前科者

☆☆☆★★★（森田剛の◯汁に★１つ進呈）

原作コミックは未読。

ノベライズ版は読了済み。

鑑賞後にドラマ版があったのを知るが当然未見。

従って、以下のレビューはノベライズ版との比較でのレビューになります。

タイトルは『前科者』だけれども。内容的には、保護司の佳代が過去に受けたトラウトを振り払いながら、必死になって生きている彼女の成長譚であるだけに。実際のタイトルとしては『保護司』とゆうタイトルが本来ならば相応しいのではないだろうか？

ノベライズ版を読んだ後に。幾ら警察側の捜査に於いて、３人目の殺人でDNA鑑定での容疑が固まったとは言え。最初の殺人及び２人目の殺人に於ける《容疑者》のアリバイ関係を調査しないのは片手落ちなんじゃなかろうか？…と思ったし、それ以外でも色々と気になる点が多々あった。
ただ、読了後は直ぐに忘れてしまったり。メモを取りながら読んでいる訳でもないので「何だっけ！」と思い出せず、何だかモヤモヤが残ってしまっている。

あ？ちょっとだけ思い出せたのは…
最後に２人で話が出来る状況を周囲の事件関係者が創るってゆう場面も。
（大体、完全に容疑が晴れている訳ではないのに…って言うか、どう見ても◯◯未遂者だよなぁ〜💧）

映画本編ではノベライズ版との違いが幾つか見られるのですが。先ずファーストシーンで、少女時代の佳代と真司の恋愛模様から始まっていた。
（この時の映像は、その後も何度も使用され。佳代の心の中に深く刻み込まれている辛い記憶でもあるのを、観客側に刷り込ませる演出・編集となっている）

その時に起きたトラウトが、２人のその後の運命を大きく変えてしまうのですが。それによって、佳代と真司。作品の全体像を、２人の恋愛模様の第２章的な描き方を模索している…かの様にも見受けられた。
勿論、【あの時】に佳代が真司から受けた〝 仕打ち 〟からして、エンディングの在り方は変えようがないんですけどね。
だからこそ、何故２人の（ノベライズ版にはない）ラブシーンを挿入したのか？…と。
この辺りは原作コミック版を未読の為に、今ひとつ理解が出来なかった。
（その辺りのストーリー展開で、２人の恋愛模様第２章とゆう雰囲気を、こちらとしてはつい意識して感じてしまった次第。）

ノベライズ版を読んだ際には１００分程度で治まる内容に思ったのですが、映像化された本編では約１３３分。
前半はノベライズ版と比べても普通の速度で進んでいたと思えたものの。先程書き込んだ事の引き続きになってしまいますが。後半は、佳代と真司との過去に於ける関係性等を、観客に分かりやすく説明する為か？事細かに描いている為、少しばかり映画が助長気味になってはいないか？…とは少しだけ感じたのですが。

監督は、前作の『あゝ荒野』での熱い主人公の描き方の鮮やかさが印象深かった。
それだけに、観る前から多少の期待感を強く持ちながらの面がなかった…とは言い難いところ。
本編を観て、特別に印象強く感じられるショットであり、カメラワークや撮影テクニック等はそれ程には感じられなかった。
逆に言えば。出演者個人個人の感情の昂りを、的確に引き出していたと言える演出であり、編集のリズム感等はなかなか良かったと思う。

ただ惜しむらくは。この監督ならば、前作の『あゝ荒野』で描き切った。社会の底辺で必死になって足掻きながら、自己との孤独な戦いを必死になって続けている人間像の奥深さに、もう少し深く切り込んで描けたのではなかろうか？…とも。
それでも充分過ぎるくらいに描いてはいますけど、、、
あくまでも『あゝ荒野』と比べてしまうと…と言った意味で。
但し、『あゝ荒野』は格闘技を題材にしているので。主人公と相対する好敵手との間に発生する場外バトルでの更なる熱いモノが生まれた背景もあるのだろうとも思えますが。

有村架純の演技はとても良かった。森田剛は吉田恵輔監督とタッグを組んだ『ヒメアノ〜ル』と比べると今ひとつとは思ったものの、最後の最後は本当に素晴らしかった。

２０２２年１月２８日 TOHOシネマズ錦糸町楽天地/スクリーン１２

勘違いを承知で、ノベライズ版を読んで自分ならばこの人を使いたい、、、って意見を１つだけ。

ノベライズ版では前半から佳代に寄り添って描かれる【みどり】の存在感は大きい。
寧ろ、《佳代とみどり》のバディ物と言っても過言ではないくらいに、佳代はみどりを頼りにしながら話が進んで行く。

映画本編では石橋静河が演じるみどりだが。ノベライズ版を読みながら、「このキャラクターはもう大久保佳代子の喋り方や性格そのもの」…と思ってしまうくらいに自分の中では大久保さんのキャラクターを想像しながら物語が進んで行ってしまった。
石橋静河も好きな女優さんだけれども、もしも大久保さんだったならなあ〜…と。

尤も、地下アイドルとして活動する場合もある人物像だし。過去には暴力事件で入所している…って言う人物だと、ちょっと大久保さんとは違うキャラクターにはなってしまう。
大体、大久保さんだと暴力に関しては加害者側と言うよりも被害者タイプだし。そもそも暴力で捕まった過去よりも、万引きの常習犯の方が似合うちゃあ似合う。
そうなれば刑務所に入所するまでには至らず、佳代の様な保護司のお世話になる事もなさそうだし、、、
もしも、作品に関係出来たのならば是非とも大久保さんを使ってみたいなあ〜と。

あ？長々と書き込み過ぎた
以上、どうでもいい意見でした^^;

有村架純さん演じる阿川佳代は、謎めいていて変わった人だが真面目で透明感があり頑固で可愛い。
便利屋経営者の斉藤みどり(石橋静河)、工藤 誠を弁護した宮口エマ(木村多江)、工藤兄弟の母を殺害した義父の遠山史雄(リリー・フランキー)らは出番が少ないが存在感があり、彼女たちが作品に深みを与えている。

「前科者に必要なのは保護司じゃない、佳代ちゃん、あんたみたいな人間だよ」と斉藤みどりに言われた時の阿川佳代の顔、警察に確保された実が自害した時に後ろの奥にいた阿川佳代の顔が見どころ。

【保護司の使命（保護司法の第1条）】
「保護司は、社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、その使命とする」

非常勤の国家公務員である保護司になったきっかけは、阿川佳代の中学時代の恋人、滝本真司(磯村勇斗)の父親が死んだからでもあり、書かれた問い「なぜ生きている」の答えでもある。
若くして保護司という仕事に人生を捧げる姿に感動する。