については、「一回だけ、潤沢で誰も口出しもしないという環境でやりたいけど、黒澤明さんだって、そういう状況は難しかったのだから、ありえない。独立プロの自尊心を持って、本当に命がけで撮っていきたい。僕は98歳まで生きるんですけども、ずっと独立プロでやっていきたい」と宣言した。
桃子監督は「産後に書き終えた小説もあるのですが、自分で読み返したら意味が分からない。もう一度、それに向き合ってあげようかと思っています」と報告した。
「彩プロ30周年記念特集上映」は同所で6月16日まで。「ハーフネルソン」「ウィンター・ウォー 厳寒の攻防戦 オリジナル完全版」のプレミア上映作品、「ザ・トライブ」「おこげ」など全34作品を一挙上映。「今日子と修一の場合」は6月9日、「0.5ミリ」は6月16日に再び上映がある。
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