「この国の空」二階堂ふみ&工藤夕貴、戦争体験者・海老名香葉子と平和を祈る
2015年8月6日 16:51
[映画.com ニュース] 芥川賞作家・高井有一氏の小説を、「ヴァイブレータ」(2003)の脚本家・荒井晴彦が映画化した「この国の空」のトークイベントが8月6日、都内で行われ、主演の二階堂ふみと、主人公・里子の母役を務めた工藤夕貴が登壇したほか、戦争体験をつづった「半分のさつまいも」などで知られる作家の海老名香葉子が参加し、戦争について語り合った。
映画は、終戦間近の東京で母と暮らす19歳の里子(二階堂)と、その隣人であり、妻子を疎開させ1人暮らしを送る38歳の銀行員・市毛(長谷川博己)の許されざる恋の行方を、繊細なタッチで描く。
東京大空襲に巻き込まれ、戦争孤児となった経験を持つ海老名は、本作を「戦争があるけれども、人はどうやって生きていくのか、戦時下でどういう感情を持つのか知らせる作品。映画を通して、人の情を表している」と表現。「二階堂さんは立派。こういう女優さんがいたんだと思った。工藤さんは小さい時から知っているけれども、化けられて、よくぞこなした」と女優2人に賛辞を送った。二階堂の相手役をこなした長谷川に対しては「うまかったですけど(妻子がありながら里子に惹かれていく市毛は)悪いわ。許せない」と語った。
くしくもこの日は、広島に原子爆弾が投下された「原爆の日」。戦後70年を迎え、海老名は「戦争は悲惨で無残で、言葉にならない。次の時代の人々に、二度と私のような思いをさせたくない」と切々と訴えた。二階堂も、「当時の人々の気持ちや恐怖は計り知れない」と神妙な面持ちで語り、工藤は、里子の母が空襲で焼け出された姉を追い返そうとするシーンを「情があってもあんな行動をとってしまう。あれが戦争の本当」と評した海老名の言葉を受けつつ、「(女優として)それぞれの年代で役目を果たし、メッセージを伝えていきたい」と決意を新たにしていた。
イベントでは、劇中で使われている日本語の美しさに感銘を受けたという海老名が、「恥ずかしい」とはにかみつつも、自作の詩を朗読。二階堂と工藤は、穏やかな表情で聞き入っていた。
「この国の空」は、8月8日から全国公開。二階堂と工藤、長谷川のほか、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二らが出演する。エンドロールでは、女流詩人・茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」が使用されている。