世界の映画人が愛する伝説的映画 バーバラ・ローデン「WANDA ワンダ」が日本劇場初公開

2022年4月7日 17:00

世界の名立たる映画人が賞賛する傑作
世界の名立たる映画人が賞賛する傑作

バーバラ・ローデン監督・脚本・主演のデビュー作かつ遺作で、世界中の名立たる映画人やアーティストたちから愛される映画「WANDA ワンダ」が、マーティン・スコセッシ監督設立のザ・フィルム・ファウンデーションとGUCCIの支援で修復され、7月9日に日本で初めて劇場公開される。日本版ポスターのほか場面写真、予告映像も披露された。

ある炭鉱の妻が、夫に離別され、子も職も失い、有り金もすられる。少ないチャンスをすべて使い果たしたワンダは、薄暗いバーで知り合った傲慢な男といつの間にか犯罪の共犯者として逃避行を続ける……。アメリカの底辺社会の片隅に取り残され、崖っぷちをさまよう女性の姿を切実に描き、1970年代アメリカ・インディペンデント映画の道筋を開いたロードムービー。

70年のベネチア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞したアメリカ映画であり、71年のカンヌ国際映画祭で上映された唯一のアメリカ映画。その名声とは裏腹にアメリカ本国ではほぼ黙殺されたが、マルグリット・デュラスマーティン・スコセッシジョン・カサベテスイザベル・ユペール、ダルデンヌ兄弟、ジョン・レノンオノ・ヨーコジョン・ウォーターズケリー・ライカートソフィア・コッポラら世界の名立たる映画人やアーティストたちが賞賛している。

監督・脚本・主演のローデンは、生まれ故郷ノースカロライナ州での虐待を受けた子ども時代から逃れ、16歳でニューヨークに移住。ダンサーやピンナップモデルを経て女優となり、社会派の巨匠エリア・カザン監督の映画「草原の輝き」(61)に出演。64年、カザンの演出でアーサー・ミラーの戯曲「アフター・ザ・フォール」でトニー賞の主演女優賞を受賞。カザンはローデンの演技を賞賛し、ふたりはその後、2度目となる結婚をする。長年、女性らしさに縛られ、女性らしさを売り物にしてきたローデンは、30歳を過ぎた頃、自分のアイデンティティや目標を見出せない従順な女性像に疑問を持つ。本作「WANDA ワンダ」の製作は、すなわち彼女の独立宣言であり、カザンの妻と呼ばれることから、他人に書かれた役を演じることから逃れる生き方を実証した。そして80年、乳がんにより48歳の短い生涯を終えた。

2003年、フランスの大女優イザベル・ユペールが映画の配給権を買い取りこの幻の映画をフランスで甦らせた。07年、閉鎖前のハリウッド・フィルム&ビデオ・ラボの書庫を訪れたUCLA フィルム&テレビジョン・アーカイブの修復師が、放置されていたオリジナルのネガ・フィルムを発見し、破壊から救い出した。10年には、スコセッシ監督が設立した映画保存運営組織ザ・フィルム・ファウンデーションとイタリアのファッションブランド・GUCCIの支援を受け、プリントが修復される。

この修復版は、ニューヨーク近代美術館で上映され行列が出来るほど大成功を収め、同年、ベネチア国際映画祭で再び上映された。そして17年に「文化的、歴史的、または審美的に重要」と後世に残す価値がある映画として「スーパーマン」(78)、「フィールド・オブ・ドリームス」(89)、「タイタニック」(97)などと共に認められ、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。時間が経つにつれて貴重な作品として認識された本作は、アメリカ映画の公式な歴史にはほとんど登場しないが、アメリカ・インディペンデント映画の代表作として注目されている。

7月9日から、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

■コメント

バーバラ・ローデンの「WANDA ワンダ」を配給したいのです。私が配給会社をやっているわけじゃないけど。そういうことを言っているのじゃなく、つまり全精力を尽くしてあの映画をフランスの観客に届けたいのです。私はできると信じています。「WANDA ワンダ」にはひとつの奇蹟があると思います。通常、映像表現とテキスト、被写体とアクションの間には距離があります。でも、その距離が完全に消えて、バーバラ・ローデンとワンダの間には、瞬間的かつ永続的な連続性があるのです。
マルグリット・デュラス(フランスの小説家、脚本家、映画監督)

「WANDA ワンダ」は紛れもなく映画界の最高傑作のひとつに数えられる。ローデンは、たった1本の長編映画を撮っただけなのに、その1本で映画の歴史に深く刻まれた特別な監督のひとりです。「WANDA ワンダ」の中には、映画業界のメタファーを見逃さずにはいられませんでした。悪党とその共犯者、まるで映画監督とその女優のように。そこでは、従順で要求が多く、咎め立てられずに消費される一方で、男たちは、映画監督たちは、ちっぽけなヤクザ者として振る舞うのです。全てが非合法な文脈の中にあるものです。映画では、表向きに語られていることもあれば、その裏で語られていることもあります。バーバラ・ローデンは映画のアウトロー的な側面について極めて上手く訴えています。
イザベル・ユペール(フランスの女優)

なぜバーバラ・ローデンは映画史の中でもっと称賛されないのでしょうか?私には理解できない。彼女の演技やフレーミングのセンスもさることながら、この映画で彼女が思いもよらない方法でジャンルを弄んでいるのが好きです。当時、他に誰がそんなことをやっていたのでしょう? 場所と人々の真の感覚を得ることができ、脇役も皆素晴らしい。
ケリー・ライカート(映画監督)

■海外レビュー
「WANDA ワンダ」は、「ボニーとクライド 俺たちに明日はない」に影響を受けた素晴らしい作品であり、アメリカの暴力と絶望のビジョンを、特に男性的で深い心理的なものとして捉え直している。ケリー・ライカート監督の「リバー・オブ・グラス」は、この作品を抜きにしては考えられない。
Time Out

初監督作品としては、これ以上の作品、これ以上の機転の利いた作品、これ以上の難易度の高い作品は考えられないだろう。ヒロインをセンセーショナルにしたり、贔屓にしたりすることなく、彼女の面白さを見出しているという点で、この作品は著しく女性向けの映画であると言える。
The New York Times

「WANDA ワンダ」のキャラクターは、14年後に公開された「パリ、テキサス」の、ほとんど無口なトラヴィスを思い出させる。
Little White Lies

すぐに見てください。友達に見せてください。お母さんにも見せてあげてください。この映画について何度も話してください。この映画が消えてしまっては困るのです。
Boston Globe

この作品の評価は、近年、若手監督の間で非常に高くなっており、ルー・リードの「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはレコードがあまり売れなかったが、レコードを買った人はみんなバンドを始めた」というジョークを思い起こさせる。
The Ringers

ローデン監督は骨の髄まで贅肉を削ぎ落とした超大作のヴェリテ映画を作った。
The Atlantic

手持ちの16ミリカメラはこの厳しいストーリーを完璧に表現しているが、音質はその場で作られたポルノ映画のように、ちぐはぐでバラバラである。奇妙なことに、この音の悪さがこの映画の信憑性を高めている。
Senses of Cinema

「WANDA ワンダ」は、シャンタル・アケルマンの「ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン」の映画的な精神的姉妹である。この2つの映画の大きな違いは、一方がプレミア上映されフェミニストの傑作として賞賛されたのに対し、もう一方の作品はまったく陽の目も見ないまま、その後ほとんど忘れ去られてしまった傑作だ。
aVoir-aLire.com

この映画は「道」と「ボニーとクライド 俺たちに明日はない」を混ぜたような映画で、どちらの映画にもないロマンがある。行動や登場人物をドラマチックにしようとしていないことは非常に立派だ。
The Village Voice

有名なエリア・カザンの妻が監督した唯一の映画を見たいのであれば、「WANDA/ワンダ」はその歴史的重要性のために見るべき映画である。そして何よりも、他の時代の映画とは全く異なる1970年代の作品を探しているなら、そして質の高いインディペンデント映画製作の最初の例の一つを探しているなら、「WANDA ワンダ」を見る必要がある。
IndieWire

無視された小さな傑作。世界は「ワンダ」のような映画をもっと必要としている。ラストシーンのフリーズフレームの画像は、永遠に私たちの心に残る。
Variety

WANDA ワンダ」は紛れもなく映画界の最高傑作のひとつに数えられる。ローデンは、たった1本の長編映画を撮っただけなのに、その映画で映画の歴史に深く刻まれた特別な監督の一人だ。
Positif

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