戸田恵梨香&松坂桃李「エイプリルフールズ」で更に高まった日本映画界への熱情
2015年4月2日 09:45
[映画.com ニュース] 人気コメディドラマ「リーガルハイ」を大成功に導いた古沢良太(脚本)と石川淳一(演出)が、「映画館でしか見られないエンタテインメントを!」をモットーに製作した痛快作「エイプリルフールズ」が完成した。古沢にとって「キサラギ」以来となるオリジナル脚本となった今作には、個性あふれる俳優27人が結集。なかでも主演として現場をけん引した戸田恵梨香、相手役を務めた松坂桃李が今作の魅力、そして日本映画界へのほとばしる熱情を語り尽くした。(取材・文/編集部、写真/堀弥生)
1年に1度だけ嘘をついていい日、4月1日の東京が舞台となる今作で、戸田は対人恐怖症の病院清掃員・新田あゆみ、松坂はSEX依存症の天才外科医・牧野亘に扮している。物語は、亘との一夜限りの関係で妊娠したことをあゆみが電話で告げるくだりから急展開で動き出す。エイプリルフールの悪い冗談だと聞く耳を持たない亘は、イタリアンレストランで国際線のキャビンアテンダント・麗子(菜々緒)との初デートを満喫中だが、そこへあゆみが乗り込んできて思わぬ大事件へと発展する。
登場人物たちが何気なくついた嘘が嘘を呼び、各所で騒動が巻き起こるという古沢作品の真骨頂ともいえる内容だが、オファーを受け初めて脚本を目にしたとき、2人はどのような印象を抱いたのだろうか。
戸田「本当にだまされた気分でしたね。まさか、こういう作品だとは夢にも思っていなかったので、最後にほろっとさせられますし、全てのエピソードがまとまっているんだなと気づいて、ビックリしましたね」
松坂「7つの嘘のエピソードがどれも笑えるのですが、脚本の段階から笑えるって結構ハードルが高いなと思いましたね。全てのエピソードがつながって、つながって、最後にひとつにまとまっていくのが見事でした。古沢さんの頭の中はどうなっているんだろう? すごいなと改めて感じました」
松坂が口にした通り、今作は「イタリアンレストランでの大惨事」「ロイヤル夫妻の休日」「不器用な誘拐犯」「占い老婆の真実」「42年ぶり涙の生還」「僕は宇宙人」「ある大学生の行末」という7つのエピソードで構成されている。本編は、周到に練られた脚本が陥りがちな“あざとさ”とは無縁の出来栄えだ。それは一筋縄ではいかない登場人物ひとりひとりの背景を各キャストが深く理解し、脚本に忠実に世界観を体現したからに他ならない。
役作りをするうえでも、2人は楽しみながら取り組んだようで「脚本の段階からあゆみのセリフがどもっているんですよ。『す、す、す、すみません』みたいな。何度もしゃべってみながら、しっくりくるところを模索していきましたね」(戸田)、「僕は今回、前貼りをするのが初めてだったんですよ。いかに見えないようにするか(笑)。やっぱり角度によってすぐに見えちゃうので、これは手強いなあと思いました」(松坂)と笑みを絶やさず、屈託がない。それは、映画監督デビューを果たした石川が作り出した現場の空気ともリンクするところがあったようだ。松坂が「とりあえず子どもたちを遊ばせてみるみたいな感じでした。その中から面白いところをピックアップしていく。もちろん大筋の流れはあるのですが、クスッとできるエッセンスであったり、キャラクターの個性が出ているエッセンスを監督が料理してくれました」と説明すると、戸田も「現場を楽しんでいるイメージでしたよね」と同調する。
戸田と松坂は、ともに1988年生まれの同級生。これまでに映画、ドラマなどで共演経験はあったものの、今回ほど多くの絡みがあった作品はなく、必然的に向き合う機会は増え、刺激を受けることも多くあったようだ。今作での共演を経て得た新たな気づきについて聞いてみた。口火を切ったのは、松坂だ。
松坂「なんといっても、ふり幅の広さですね。度胸もあるし、センスもある。対人恐怖症の役で、あそこまで惜しげもなくやれる人って、なかなかいませんよ。同年代ではいないんじゃないかと思います。気持ちが良いくらいの振り切り具合が愛おしく、かわいらしいあゆみを作り上げていって、素敵だなと感じました」
戸田「ありがとうございます! 松坂さんは聞き役のイメージというか、あんまりしゃべる印象がなかったんですよ。それが、芝居になると真逆になるんですよね。まっすぐぶつかってきてくれるので、それに感化されたことも多くありました。パワーのある人だなあって思っています」
戸田に女優として抱く矜持を聞いてみると、「すごく難しいですが、“自分はこうなりたい!”というものがなくても、“こうあるべき”という信念を持ってやり続けるべきだと思うんです」と筆者をまっすぐに見据えながら、明快な答えが返ってきた。一方の松坂は、「強く意識しているのは、好奇心と探究心ですかね。色んな事に興味を持ち、それを掘り下げるだけの熱量が大事ですよね。掘り下げていけばいくほど違う景色が見えてくるというか、新しい発見や新しいアプローチを見出すことができるでしょうし」。
互いに敬意を払いながらも、和気あいあいとした雰囲気で対話を重ねる2人だが、話題が日本映画界に関するものに移行すると、目の輝きが激変した。松坂は「僕は映画の現場を、日々限界突破の挑戦の場ととらえているんです。舞台やドラマも作品づくりには変わりはないのですが、作品づくりの色が強く出るのは映画かなと感じています。自分の身を削りながら『まだ出るだろう、もっと出るだろう』というのを試せる場所。そういう風に現段階ではとらえています」と話す。
戸田にいたっては「私はここ最近、運よく傑作といわれている作品を見させてもらっているのですが、そのほとんどが洋画なんですよ。それがすごく悔しいんです。日本映画だってまだまだいけるはずだ! と思うんです」と明かし、熱い思いは松坂に負けていない。さらに、「原作や漫画の映画化が多いですが、古沢さんのチームみたいにオリジナルで勝負する思いとか熱量が大好きだし、これからも大切にしていきたいと思っているんです。映画業界って、どんな事だってできるじゃないですか。CGの技術だって素晴らしいし、そっと寄り添ってくれるような作品だってある。未知なる世界なんだという可能性を持っているので、積極的にその世界に入り込んでいきたいなと思っています。それくらい大好きな世界なんです」と文字通り熱く訴えた。
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