MINAMATA ミナマタ
劇場公開日 2021年9月23日
解説
ジョニー・デップが製作・主演を務め、水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いた伝記ドラマ。1971年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミスは、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。衝撃を受けながらも冷静にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしまう。追い詰められた彼は水俣病と共に生きる人々に、あることを提案。ユージンが撮影した写真は、彼自身の人生と世界を変えることになる。「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイが共演し、日本からは真田広之、國村隼、美波らが参加。坂本龍一が音楽を手がけた。
2020年製作/115分/G/アメリカ
原題:Minamata
配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム
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水俣病の問題について詳しいわけではないが、実際に起きたことをかなりハリウッド風に脚色してることは映画を観ていても感じ取れるし、実際、物語的な面白さを優先して、史実を変えたところも多く、メインの登場人物のモデルになった方が、正確ではなくとも水俣病のことを知ってもらえるからという理由から映画を支持されているインタビュー記事も読んだ。
近年では、白人男性を一種のヒーローにして異文化を描くことを批判する声も高まっていて、その轍を踏んでいないとは言えないと思う。しかし、それでもこの映画に見応えがあるのは、作り手のこの事実を世界に知らしめたいという気持ちと、生半可なものは作れないという日本人キャストの本気が感じ取れるから。
被害者の声を届けるための情熱的なリーダーを演じる真田広之、被害者の悲しみと葛藤を過去最高の熱演で体現する加瀬亮、出番はわずかながら一瞬で凄みを感じさせる浅野忠信など、第一線の演者たちの気迫もすごいし、それに煽られるような熱気が映像に宿っているように感じられるのだ。
当事者の方々には複雑な胸中があると思うし、この映画を観て、当事者の声に耳を傾けないのは現実をエンタメとして消費したと謗られてもしょうがないだろう。しかし、この映画の実直さは否定できないし、それゆえに力のある作品に仕上がっていると思っている。
写真家ユージン・スミスの瞳を通じて語られるこの物語は、我々が常識として知る水俣病に関する知識や記憶にまた新たな情景をもたらしてくれる。外国から引き寄せられるようにやってきた彼は、ファインダー越しに何を見つめ、何を感じたのか。本作の起点が「海外から見つめる瞳」である意味は大きい。赤く照らされた現像液の中でじわりと像を浮かび上がらせていくのは、決して水俣だけにとどまらぬ、世界中に共通する普遍的な怒りと悲しみと、家族と愛情の物語なのかもしれない。それは同時にスミスと我々が「最後の一枚」へと導かれていく荘厳な道行きでもあるかのようだ。これで感動しておしまい、ではなく、本作をきっかけに公害問題のこと、発展の名の下に個を抑圧する社会のこと、それからスミスの生涯をもっと紐解きたくなる。ジョニー・デップだからこそ表現しえた力強い境地がそこにはあった。日本人キャスト一人ひとりにも深い感銘を覚える作品である。
ジョニーデップのような素晴らしい役者が
この映画を作ってくれて本当によかったと思う。
経済成長の名の下に
犠牲になった人々のことを
風化させないために、
現在も起きている理不尽な出来事と闘うために、
この映画は意義深いものだと思いました。
スミスの写真を改めて見てみたいと思う。
そして、多くの人にこの映画を見てほしいと思う。
2022年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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映画「MINAMATA ミナマタ」(アンドリュー・レビタス監督)から。
冒頭の「史実に基づいた作品」の表記に、
覚悟をもって鑑賞しなければ、と妙に緊張したのを覚えている。
その緊張を解いたのは、導入部のワンシーン、
アメリカを代表する写真家と称えられたユージンに、
アイリーンと名乗る女性が、写真撮影を依頼する場面だ」
確か「フジカラーのCM」に一言添えるだけの依頼。
彼が訊く。「台詞は?」彼女が答える。
「フジのカラーフィルムはどこの製品より色鮮やか、
僕のお墨付きだ」と説明。その台詞に、彼が突っ込む。
「カラー写真は撮ったことがない。ただの1度も。
俺の仕事を知る者なら当然気付くはずだ」と。
このファーストコンタクトが、彼をその気にさせた気がする。
わざと、白黒(モノクロ)写真しか撮らない写真家に、
「カラー写真のCM出演」を依頼する、そのテクニック、
お見事・・と拍手を送った。
あとは、絵画的な美しい映像を観ながら、期待どおりの展開に、
胸が熱くなって観終わった。
「写真は撮る者の魂の一部も奪い取る。
つまり写真家は無傷ではいられない」と言う写真家の覚悟と、
「撮っていいか聞かないの?」
「キスと同じで聞くのは野暮だ。今だと思ったら撮る」
「こんなふうに?」「そういうことだ」と言う、
少しだけホッとするシーンが私にはウケた。
「撮っていいですか?」と訊いてからシャッターを押すのでは、
本当の写真が撮れない・・という意味だろう。
水俣病の若者に、カメラを渡してアドバイスする。
「見ろ、誰でもできる。訓練は必要ない。
狙いをつけたら焦点を合わせ、パシャリ」
どちらも、同じことを言っているんだよなぁ。
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