安藤サクラ×新井浩文、全身全霊を注いだ「百円の恋」
2014年12月21日 13:00

[映画.com ニュース]「百円の恋」は、女優・安藤サクラが「戦える、そして戦えたいと思った映画」。安藤がひたすら殴り、殴られ、転び、立ち上がり、ほえる。いま、そんな安藤の“戦いぶり”を賞賛する人が後を絶たない。確かに、大げさではなくここまで“戦える”女優は安藤以外になかなか思い浮かばない。そんな安藤を真正面からぶちのめし、受け止めた新井浩文。2人の熱気がほとばしる「百円の恋」は、現在の日本映画界にも大きな風穴を開ける。(取材・文・写真/山崎佐保子)
故松田優作さんの出身地・山口県で開催された周南映画祭で、2012年に新設された脚本賞「松田優作賞」第1回グランプリを受賞した足立紳の脚本を、「イン・ザ・ヒーロー」の武正晴監督が映画化した本作。
これまでも数々の映画賞に輝き、演技派女優として確固たるキャリアを築き上げてきた安藤。そんな現状に甘んじることなく、自ら本作のオーディションに応募し、一子役を勝ち取った。「脚本を読んだ時の興奮。素直に言っちゃうと恥ずかしいけど、特に試合のシーンを読んだとき、『やりたい!』と感じました(笑)」と女優としての“欲”に駆られたという。だがもちろん、願望だけで演じ切れるような役ではない。しかし安藤は、この経験を自分のワガママだったと言い切る。
「現場が終わった時は、私の生涯最高のワガママだったなと思いました。撮影中は武組の時間を過ごせただけで幸せだった。すごい頑張ったけど、『別に映画が超つまらなくてもいいや』とさえ思ってしまった程(笑)。『つまんなくても大好き、武さんの現場!』って。すごい無茶だったけど、無茶して幸せに思えた」と清々しい表情を浮かべる。
新井は、そんな安藤を「現役の映画女優ではNo.1だと思っている」と惜しみない賛辞をおくる。「本が面白かったのはもちろん、武さんとも仕事をしたことがあって信頼があった。それでもうちにとって安藤サクラとやるってことは、すごく大きかったですね」という。その理由は、安藤が「数少ない“映画女優”であること。自分にとってはそこが一番信頼できるところです。一緒にやっていて楽しいし、“監督が全て”という映画作りに対する考えも似ている」と共通点も多い。

安藤も、「相手が新井さんだったからここまで戦えた」と話す。新井自身、「ボクサーに見えなかったら論外なので」と、役が決まった翌日からジムに通い始めた。安藤は、「何も言ってないのに何かわかってもらえている感じ。監督としか分かち合えないものもあるけど、俳優部同士でしか分かち合えないものもある。それに新井さんはとても面倒見がいいので頼らせてもらいました。全ての環境が戦える状況だったから、ここまで戦えたんです」と共闘した。
ここ十数年で映画業界は大きく様変わりした。単館の映画館は相次いで閉館に追い込まれ、都心部でもシネマコンプレックスが台頭。ゼロ年代を代表するミニシアター系の映画畑で育った新井にとって、憂うべき問題であることは間違いない。新井は、「低予算映画の負担を受けるのは、スタッフや俳優部といった現場の人間。不満はあります」と率直に打ち明け、「テレビ局製作のメジャー映画も、それはそれでいい。だけど自分は映画で育ったので、これからもこだわってやっていく。同時に何か大きく変えないといけない気もしています。みんな何かを変えなくちゃいけないってのは漠然とわかってるけど、どうしたらいいかわからない。『百円の恋』を通して変わればいいとも思うけど、変わる変わらないよりもまず、たくさんの人にこの映画を見てほしいですね」と語る。
父・奥田瑛二と姉・安藤桃子が映画監督という映画一家に生まれた安藤も、「そういうことを考えざるを得ない環境で育った」といい、「木村大作監督の『春を背負って』で、やっとポップコーンを食べながらTOHOシネマズの大スクリーンで自分の姿を初めて見た(笑)」と冗談を飛ばしながら、「どんな映画でも全身全霊の出し方があるけれど、これは戦える環境が整っていた映画でした。そういうチャンスってなかなかめぐり合えないものです。全力で“排泄”できる気がして、オーディションでも興奮してそんなことを言った記憶がある。とにかく『全部出すぞ!』って思ったんです。だから私は俳優部として、ガテン系として現場に泥んこでいようと思っていました」。
「百円の恋」によって何かが変わるかはわからない。ただ、全身全霊を振り絞った安藤と新井の勇姿を、できるだけ大きなスクリーンで確認してほしい。
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