スターフィッシュ

劇場公開日:

スターフィッシュ

解説

亡き親友に導かれ、世界を救うためのミックステープを集める少女の冒険を独創的な映像で描いた異色のSFスリラー。親友を亡くし大きな喪失感を抱えるオーブリーは、親友のアパートで思い出に浸りながら一夜を明かす。しかし目が覚めると街は深い雪に覆われており、人影はなく謎の怪物がうろついていた。親友が残したメッセージを手がかりに、世界を救うミックステープを集める旅に出るオーブリーだったが……。主演はドラマ「マーベル ランナウェイズ」のバージニア・ガードナー。ミュージシャンとしても活動するA・T・ホワイトが監督・脚本・音楽を手がけ、劇中のアニメーションパートは手塚プロダクションが制作を担当した。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2022」(22年1月28日~)で上映されて好評を博し、22年3月に単独で劇場公開。

2018年製作/99分/イギリス・アメリカ合作
原題または英題:Starfish
配給:アムモ98
劇場公開日:2022年3月12日

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(C)2018 Starfish Productions,LLC. All Rights Reserved.

映画レビュー

4.0アートセラピー

2024年9月29日
Androidアプリから投稿

本作は、SFと評されながら実話に基づく物語と冒頭で明記されているが、人が突然いなくなり、不気味な生物が闊歩する世界が実話?と置いていかれる事間違いなしである。
だが本作は観客を満足させる為のエンターテインメント作品ではなく、監督自身の実体験を元にする想像上の物語であり、それが監督自らのアートセラピー映画となっている。監督と作品はもはや一心同体そのもの。過去にも監督の心情等が作品に反映された作品がいくつか製作されているが、ここまでそれをさらけ出した作品は無いだろう。本作の主人公が体験する、親友の死。別れを偲ぶ会で馴染めずに、足早に立ち去り、今は亡き親友の家に侵入し、どこか落ち着かない1晩を過ごす主人公の描写があるが、これがA.T.ホワイト監督が体験した「実話」にあたる。親友の死というものが相当大きな傷を残したようで、何を聞いても何をしても心の空白が広がるばかりという心情を強く表現している。そして翌朝、突然雪が積もり、人の姿が無い街に蠢く謎の怪物。そして、トランシーバーから聞こえる他者の声と、親友が残したメッセージ、「このミックステープが世界を救う」。ここからが心情を色濃く表現した世界となっていく。あくまでも心の出来事の為、物語に信憑性や起承転結は存在しないのである。だから途中で手塚プロが製作したアニメ部分があったり、観ていて意味が分からない展開が多いのである。だが、それでも世界を救うために散りばめられたミックステープを探す主人公を見ていて何となくこれらの描写に説明がつくだろう。ここでは世界=自分自身という事になっているのだ。閉ざされた心の中でショックや未練を断ち切り、新たな世界(自分)を見つけるまでの壮大な冒険。あのラストが語ろうとしているのはそれを具現化したものなのだと解釈している。それ故に物語として不条理な世界が本作ではまかり通るのである。突然本作の実際の製作現場へ舞台が変わるという映画作品では中々有り得ない展開が目白押しとなっており、この世界観について行けなくとも、映画作品での新しい挑戦という視点で観ると注目ポイントがちらほら出てくる。別にこちらは心を病んでいない為、これを見て心の整理がつくのは監督だけだろうから、それを観させられた我々は「だから?」と思ってしまう節もあるかもしれない。よって本作を他人におすすめ出来るかと言われたら難しい。だが雰囲気で他作品とはひと味もふた味も違う本作の沼にどっぷりハマってしまうファンもいるだろう。不思議な体験をしたと思い、余韻に浸れる人、とんだゴミクソ映画だと劇場を去る人の両極端で好みは分断されるはずだ。批評家からの支持は熱く、観客からの評価が冷たいというなかなか癖のある注目をされそうな作品である。監督の心情が明るく変化したのが分かるのは次回作になるのだろうか。次回作は夢と希望とに溢れた作品になっていることを願う。

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Mina

3.5喪失と再生の物語

2024年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

恋人を裏切り、病床の親友を放っておいた罪悪感を抱えた主人公オーブリー。親友グレイスの葬儀の後に彼女の家に潜り込み一夜を過ごすと外の世界は一変していた。

町からは人々の姿が消え、恐ろしい餓鬼のような怪物が徘徊する世界に。もとの世界を取り戻すにはグレイスのミックステープを全てそろえることが必要だと知った彼女は一人冒険の旅に出る。

本作を見て「ミスト」と「ジェイコブズラダー」を思い出した。あの巨大生物はアングルからしてどう見ても「ミスト」だし、餓鬼が徘徊する世界は煉獄をイメージした「ジェイコブズラダー」の世界だと思った。恐らく罪悪感から現実逃避をしたオーブリーが作り出した世界なのでは。

かけがえのない親友をなくした悲しみ、病床の親友を見舞わなかった罪悪感、恋人を裏切った罪悪感、死への誘惑に駆られた彼女を餓鬼たちが地獄へ引きずり込もうとする。思えば最初の葬儀のシーンで彼女の飲み物にハエが浮かんでいたのも悪魔ベルゼバブをイメージしたものだったのかな。
死の誘惑にとらわれる彼女、しかしトランシーバーから聞こえる「君は生きたいんだね」の声に導かれ、彼女は迷いながらもミックステープを探す。すべてのテープをそろえたとき餓鬼は彼女の前から立ち去った。彼女の生きたいという意思が勝った瞬間だった。
すべてがそろったテープには「許して忘れよう」の文字が。自らの過ちを受け入れて彼女は新たな世界に一歩を踏み出す。

主人公が死の誘惑に打ち勝ちいかに再生してゆくかを描いた物語。実話に基づくということからもしかするとこれは監督の実体験を基にした作品なのかな。

ホラー要素やアニメーション、音楽と、エンタメ作品としても飽きさせないつくり。
冒頭から弦楽器による音楽で魅了される。音に特化した作品だなと思ってたら監督はミュージシャンの方だという。ただ、全体的に静かな作品なのに時たまジャンプスケアで驚かす意地の悪さも。

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レント

3.0【”このミックステープが世界を救う。“親友を亡くした若き女性が後悔の念の下、”怪物”と対峙する姿を描いた作品。今作は、独特の唯一無二の世界観が印象的な、超アーティスティックな作品である。】

2023年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

難しい

幸せ

■親友のグレイスを失ったオーブリー(ヴァージニア・ガードナー)は、悲しみに耐え切れずグレイスの家に忍び込む。
 翌朝、彼女が目覚めると人々は消え、見えない音が支配する異様な世界になっていた。
 オーブリーは親友が残した7つのカセットテープを手掛かりに謎の信号を解読し、世界を救おうとする。

◆感想

・私は、今作の様な観る側に解釈を委ねる作品が、実は好きである。

■勝手な解釈

・オーブリーは、グレイス(多分、オーブリーの恋人であり、同性愛者。)の事を大切に思っていながら、時に浮気をしていた。(実際に、劇中オーブリーが懺悔している。)

・故に、今作で描かれた突然誰もいなくなった世界は、オーブリーが脳内で産み出したモノであろう。

・オーブリーは、”音=怪物”と対峙しながら、”世界を救うため”にグレイスが遺した7つのミックステープを探して行く。

<7つのミックステープを継ぎ合わせ流した時に、それは”怪物”の罠である事が、僅かな生存者達から声で告げられるのだが、オーブリーはそんな中、シガー・ロスの美しい曲が流れる砂漠の中を歩いて行くのである。
 その砂漠からは、不可思議なモノが立ち上っていくのであるが、彼女は気にしない。
 きっと、グレイスへの贖罪が、彼女なりに終わった事の心象風景なのだと思う。
 今作は、独特の唯一無二の世界観が印象的な、超アーティスティックな作品なのである。>

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共感した! 4件)
NOBU

3.0鑑賞動機:ごく一部の評判10割

2022年12月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

『時計仕掛けのオレンジ』ポスター発見。正直なところ「はて?」と思うところも少なくないが、最後シーンの美しさには目を奪われてしまった。ちょっと『サイレント・ヒル』っぽいのも好き。もう少し腑に落ちるように提示されてたらなあ。
ガードナーさんは初めて…いや『ハロウィン』(2019)にも出てるのね。ダメな子を中々いい感じに演ってる。

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なお