リバー・オブ・グラス

劇場公開日:

リバー・オブ・グラス

解説

「ウェンディ&ルーシー」のケリー・ライカート監督が1994年に発表した長編デビュー作。南フロリダ郊外の平屋建ての家で暮らす30歳の主婦コージーは、退屈な毎日に不満を募らせていた。空想癖のある彼女は、人のいい夫婦が大きなステーションワゴンでやって来て自分の子どもたちを引き取っていくこと、そして彼女自身は新しい人生を始めることを、延々と夢見ている。コージーの父ライダーはマイアミ警察署の刑事だが、酒を飲みすぎて銃をどこかに置き忘れてしまい、見つかるまで停職を食らっている。ある日、地元のバーへ出かけたコージーは、うだつの上がらない男リーと出会い親しくなるが……。

1994年製作/76分/アメリカ
原題または英題:River of Grass
配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム
劇場公開日:2021年7月17日

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(C)1995 COZY PRODUCTIONS

映画レビュー

4.0奇妙に開放的

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ケリー・ライカート監督の長編デビュー作がU-NEXTで観られるようになっていたので、「ファースト・カウ」鑑賞の前に観てみた。30歳の主婦が自由な生き方を夢見ている。そんな時に、うだつの上がらない男と出会い、あてのない逃避行に出てしまう。なんだか「ボニー&クライド」っぽいが、あんなに格好良くはないのだ。というか、ほとんど何の取り柄もなさそうな二人が、「ここではないどこか」に憧れて、「何者かになりたくて」行動するが、全くどこにもいけないし、何者にもなれない。そう書くと、閉鎖的な物語っぽいのだけど、奇妙な解放感がある。
なぜかこの映画、格好良くなさがすごくいいし、どこにも行けないくせにちょっと救われたような気分になれる。アメリカ南部の雰囲気のせいだろうか。
バーバラ・ローデンの「ワンダ」に似ているという人が多いみたいだが、確かに雰囲気は似ているし、家庭に縛られていた女性の自由を求める逃避行という点でも共通している。

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杉本穂高

4.5犯罪者にもなれない男女のどこにも行けないロードムービー。

2021年10月31日
PCから投稿
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村山章

4.5主婦の煮詰まった日常と湿地。

2024年4月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ケリーライカート研究第2弾、彼女の長編一作目。やっぱりデビュー作は凄い良い。

アメリカの湿地帯で煮詰まりまくったダメ主婦と悪にもなりきれない男のショボい逃避行話。拳銃無くす癖がある警官で主人公の父親がまたショボい。
70年代風やる気の無い映像もカッコいい。
ぶっきらぼうに見えるけど繊細で計算されてる。
長編一作目だけど凄い濃密、こりゃ注目されるわな。

ダメ主婦が覚醒する終わり方が結構凄いよ。

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masayasama

4.0ブラック味が割と強い、ライカートのデビュー作

2024年4月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

ライカートの長編デビュー作らしい。
舞台は、自分が生まれ育ったマイアミ。ライカートの実際の父母も警察関係者だったようなので、主人公の父も刑事という設定。
デビュー作ということで、満を持して勝手知ったるその二つを手堅く据えつつ、その分伸び伸びとストーリーを膨らませていったのではないかと想像するが、結果的にとても面白い作品になっていると思う。

ネタバレを避けるが、父の落とした拳銃の数奇な行く末や、まるっきりの偶然だったはずの出来事が、いつの間にか全く違った意味を持って結びついてしまう展開がよくできている。

想像力豊かなコージーの脳内では、ドラマチックな逃避行だったはずなのに、ズレてズレて見事に陳腐になっていく様子は哀れであるが、同時に、観ているこちら側を「そんなに大袈裟なことは簡単には起きない」と、ホッとさせもする。

だが、映画冒頭から様々に繰り返し写真や言葉で提示されるように、些細なことの積み重ねが、結果として取り返しのつかない殺人等のきっかけにつながってしまうこともちょこちょこ明示され、「そうした大袈裟なことは、案外簡単におきる可能性もある」ということが同時に伝わってくる。

相手への攻撃を容易に行える「銃」というものの存在について問いかけるとともに、自分の人生を変えようとするならば、流されたままではなく、自分の意志で線を越える必要があることを、ブラックな味付けで描いた作品と受け取った。

主人公のコージーと一緒に逃げるリーの情けない僕ちゃんな感じが、自分には微笑ましかった。
そして、コージーの父が、物をなくした時の、泣きたくなるような状況をとても上手に表現していて好印象。まあ、あれだけ無頓着ならそうなるよねぇ…。プロを目指していたというドラムソロにはシビれた。

全編通して、ライカート監督の張り切り具合が伝わってくる一作。自分は、一番笑えた。

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sow_miya