劇場公開日 2021年3月19日

「開拓精神」ミナリ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0開拓精神

2021年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2000年代にLAに住んでいたが、韓国からの留学生が多かった。LAのコリアタウンも急速な勢いで発展していて、LAにいながらにして国の勢いを感じたのをよく覚えている。
アメリカ全体の人口比率からすると少数だが、移民者の中では韓国出身はかなり多くて、米国移民者の出身国として9番目に多いそうだ。移民が増加し始めたのは1980年代だそうで、この映画が描くのはちょうどその頃だ。本作で描かれる韓国からの移民一家は、韓国移民社会にとっての先駆者的な立ち位置になるだろうか。
韓国人一家が主役であるために、言語の多くはハングルで、それが理由でゴールデングローブ賞では外国語映画部門にカテゴライズされたことが物議をかもしたが、本作が描くのは、初期の移民としてより良い生活を求めた彼らの苦労であり、それはアメリカの建国精神とも言える開拓者精神だ。その意味で、本作は確かにアメリカ映画だ。アメリカンドリームという言葉がまだ有効だった時代の物語だが、単純なサクセスストーリーにせず、多くの犠牲を払う夢のほろ苦さにあふれた作品になっている。祖母役のユン・ヨジョンが抜群に良いアクセントになっていて、作品全体を引き締めていた。

杉本穂高