ベルイマン島にて

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ベルイマン島にて

解説

「未来よ こんにちは」のミア・ハンセン=ラブ監督が、スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが数々の傑作を生んだ島を舞台に、映画監督のカップルが織りなすひと夏の物語をつづったドラマ。映画監督として認められ始めたばかりのクリスと、彼女のパートナーである有名監督トニーは、アメリカからスウェーデンのフォーレ島へやって来る。創作活動にも互いの関係にも行き詰まっていた2人は、敬愛するベルイマンが愛したこの島でひと夏を過ごし、インスピレーションを得ようと考えていた。やがて島の不思議な力がクリスに働きかけ、彼女は自身の実らなかった初恋を投影した脚本を書き始めるが……。「ファントム・スレッド」のビッキー・クリープスと「海の上のピアニスト」のティム・ロスが主人公カップルを演じ、クリスの次回作を映像化した劇中劇には「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカと「パーソナル・ショッパー」のアンデルシュ・ダニエルセン・リーが出演。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2021年製作/113分/G/フランス・ベルギー・ドイツ・スウェーデン合作
原題:Bergman Island
配給:キノフィルムズ

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第74回 カンヌ国際映画祭(2021年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ミア・ハンセン=ラブ
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(C)2020 CG Cinema - Neue Bioskop Film - Scope Pictures - Plattform Produktion - Arte France Cinema

映画レビュー

4.0映画的聖地がインスピレーションをもたらすとき

2022年4月26日
PCから投稿

巨匠イングマール・ベルイマンの作品が好きな人にとって、フォーレ島はまさに聖地に等しい場所。その草木や吹き抜ける強風、打ち寄せる波を、映像を通じてひしひしと感じられるという点では、本作は非常に貴重で、なおかつ画期的な一作だ。そして、主人公”クリス”はおそらく本作の監督ミア・ハンセン=ラブの投影でもあるのだろう。ベルイマンが愛したこの地にインスピレーションを得ながら脚本執筆に没頭するクリスの姿には、映画づくりにおいて着想が降りてくる瞬間とじっくりと向き合う誠実さがみて取れる。物語において全く魔法的な場面は描かれないが、その点、作り手の意識が徐々に研ぎ澄まされていく様は非常にスピリチュアル。己の分身ともいうべき存在にあらゆる感情を吹き込んで”劇中劇”が形作られていく本作の構造もまた穏やかなれどスリリングで興味深いものがあった。観賞後はきっと多くの人が無性にベルイマンの映画を観たくなることだろう。

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牛津厚信

4.0劇中劇の入れ子構造を曖昧化する巧みさ

2022年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ミア・ハンセン=ラブ監督作を「EDEN エデン」「未来よ こんにちは」と観たがあまり乗り切れなかった記憶があり、本作も途中までは入り込めずにいた。だが、主人公の女性監督クリス(ビッキー・クリープス)が次回作の脚本としてパートナーの監督トニー(ティム・ロス)に語り聞かせる内容が、劇中劇として--より正確には映画中映画だけれども--、あたかも完成した作品のようにミア・ワシコウスカが演じるエイミーが主役の映像に切り替わるあたりから俄然面白くなる。

この映画中映画のシークエンス(入れ子と考えれば内側の物語)が思いのほか長く、もちろん折に触れクリスとトニーの外側の物語に戻ってくるのだが、きちんと時間を計ったわけではないものの、体感として外側6、内側4ぐらいの比率ではなかろうか。そして終盤になると次第に外側と内側の境界が曖昧になり、ラストでは鮮やかな解決策で二つの物語がつながるのだ。この仕掛けの巧みさには大いに感心させられた。

“ベルイマン島”こと、スウェーデンのフォーレ島の景観も素晴らしく、柱状の奇岩がニョキニョキ伸びた海岸や、時が止まったような建物や風車小屋などが、作中の2組のカップルの心模様を美しく盛り上げていた。

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高森 郁哉

3.0ある監督夫婦の風景

2023年5月12日
Androidアプリから投稿

映画監督に限らず、ありとあらゆる芸術家のインスピレーションのために設立された“ベルイマン・エステート”。女流監督ミア・ハンセン=ラブも、その施設を舞台にした映画撮影のプレゼンをおこなったところ、それがエステートを運営する財団に認められ住居施設や映画館の無料提供を受け作られた映画だという。巨匠イングマール・ベルイマンが自宅兼ロケ地として実際に使用していたファーレ島だけに、ロケ地を巡る観光ツアー“ベルイマン・サファリ”なども組まれているらしい。

スケジュールが合わなかったグレタ・ガーウィクの代わりにキャスティングされたヴィッキー・クリープスの職業が映画監督であり、その旦那役ティム・ロスもまた同じ職業であることから察するに、2人は間違いなくミア・ハンセン=ラブならびにオリヴィエ・アサイアス元夫妻の分身であろう。つまり、実際の映画作りをシナリオ内におとしこみ虚構と現実の境界をあえて曖昧にした映画なのである。さらに本作が特徴的なのは、クリープス演じるクリスが監督をつとめる劇中映画が、さらに入れ子構造的に作品内に組み込まれている点である。

映画前半で展開された、まるでファーレ島観光誘致のようなベルイマン“ヤラセ”礼賛ムードを、作品から排除するための演出だと思われる。これでもしもベルイマン作品へのオマージュてんこ盛りの映画にしてしまったら、どっちらけもいいとこなのだ。シナリオ執筆中のクリスがエンディングの構成に行き詰まり、自転車でベルイマンの自宅を訪れるくだりなどは、(マトリックス4のキアヌのように)本作の落としどころがなかなか定まらない、ミア監督の苦悩がそのまんま表現されていたような気がする。

劇中劇の登場人物が、役ではなく実物の俳優としてクリスを慰めるシークエンスなどには、確かに工夫の跡が感じられる。が、両親ともに哲学者であるこの女流監督の作風と、ブレヒト的なイリュージョン演出の相性を問われると、首を傾げざるを得ないのだ。私生活では6人の女性との間に9人の子供をもうけたと伝えられる奔放な巨匠とは違って、子煩悩なクリスことミア・ハンセン=ラブはきっと真面目な母親なのだ。けっして虚構ではない現実生活の中に自分の居場所を見い出すリアリストなのであろう。

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かなり悪いオヤジ

5.0気がつかされる映画

2022年5月22日
iPhoneアプリから投稿

私にとっては、凄く感じさせられる映画でした。
特に劇中劇の中で見せる物語は、映画を制作する側からすると、手探りで描き続けたシナリオを、現場をこなしながら、ブラッシュアップしていく姿は、どこから見ても、苦しく切なかった。
複数の男性の子供を産みたい女性を描く映画のシナリオの難しさは、かなりのものかなと。

ラストシーン、娘がやってきて、
笑顔で一点を見つめる姿は
かなり共感できたし、深いメッセージだった。

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R tokyo

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