ある男のレビュー・感想・評価
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愛する人のなにを見ているだろうか。
肩書きやカテゴライズされた要素はどれ程の意味を持つのだろう。誰かを愛するとき、その人のなにを見ているだろう。そんな問いかけを感じました。
平野啓一郎原作の脚本は期待を裏切らない密度で、平野さんが提唱する分人主義をベースに、戸籍ロンダリング、死刑制度、ヘイトスピーチなどをテーマに取り入れています。哲学的でありながら物語である意味を強く感じる主張がありました。
「戸籍を入れ替え生き直す。それぐらいのことをしなければ生きていけない人もいるんだ」特に印象に残った台詞です。
ミステリー要素も濃く、サイコホラー感もあり迫られるような音の使い方は追い詰められる、逃れられない、そんな登場人物の感情と観客をリンクさせる演出で追体験させられているようでした。映画館で映画観てるなあ。という実感を強く持ちましたし、素直な感想は「怖かった」です。
場面によって主人公が変化する構成も面白かったです。複数人の人生に焦点を当てているため登場人物も多いのですが、煩雑さもなく流れが入ってきやすかった。
極力情報入れずに観たため、次々出てくる演技派俳優に驚き、笑みが溢れてしまうほどお芝居に圧倒され続けられました。
里枝の息子役坂元愛登さんもお芝居素晴らしかったです。間の取り方空気の作り方の事実っぽさたるや。この2人のシーンは台詞演出ともに良いものばかりで見どころの一つです。
買わないと何か悪い店には入りづらい
現代版「砂の器」
映画を見る事
2022年いろんな映画を観てきた中で1番面白かった作品。
素晴らしい映画体験だった。
エンドロールで感激のあまり震えが止まらなかった作品。久しぶりにそういった作品に出会えたし、生涯のベストに入る作品。
ドラマ的な展開やミステリー要素などを期待すると地味な印象かもしれないが、俳優陣の方々の演技にスキがなくこれほど見応えがある作品は滅多に出会えないと思う。
妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝という豪華なメインキャストの方々の演技は群を抜いてよかった。安藤サクラさんの人妻の色気が漂っていた感じとか、妻夫木聡さんの演じる城戸の葛藤や自分を見つめ直す姿とか。特に窪田正孝さんの役はめちゃくちゃ複雑でやりづらそうなキャラクターだったのにも関わらず、それを上回る様な印象的なキャラクターになっていた。凄まじい迫力を感じました。これはもう助演男優賞になるでしょう。
原作者、平野啓一郎先生が唱える分人主義がテーマになっている本作。対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格があるという考え方。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えること。今の世の中は、SNSだったり、職場だったり、学校や環境、過去や現在によってキャクターを演じなければならないシーンと、個人の個性のギャップに悩んだり、もどかしく思う事で疲れてしまうシーンに溢れている。そんなん気にするなとシンプルに考えられる人もいるのかと思うけど、実際状況に合わせて変化させることに疲れている私にとって窪田正孝さん演じる謎の男Xと謎の男を追う中で、自らのアイデンティティを見つめ直す妻夫木聡さんの演じる城戸の姿はとても印象的だったし、刺さるものが多かった。
エンターテイメントとして一級品なのは間違いない中で、映画の見せ方、ストーリーの構造の描き方が感激だった。
映画の構造的に面白いのが、謎の男Xを追う城戸という状態が正しく"映画を見る事"に近い状態になっていて、その城戸を追いかけている観客までもがシンクロする感覚になっている。そしてラストのあるシーンで観客と主人公が混ざり合う様な強烈なカタルシスを味わうことがこの映画の1番の面白さと人生の機微を体験できる描き方が本当に本当に凄まじかった。映画を見る事で自分の内面を見直す、なにかヒントがもらえる事が映画体験の醍醐味の一つ。城戸とXを見つめることで自分のあり方を考えるキッカケになる様に出来ている。
野村芳太郎監督や、松本清張作品、安部公房作品の映画が好きな私にとっては大変心打たれる作品だった
妻夫木をキャスティングした意図
人間ドラマと形容するに相応しいミステリの奥深さ
これは人間ドラマらしい。評判と共に聞こえてくる声に納得。つい踏み入った感想が流れてくるのもわかる作品。それほど人間は深いのだから。
私の愛した男は、別人でした。そんな衝撃から始まる作品。しかし、意外にも予告ほど不穏なモノではなく、たまたま空いてしまった穴に彼の人生は何が埋まっていたのか、それを静かに掘り続ける作業の作品なのだ。人間ドラマだからという意味ではなく、ある男のドラマなのだと受け入れる。そこになんとも言えない不気味な影と踏み入った表現によって、捻りの効いた味付けへと変貌している。多くは語らないが、よく使われるあの言葉が端的に表現できる。
他人の人生に踏み入ることへの危うさと好奇心が混ざり合いながら、その証明を手繰り寄せる様は時折スリリング。そして、もっていた温かさがまとわりついてくる。観た人たちは一緒に受け入れる。時に、無意識に刷り込まれた外野の言葉と共に。その見せ方が何とも上手く、恐ろしい所でもある。石川慶監督の凄い所は、ドラマの核は外さずとも、見える描写と台詞をバランス良く組み立てながら、分かりやすくも深く付いてくる所だ。光と影が何を映してくるのか、その余白を埋めていく型が何より上手い。
主演は妻夫木聡さん。『愚行録』も観たので、このタッグは何とも嬉しかった。ただ、安藤サクラさんが主演だと思っていたのも事実。どちらかと言うとテラーに近い。そして窪田正孝さん。今更ながら多彩な演技に驚かされる。今年はつくづく痺れることが多い。随所まで配置された豪華さが作品の奥行きを生む。またまた凄い演技力を見せる河合優実さんは本当に凄い女優さんである。一部キャラのディティールに濃淡が薄く勿体なく感じたが、それでも最後まで緊張を切らさない配置は見事だ。
たまたま今日、報知映画賞が発表された。作品賞を獲るのも納得である。そして、観た人でないと見えない真実を語りたくなるのもまた、ミイラ取りの様である。
静かにじっくり観たい
自分が自分である事を 果たしてちゃんと証明できるだろうか
人は産まれた瞬間から逃れられない運命を持っているもので、
それは決して己の力では書き換えれない。
それが運命
誰もがそこから自らの手で幸せを掴むべく毎日を過ごし生きていくものだが、
逃れられない運命を背負うことの苦悩やアイデンティティ(存在証明)を手放し
どこかにあるまっさらな空白のスペースに
全く別の自分の居場所を欲しているのかもしれない。
身近に考えると、SNSのなりすましや匿名投稿性もある意味同じかもな。。と。
「名前」「血族」「容姿」
目に見える確信で判断された結び付きよりも
「心」「愛」「情操」
目に見えない結び付きの方が大切なのかもしれない。
この映画でポイントになる
ルネ・マグリットの『不許複製』という絵画。
この絵画は描かれている人物の疎外感を表している。と言われているそうです。
ラストシーンの 妻夫木聡 さんの余韻は素晴らしくもゾッとした。
窪田正孝 さんと 安藤サクラ さんの空気感はさすがでした。
誰もがXになる可能性を抱えている。
大なり小なり差別や区別されて生きているから。
マグリッドの複製禁止
冒頭の印象的な絵画、調べるとジュルレアリズムの画家、マグリッドの複製禁止という絵画らしい。
顔の見えない、判別不能な男、まさしくある男からのオープニング。
好む好まざるに関わらず、持って生まれた自らの出自、それを武器に人生をのし上がっていく人もいれば、それを消し去りたい人も多くいるのだろう。
妻夫木聡さん演じる弁護士も消し去りたい1人。
自らを仕事、結婚含めた武装、そして帰化という合法的な手段で消し去る努力をしてきた人。
きっと、これまでは無意識に実行してきたのだろう。
しかし、窪田さん演じる偽大介が出自を消し去り、自分個人としては充実したわずか4年を羨ましく感じる。
社会的とか、金銭的とかでなく。
武装解除できるのは、バーでのみ。マグリッドの複製禁止に勇気づけられて。
演者は皆さん、素晴らしかったです。
戸籍一枚で人間の存在を決める世の中
今が幸せなら大切にする、嫌だなと思ったら新しい場所へ
本筋だけ
窪田君が安藤サクラに
友達になって下さい、と告げるシーンは
キュンキュンしちゃいました
おばさんの気持ち刺激しすぎ笑
メインの話はわかりました
でも、色んなところで
ちょいちょいわからない話が出てくる
思わず、電子書籍をポチってしまった
どこかのレビューに原作本の宣伝とありましたが、見事にハマりました
自分で回収できないし、気になるし、時代はポチってすむことが増えたもんだ
仲野太賀もチョイ役で、うーんもっと見たかった
柄本明、怪演ですな
見てる自分も詐欺られそうだわ
赤の他人になりすまして
生まれ変わった気持ちになって
全く別の人生を歩めて
最後の何年かは幸せだったのだと思いたい
ちょいちょい蘇る父親の血は
少しは感じていたのだろうけど
設定は面白いのに
いささか消化不良
…な一本と思われました、評論子には。
戸籍は、もちろんその人のアイデンティティを表象するものの一つですし、戸籍による身分関係の公証があらゆる法律関係の基礎をなしていることも、否定はできません。
しかし、人のアイデンティティのすべてでもないと、評論子は思います。
芸能人はいうに及ばず、講演活動などを行っている人達などには、戸籍上の本名よりも、活動に使用している名前で、その人が認識されている例もあることには、枚挙にいとまがないと思います。
言ってしまえば戸籍によるアイデンティティの証明はその程度のもので、単なる「紙」に過ぎないのに、「戸籍を交換すれば、一切の過去を切り捨てて他人になりきれる」などというのは荒唐無稽な考え方であることは、そのことに徴しても明らかではないでしょうか。
「戸籍交換」などという目新しい言葉で、それがいかにも人の過去を消し去ることができるかのようなミステリアスな行為のようにモチーフとしているかのような本作には、正直なところ、鼻白む思いがしてしまいました。そういうモチーフを良くかみ砕いで消化できていないとも思われました。
観終わって、残念な一本になってしまいました。評論子には。
ラストが素晴らしい
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