MINAMATA ミナマタ

劇場公開日:

MINAMATA ミナマタ

解説

ジョニー・デップが製作・主演を務め、水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いた伝記ドラマ。1971年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミスは、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。衝撃を受けながらも冷静にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしまう。追い詰められた彼は水俣病と共に生きる人々に、あることを提案。ユージンが撮影した写真は、彼自身の人生と世界を変えることになる。「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイが共演し、日本からは真田広之、國村隼、美波らが参加。坂本龍一が音楽を手がけた。

2020年製作/115分/G/アメリカ
原題:Minamata
配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム

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映画レビュー

3.5古風なハリウッドナイズだけど実直さと本気がみなぎっている。

2021年11月30日
PCから投稿

水俣病の問題について詳しいわけではないが、実際に起きたことをかなりハリウッド風に脚色してることは映画を観ていても感じ取れるし、実際、物語的な面白さを優先して、史実を変えたところも多く、メインの登場人物のモデルになった方が、正確ではなくとも水俣病のことを知ってもらえるからという理由から映画を支持されているインタビュー記事も読んだ。

近年では、白人男性を一種のヒーローにして異文化を描くことを批判する声も高まっていて、その轍を踏んでいないとは言えないと思う。しかし、それでもこの映画に見応えがあるのは、作り手のこの事実を世界に知らしめたいという気持ちと、生半可なものは作れないという日本人キャストの本気が感じ取れるから。

被害者の声を届けるための情熱的なリーダーを演じる真田広之、被害者の悲しみと葛藤を過去最高の熱演で体現する加瀬亮、出番はわずかながら一瞬で凄みを感じさせる浅野忠信など、第一線の演者たちの気迫もすごいし、それに煽られるような熱気が映像に宿っているように感じられるのだ。

当事者の方々には複雑な胸中があると思うし、この映画を観て、当事者の声に耳を傾けないのは現実をエンタメとして消費したと謗られてもしょうがないだろう。しかし、この映画の実直さは否定できないし、それゆえに力のある作品に仕上がっていると思っている。

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村山章

4.5今のデップだからこそ表現しえた境地

2021年9月26日
PCから投稿

写真家ユージン・スミスの瞳を通じて語られるこの物語は、我々が常識として知る水俣病に関する知識や記憶にまた新たな情景をもたらしてくれる。外国から引き寄せられるようにやってきた彼は、ファインダー越しに何を見つめ、何を感じたのか。本作の起点が「海外から見つめる瞳」である意味は大きい。赤く照らされた現像液の中でじわりと像を浮かび上がらせていくのは、決して水俣だけにとどまらぬ、世界中に共通する普遍的な怒りと悲しみと、家族と愛情の物語なのかもしれない。それは同時にスミスと我々が「最後の一枚」へと導かれていく荘厳な道行きでもあるかのようだ。これで感動しておしまい、ではなく、本作をきっかけに公害問題のこと、発展の名の下に個を抑圧する社会のこと、それからスミスの生涯をもっと紐解きたくなる。ジョニー・デップだからこそ表現しえた力強い境地がそこにはあった。日本人キャスト一人ひとりにも深い感銘を覚える作品である。

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牛津厚信

4.5ジョニーデップの迫力

2023年5月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1971年、ジョニーデップ扮するユージンスミスは、写真機材も売り払ったニューヨークの落ちぶれた写真家だった。そんなユージンのところに富士フイルムの来客があり日本企業のチッソが公害をまき散らしており日本で写真を撮って欲しいと言われた。
水俣病患者の父親に浅野忠信、反対派リーダーに真田広之、チッソ社長に國村隼。
写真家の覚悟が随所に演じられてジョニーデップの迫力を感じたよ。

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重

3.0表現の自由「cinema de 憲法」

2023年5月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

<映画のことば>
写真というものは、写す者の魂の一部も切り取るのだ。

時は高度成長期。急速な国民経済の伸長に伴う人口増加を背景に、食糧の増産は不可避の課題。狭い国土で効率よく農産物を栽培するための化学肥料の生産は国策だともいえたのでしょう。その「国策」の陰を暴こうとする一枚の写真―。
表現の自由は、常に「異端者のため」という不思議な権利です。時の権力に迎合する表現は、その保障に値しない―なぜなら、そのような表現が時の権力から弾圧されることは、あり得ないから。
表現の自由は、いつの世にも時の権力にとって都合の悪い表現のための保障でなければならない本質を、鋭く言い表したことばだと思います。
「cinema de 憲法」としても、優れた一本だったと思います。評論子は。

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talkie
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