アシスタント

劇場公開日:

アシスタント

解説

2017年にハリウッドを発端に巻き起こった「#MeToo運動」を題材に、憧れの映画業界が抱える闇に気づいた新人アシスタントの姿を通し、多くの職場が抱える問題をあぶり出した社会派ドラマ。

「ジョンベネ殺害事件の謎」などのドキュメンタリー作家キティ・グリーンが初めて長編劇映画のメガホンをとり、数百件のリサーチとインタビューで得た膨大な量の実話をもとにフィクションとして完成させた。名門大学を卒業したジェーンは、映画プロデューサーを目指して有名エンタテインメント企業に就職する。業界の大物である会長のもとでジュニア・アシスタントとして働き始めたものの、職場ではハラスメントが常態化していた。チャンスを掴むためには会社にしがみついてキャリアを積むしかないと耐え続けるジェーンだったが、会長の許されない行為を知り、ついに立ちあがることを決意する。

主演はNetflixドラマ「オザークへようこそ」のジュリア・ガーナー。

2019年製作/87分/G/アメリカ
原題または英題:The Assistant
配給:サンリスフィルム
劇場公開日:2023年6月16日

スタッフ・キャスト

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(C)2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

映画レビュー

4.0権力を持つ巨悪は、周囲の心をも飲み込むブラックホールのよう

2023年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

今年1月に日本公開の「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」(監督はドイツ出身のマリア・シュラーダー)と同様、のちの「#MeToo運動」につながった米映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性暴力を題材にしつつ、性暴力の直接的な描写は避けている。「アシスタント」を監督したオーストラリア出身のキティ・グリーンも、被害者に悪影響を及ぼしかねない性的なシーンを入れずとも、訴えるべきテーマはきちんと伝わると判断してのことだろう(2作品とも非米国人の女性監督という共通点も興味深い)。 本作の主人公ジェーンは、大物プロデューサー(作中では固有名詞がなく、単にboss=会長と呼ばれる)が率いる映画製作会社に入社し5週目のジュニアアシスタント。映画は、彼女が職場で体験するある1日の出来事を淡々と追い続ける。会長のオフィスを掃除し(ソファを消毒したり、床に落ちていた女物のアクセサリーを拾ったりする)、同僚の男性社員らの冗談めかした噂話を聞かされ、地方から出てきた業界未経験の若い女性を高級ホテルへ送り届ける……これらの小さなエピソードを点描のように連ねて、会長が女優や業界志望の若い女性に対して行っていることを観客に想像させる。 会長の性暴力を知ることだけでなく、組織的な隠蔽に加担する男性社員らの態度によっても、ジェーンの心が少しずつ削られていく様子を、ジュリア・ガーナーが繊細に演じ切っている。日本にも「長い物には巻かれよ」ということわざがあるように、ジェーンの先輩社員らは会長の不正に抗うより黙って従う方が自分のキャリアにとって得だと割り切っている。権勢を誇る大物の悪行は周囲の人間の心をも蝕み、まるで巨大な質量ゆえに周囲の光さえ飲み込むブラックホールのようだ。 日本に目を向ければ、ジャニー喜多川によるジャニーズ事務所所属タレントへの性加害問題が2004年の高裁で事実認定されながら、番組制作や出版事業で利害関係のある大手メディアグループに属する報道部門が沈黙してきたことも、間接的に隠蔽に加担したのと同じ。結果、判決後もジャニー喜多川に性的虐待を受ける被害者は出続けたと推定され、死後4年経った2023年3月にBBCがこの問題をドキュメンタリー番組で取り上げたことで、ようやく日本の主要メディアも扱うようになってきた。遅ればせながら日本のエンタメ界にも波及してきた#MeToo運動だが、日本で起きた性加害・性的虐待を題材にした映画が今後作られるかどうかを含め、メディアに携わる人間の矜持が問われていると同時に、受け手であるオーディエンスの意識も時代に合わせアップデートする必要があるのは間違いない。

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共感した! 9件)
高森 郁哉

3.5セクハラを黙認するオフィスのいやーなムード

2023年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

週末にも出勤して黙々と仕事をこなす主人公のジェーンは、まだ就職して間がないのに疲弊し切っているように見える。やがて、理由が明らかになる。ジェーンは上司がセクハラを助長する中、少しでも仕事でミスると罵倒され、周囲は誰も助けてくれない、言わば四面楚歌の状態にいることが。極め付けは、悩みを相談した人事部長のありえない言動だった。みんなダメと知りつつ、そのダメにどっぷりと浸かり、自己防衛しか頭にないのだ。そんなジェーンを取り巻く凍りつくような状況が抑えた色調と最小限のセリフによって描かれて行く。 ハーベイ・ワインスタインのセクハラ事件をヒントに、実際、ワインスタインの下で働いたことがあるアシスタントにも取材して脚本に活かしたという本作は、映画ビジネスの生々しい実態を暴くと言うより、1人の女性がまるで使い捨てのコマのように扱われ、人としての尊厳をズタズタに踏みにじられる姿を描いて、その後、巻き起こった#MeToo運動の流れへと観客を誘導していく。製作が立ち上がったのが2018年、テルライド映画祭で初披露されたのが2019年で全米での劇場公開は2020年。それを考えると、3年という時間のズレ(日本公開まで)が若干歯痒いところではある。 しかし、当然、まだ、世界のどこかにはジェーンと同じく踏みにじられ、無視されている女性がいるはず。それを伝えるのにタイムラグは問題ないのかも知れない。

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清藤秀人

3.5MeToo Indie Bombshell

2023年5月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

Among the early MeToo films, Assistant's ambiguities come off as incomplete at times, but at its best it seems that director Kitty Green took her observational and conversational cues from Steve McQueen. One day in the life of a secretary working in a Weinstein cinema house, she obviously isn't working a dream job. The film is soft on passing judgment, a direction I didn't expect it to go.

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Dan Knighton

2.0会社が人生になってしまっている人へ

2024年12月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

単純

長時間労働、週末出勤、パワハラ、セクハラなどなどに独り耐えながらなんとか働き続ける主人公が淡々と描かれるだけ。本当にそれだけ。 ついに壊れた主人公が自分を見つめ直して人生の新たな一歩を踏み出す……などそんな展開もなく、ただ働き続けるだけ。 主人公の顔もずっと無表情か、暗い。 笑顔が一度でもあったっけ? 会社によって身も心も衰弱しながら痛々しく生きていく様がとてもリアルなだけに、救いが無さ過ぎる。 一応主人公は夢を追うために働いているのだけれど、 このまま働き続けても使い捨てられるだけで、夢が叶うハッピーな予感が一切しない。 同じような境遇にある人が観て共感することで、また明日から頑張って生きていく……のではなく!、 自分からその環境を脱出するきっかけになるような作品であって欲しい。 見終わった後の余韻がちょっと後味悪かった。

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Omi

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