ある男のレビュー・感想・評価
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自分とは本当は何者でもない
ハッとさせられる映画でした。
本当に観てよかった!
妻夫木聡さん演じる弁護士の心の闇がだんだんと現れてくるところから、ぐっと面白くなった。”人探しをしながら自分を癒している”というようなセリフがあったが、表向き立派な弁護士でありながら、在日3世という劣等感をぬぐいきれずもがいている様がしっかり伝わってきた。
キャストそれぞれの演技が素晴らしかったことで世界観に入り込むことができたし、1コマ1コマに無駄がないというか、短尺ながら訴えたいことを凝縮した演出も素晴らしかった。日本アカデミー賞を席巻したのも納得!
人間は「私というのはこういう者」という認識の上で自分の現実を作っている。もし記憶喪失になればその日から人生が変わる。つまり過去の経験やアイデンティティが今の自分を作っているということ。
そんなある意味不確実性に包まれた「自分」を他の誰かが定義することなんて、できないんじゃないかと思った。区別なんて必要だろうか。区分けを強調すればするほど差別の心は生まれてきやすくなる気もする。国籍、血筋、性別、学歴、そんなものは見えているほんの一部でしかない。肩書ではなく内側から発しているものを感じとる大切さを改めて感じた。
"この人大祐じゃないです"
"この人大祐じゃないです"
この言葉から物語は一変する。
夫が何者かわかった後、
知る必要がなかったかもしれないと里枝は言った。
夫と過ごした時間は確かに存在し、そこに愛があったから。
その人が何者かなど日々疑わずに過ごしていることに
気付かされる。
また、多くの人が、城戸のように、
自分は何者なのか?見失い、
どうしようもなく現実から逃げたくなった時、
他の人生を生きたくなる時があるのではないか。
妻夫木聡はじめ、安藤さくら、窪田正孝は
傷を負った過去をもつ人物をよく演じていて
流石であった、脇を固める俳優陣も良かった。
あいつと今、話したいことがいっぱいありますよ
城戸が1番掴めなかった
濃密な衝撃作
2022年~2023年にかけて最も話題になった邦画の一つ。愛する夫を亡くした女性が、夫の死後に彼が別人に成りすましていたことを知り、弁護士に依頼して夫の本当の正体を突き止めようとするという、なんとも複雑なストーリーで、多くの場面で多くの登場人物の感情が混ざり合うコントラストが見事でした。夫は一体何者だったのか、なぜ他人を装っていたのか、それは開けてはいけないパンドラの箱だったのかもしれません。
まず、弁護士を演じる妻夫木聡、離婚後に結婚した夫を亡くした2児の母親役の安藤サクラ、そして素性を隠し別人を名乗っていた謎の男役の窪田正孝、この3人の演技が作り出すシリアスな世界観が素晴らしかったです。過去の回想シーンも多く、ストーリーそのものは複雑ですが、一見和やかな場面でもどことなく緊張感が走っており、終始目を離すことができませんでした。メインの3人を取り巻く人たちも、一人一人が濃いキャラクターを持っていて、一体どんなことをしている場面なのか混乱してしまうこともありました。妻夫木さん演じる弁護士も、途中で本当の目的を見失ってしまうような葛藤が描かれていて、少々感情移入しすぎてしまいましたね。窪田さん演じる謎の男の過去や真相も相まって、どうしても自分と重ねてしまいます。窪田さんのセリフ一つ一つに、一言二言では言い表せないほどの重みを感じました。自分の本当の気持ちと向き合うのってすごく難しいことですが、それがいかに大切なことなのかを教えてもらった気がします。
最後の場面からスタッフロールに画面が切り替わる瞬間に感じた、心に残る衝撃はいまだに忘れていません。よくぞこんな映画に出会えたなとしみじみ思っています。
刺さる刺さる。
重い。愚行録までは行かないけど、同じ監督とあとから知り、やっぱりねとは思いました。
自分の父が殺人をする。それも目の当たりにした少年。悲しすぎる。どうやって受け入れることができるだろう。想像を絶する。しかし事実、加害者家族はいる。被害者もまたいる。共に不幸である。
人類が、犯罪を無くすためにできることは何か、人々と国家が、犯罪、犯罪者と、どう向き合い解決してゆくべきなのか、今、この社会は犯罪を無くすための良い方向に果たして向かっているのだろうか、考えさせられる。
妻夫木聡は、こういう重いテーマが得意なのかな、伝わりますね。今回も驚かされた。終盤、事務所で、旅館の長男を前に抑えてきた感情を初めてあらわにしたシーンに震えた。人間は怒る時は怒らないといけないのだ。泣くときは泣かないといけないのだ。
息子くんがお母さんに僕がお父さんのことを大きくなったら妹に話すよって言ったシーン泣けたな。だってどんな良いお父さんか僕がわかっているからって。そうだ。
人生ってなんでしょうか。長さだけでは無いことは確かというメッセージもある。人はなぜ、不幸になるのだ。しかし幸せになりたいと誰もが懸命に生きる、素晴らしいメッセージ性の強い映画だった。
在日、差別、犯罪と偏見。暗い映画で、何回も見たいとは思わないが、ズシリと刺さる映画で、感動しました。
ただ、最終シーンは必要だったかなあ。妻の不倫(そもそも妻が妻夫木聡とうまくいってる感が最初から無さそう)と、妻夫木聡のなりすます?!謎シーン。
『私は差別しないわよ』という差別。。。
妻夫木の演技に震える
邦画ならではの陰鬱な空気が全体を支配しており、
個人的にはかなり好みでした。
幸いにして私は別人になりたいと思うような人生ではなかったので、
この映画の根幹となる問題提起には共感しづらい部分もありましたが、
それでもいろいろ考えさせられながら楽しみながら見ました。
この映画、いろいろ賞をもらったようですが、
そらそうだろうなって納得できるくらい、2022年の映画の中では良い出来でした。
妻夫木聡が、仕事なのでニコニコ振舞いながらも怒りを募らせていく演技が圧巻でした。
1点、
カエルの子はカエル、殺人犯の息子は殺人犯みたいなものが根底にあって
それに苦しんでいる・・・ってのは必ずしもそうかなぁと少し気になりました。
人生のスタートからしてハードモードなのは間違いないと思いますが
なんとかやっていけるんじゃないのかなぁ・・と
戸籍を変えたところで自分は自分じゃないのかなぁ・・
でもそれは自分が恵まれてるからそういう立場になってみないとわからないことなのかなぁ
・・・とか
色々考えさせられました。
映る顔
X
この作品を評価する映画業界はまだ終わってないと思った
ストーリーは、正直そこまで広がりがあるものでもなく、過去がわかったところでどうなんだという点に物語が収束してく感じが後半からする。
この物語を普通に演出したら本当につまらない映画になると思う。
勿論、色々な映画の語り方があると思うし、もっと適切な語り方もあるかもしれない。
でも、この危うい物語を映画ならでは表現(しかも派手さのない地味な表現)を使って、そして物語に奥行きと深みを持たせたことはとても凄いと感じた。
物語というより、映画の語り方がとても良い。
正直、この作品が映画業界で評価されるとは思ってもいなかった。
まぁ、アカデミー賞や映画祭ってのは、色々な力のバランスがあるとは思うけど、でもその中でもこの派手さのない作品が結局選ばれたってのはね。いいよね。
小説と同じ位かそれ以上
自分とはなにか?
他人の人生
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