【カンヌ映画祭】オリバー・ストーン監督「ウォール・ストリート」上映で熱論
2010年5月17日 12:37

[映画.com ニュース] 開催中の第63回カンヌ映画祭の3日目にあたる5月14日(現地時間)、オリバー・ストーン監督の最新作「ウォール・ストリート」が上映され、ストーン監督とともに主演のマイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、キャリー・マリガンらがレッドカーペットに登場した。
同作は「ウォール街」(1987)の続編で、米映画が少ない今年のカンヌでは最も注目されていた話題作のひとつ。前作のラストで逮捕されたダグラス演じる大物投資家ゴードン・ゲッコーが、刑期を追えて出所するところから始まり、現代の金融危機を背景にしたゲッコーの巻き返しと、絶縁状態になった娘との物語が濃密に描かれる。
ストーン監督は、「前作ではチャーリー・シーン演じる主人公が、高潔さを失ったところからそれを取り戻すまでを描いたが、今作ではシャイアとキャリー演じるカップルはモラルを象徴する存在であり、そんな彼らの道徳心が試される。アンチ・キャプタリズムを唱えたわけではないが、金、権力、家族の狭間で誰もがバランスを取ろうとするなか、最後に何が得られるかということを考えた」と語った。
ほかに評価が高かったのは、ある視点部門のオープニングを飾ったマノエル・デ・オリべイラ監督の「The Strange Case of Angelica」。死んだヒロインを通して、オリベイラ監督の死生観、女性への強い思いが描かれている。
同部門で上映された中田秀夫監督の「チャットルーム(原題)」は、イギリスの戯曲を外国人キャストで映画化した英映画。計算された色彩設計でネット世代の心のやみをバーチャルな感覚のなかに落とし込んだ作品だ。中田監督は一身上の都合でカンヌ入りはかなわなかったものの、「バーチャルな世界におけるコミュニケーションは、恐怖や怒り、欲望や不安といった要素を増殖させる危険性をはらんでおり、自殺や人殺しさえ起こす原因になりかねない」とコメントを寄せている。中田監督が得意とするサスペンスとエンタテインメントの融合が、正式上映の会場に目立った若者世代に受け入れられていた。(佐藤久理子)
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