ファミリア

劇場公開日:

ファミリア

解説

「八日目の蝉」「いのちの停車場」などの成島出監督が役所広司を主演に迎え、国籍・文化・境遇を超えて家族を作ろうとする人々の姿を描いたヒューマンドラマ。

山里でひとり孤独に暮らす陶器職人・神谷誠治のもとに、一流企業のプラントエンジニアとしてアルジェリアに赴任中の息子・学が婚約者ナディアを連れてやって来る。学は結婚を機に退職して焼き物を継ぎたいと話すが、誠治は反対する。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人の青年マルコスは、半グレ集団に追われていたところを助けてくれた誠治に亡き父の姿を重ね、焼き物の仕事に興味を持つように。そんな中、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲う。

役所ふんする誠治の息子・学を吉沢亮が演じ、MIYAVI、佐藤浩市、松重豊が共演。

2022年製作/121分/PG12/日本
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2023年1月6日

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(C)2022「ファミリア」製作委員会

映画レビュー

3.5絶望と憎しみの連鎖を断ち切るものは

2023年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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ニコ

3.5多様な出演者陣と巧みに呼吸を合わせてシーンを成立させる役所広司の凄さ

2023年1月31日
PCから投稿

”家族”とは社会の最小単位だとよく言われるが、本作にはそのタイトルが象徴する通り多種多様な家族が登場する。血の繋がった父子、夫婦になろうとしている国籍や肌の色の違う男女、ブラジルからやってきて生き抜こうとする若者、かつて養護施設で育った大人たち、さらにはヤクザや半グレ連中もそれはある意味で家族。そして登場人物の誰もがそれぞれ”愛する者の不在”という心の傷を抱えており、喪った心の欠片を埋め合わせるかのように主人公の陶芸家とブラジル人の若者とが結びついていく過程は静かな見応えを生む。役所広司の役柄は口数こそ少ないが、体に染み付いた陶芸家としての所作の一つ一つが生き様を謳っている。また彼はタイプの異なる俳優たちを繋ぐ結節点のような存在でもあり、名優たちとのシーンはもちろんだが、オーディションで選ばれたブラジル系の若者たちとも絶妙に呼吸を合わせシーンを成立させている点が彼の凄さなのだと思い知った。

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牛津厚信

4.0日本の新しい現実

2023年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本に暮らす在日ブラジル人たちの現実を描く作品。日本はすでに移民大国であり、地方ではこの映画に描かれるような場所は確実に増えている。もはや、彼らのような存在は日本社会を構成する上で不可欠な存在になっているが、インビジブルな状態に置かれ、差別もある。
本作が貴重なのは、こうした現実を、実際の当事者たちを起用して描いた点だ。主要キャストには演技初挑戦の在日ブラジル人たちが多数参加していて、当事者だから表現できるリアリティを持ち込んでいる。エピソードにも彼らの経験が反映されているようだ。
物語は、彼ら在日ブラジル人たちが巻き込まれるトラブルと、息子夫婦に訪れる悲劇を同時に描く。遠いアルジェリアで難民女性と結婚した主人公の息子は、異国の地でテロに巻き込まれる。国外でも国内でも、日本人は外国人とつながりを持って生きているし、世界に起きている出来事は決して無関係ではない。世界の大きな変化の流れの中に、確実に日本もかかわっているのだと実感させる良作だ。

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杉本穂高

4.5この題材を取り上げたのは高評価。要素過多が惜しい

2023年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

“瀬戸物”で知られる愛知県瀬戸市で代々窯業に従事していた家に生まれ育った脚本家・いながききよたかは、①斜陽化する地場産業、②瀬戸市に隣接する豊田市にある保見団地に出稼ぎで多く住むようになったブラジル人コミュニティーと地域の人々との衝突(高校生だった1990年代によく騒動が起きていたという)、③2013年にアルジェリアの天然ガス精製プラントにアルカイダ系武装勢力が立てこもり日本人を含む職員らを人質にした事件、といった実際の出来事に基づく3つの要素を1本のシナリオに盛り込んだ。

技能実習制度下の搾取的な労働環境から逃げ出したベトナム人女性たちの苦難を描いた藤元明緒監督作「海辺の彼女たち」(2021)、在日クルド人の女子高生とその家族が難民申請を認められず在留資格を失ってしまう川和田恵真監督・嵐莉菜主演作「マイスモールランド」(2022)など、日本で暮らす外国人の生きづらさを題材にした秀作は近年増えてきたが、この「ファミリア」もそうした系譜に連なる。北アフリカの地で外国人が現地の人間から理不尽な暴力を受けるという点で、やはり役所広司が出演した「バベル」(2006)を想起させるが、役所が演じる陶器職人とブラジル人青年マルコスとの関係性は、「グラン・トリノ」(2008)でクリント・イーストウッドが演じた元自動車組立工と隣家のモン族の少年の関係に近い。

俳優たちの演技、成島出監督の演出も決して悪くないのだが、それぞれに根深くて重い題材を3つも盛り込んだことで、各トピックの掘り下げが不十分になり、トピックどうしの有機的な連動性も弱いのが惜しい。団地のブラジル人コミュニティーと周辺住民との関係は、メインストリームのメディアで滅多に扱われない題材であることからも、この要素にもっとフォーカスしたストーリー構成だったらなお良かったのにと思う。

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高森 郁哉