劇場公開日 2014年11月8日

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0.5ミリ : 映画評論・批評

2014年11月4日更新

2014年11月8日より有楽町スバル座ほかにてロードショー

安藤桃子&サクラの姉妹が見る人を挑発する、愛おしい寓話。

昨今の説明過剰な日本映画界にあって、恐ろしいまでに説明を省いた作品である。安藤桃子監督は、「さあ、ご覧なさい。感じるままに」と観客を挑発する。例えば、最初のエピソードが収斂されるのは、およそ3時間後の最後のエピソードだ。直截な、より具体的な表現は、本作の中にない。表題の「0.5ミリ」とはいわば心の尺度。人とのコミュケーションの中で静電気が起きるぐらい一歩だけ近づこうよ、という意味らしい。と書いたのも、見た人各自でうすうす感じればいいことなのだ。

安藤サクラ演じるサワという介護士は正規の仕事を失い、男から男もののコートと車(いすず117クーペ)をもらって、男の家から別の家へとさすらう「おしかけ介護士」になる。彼女はすごく調子のいい女性のように見えるが、実はとても気のいい働き者だ。介護の仕事はよく出来るし、掃除も洗濯も炊事もよくする。仕事が出来るだけではない。孤独な老人たちの心を慰める不思議な力がある。最初は迷惑がっていた老人たちが、一緒に暮らすうちに、次第にくつろぎを見せ、別れるときには「ありがとうね」と心から礼を言うまでになるのだ。ある日どこからともなくやって来て、人に幸福をもたらし、またどこからともなく去って行く。彼女の存在一つで、「死」に近いおじいちゃんの「生」がまた輝きだすのだ。

実はサワのことはまったく語られていない。第一、これは老人介護の社会問題を暴き出すような作り方をしていない。彼女がほしい物も、何が希望なのかもわからない。方法論的にはすごく苦手なタイプの映画なのだが、やがてグイグイと引き込まれていく。サワはどこか現実感がなく、「わたし、女じゃない」とも言う。ダブダブな男もののコートを着た「妖精」あるいは「風の子」のような存在と見れば、合点がいく。そうだ、これは「風の又三郎」タイプの寓話なのだ。

本作は196分の長尺である。しかし、飽きずに観られるのは、時として安藤サクラがキラキラと不思議な輝きを放つからだ。監督の姉が女優の妹を撮る。妹の一番美しい部分をわかっていないと撮れないだけに、フィルムのひとかけらひとかけらがとても愛おしい。

(佐藤睦夫)

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