ミナリ

劇場公開日:

解説

1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた家族映画。2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した。農業での成功を目指し、家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは不安を抱くが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだす。やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャも加わり、デビッドと奇妙な絆で結ばれていく。しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかり……。父ジェイコブを「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、母モニカを「海にかかる霧」のハン・イェリ、祖母スンジャを「ハウスメイド」のユン・ヨジョンが演じた。韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督・脚本を手がけた。第78回ゴールデングローブ賞では、アメリカ映画だが大半が韓国語のセリフであることから外国語映画賞にノミネートされ、受賞を果たす。第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など計6部門にノミネート。祖母スンジャを演じたユン・ヨジョンが助演女優賞に輝いた。

2020年製作/115分/G/アメリカ
原題:Minari
配給:ギャガ
劇場公開日:2021年3月19日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第45回 日本アカデミー賞(2022年)

ノミネート

最優秀外国作品賞  

第78回 ゴールデングローブ賞(2021年)

受賞

最優秀外国語映画賞  
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Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

映画レビュー

4.0開拓精神

2021年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2000年代にLAに住んでいたが、韓国からの留学生が多かった。LAのコリアタウンも急速な勢いで発展していて、LAにいながらにして国の勢いを感じたのをよく覚えている。
アメリカ全体の人口比率からすると少数だが、移民者の中では韓国出身はかなり多くて、米国移民者の出身国として9番目に多いそうだ。移民が増加し始めたのは1980年代だそうで、この映画が描くのはちょうどその頃だ。本作で描かれる韓国からの移民一家は、韓国移民社会にとっての先駆者的な立ち位置になるだろうか。
韓国人一家が主役であるために、言語の多くはハングルで、それが理由でゴールデングローブ賞では外国語映画部門にカテゴライズされたことが物議をかもしたが、本作が描くのは、初期の移民としてより良い生活を求めた彼らの苦労であり、それはアメリカの建国精神とも言える開拓者精神だ。その意味で、本作は確かにアメリカ映画だ。アメリカンドリームという言葉がまだ有効だった時代の物語だが、単純なサクセスストーリーにせず、多くの犠牲を払う夢のほろ苦さにあふれた作品になっている。祖母役のユン・ヨジョンが抜群に良いアクセントになっていて、作品全体を引き締めていた。

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杉本穂高

4.5この一家の暮らしをずっと、ずっと見守っていたくなる

2021年3月23日
PCから投稿

目下、アメリカ映画が多文化的な進化を続けている。これもその流れを強く感じさせる一作だ。韓国からアメリカ、アーカンソー州へ越してきた家族。彼らを待ち構える運命は決して前途洋洋とは言い難い。だが、本作には眩い光がある。輝きがある。何よりもこの映画は一つの文化に閉じこもることなく、常にあらゆる観客の感性に向けて開かれた大らかさを持っているかのよう。土の香りや植物の緑。農作物のみずみずしさや木漏れ日の美しさ。とりわけ変幻自在に全編を彩る「水」と「火」は印象的で、これらは対極的なイメージでありながら、いずれも家族を写しだす鏡とさえ言える存在だ。兎にも角にも、従来の米映画が描かなかった新たな物語であり、なおかつ”開拓”という意味合いではあらゆるアメリカ人に通底する側面を持った本作。家族を演じた面々のハーモニーが素晴らしい。新風を吹かせる”おばあちゃん”や隠遁者風のウィル・パットンの味わい深さも絶品だ。

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共感した! 19件)
牛津厚信

4.0家族がたくましく生きる姿が静かに深い感動を呼ぶ

2021年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
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共感した! 20件)
和田隆

4.0本作の成功はほんの1部分に過ぎない

2021年3月19日
PCから投稿

泣ける

笑える

描くのは一言で言って「人生」。アメリカ、アーカンソーの荒れた土地を耕して農場を作ろうとする韓国人移民一家に降りかかる、苦労と災難、夫婦間のすれ違い、子供たちのゆっくりとした成長、世代間の融合、etc。実は最近、あまり描かれることがなかった生きることそのものがもたらす、切実さと静かな感動がここ
にはある。あえて書き加えるなら、慣れない場所に住まい、同化することの困難さ、その力強さが、妙に心をざわつかせる。ミナリとは、どこにでも根を張り、成長する韓国産セリのことだとか。なるほどと思う。それは、監督のリー・アイザック・チョンと主演のスフィーヴン・ユァンたちが築いてきた、韓国にルーツを持つアメリカ人たちが歩んできたリアルな時間にも繋がるからだ。彼らと同じ移民2世3世たちは、この映画に自らを重ねただろうし、また、受け入れた側のアメリカ人たちは、母国について改めて思いを馳せたに違いない。そうして観客の裾野は広がり、結果、今年の賞レースをリードすることになったのだと思う。本作を観て感動したJ.J.エイブラムスは、自らがプロデュースする「君の名は。」のハリウッド実写リメイクの監督にチョンを指名したことでも分かるように、アジアン・パワーはハリウッドに深く根を張り、逞しく成長を続けている。「ミナリ」の成功はほんの1部分に過ぎないのである。

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清藤秀人
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