グレイハウンド : 映画評論・批評

2020年8月11日更新

Apple TV+で独占配信中。トム・ハンクス脚本・主演の戦争アクションドラマ

戦争、戦記物の中でも潜水艦は根強い人気を誇るジャンル。古くは「深く静かに潜行せよ」「原子力潜水艦浮上せず」があり、「眼下の敵」「U・ボート」「北極の基地 潜航大作戦」「レッド・オクトーバーを追え!」「U-571」などオスカーに絡んだ名作も数多い。日本でも「潜水艦イ-57降伏せず」から、近年は「空母いぶき」「真夏のオリオン」などの作品も作られている。

壁面をみっしり覆う計器の数々。張り巡らされた鉄管。専門用語が飛び交う艦内。乗組員たちの無駄のない身のこなし。密閉された空間で展開する姿の見えない敵との駆け引き、あるいは味方との確執など、潜水艦映画の魅力は尽きない。その中でも、本作は第2次大戦下の、いわゆる「大西洋の戦い」ものである。

英国に補給物資を届ける大船団を護衛する、クラウス艦長(トム・ハンクス)率いる米駆逐艦グレイハウンドと、待ち受けるUボートの死闘を描く。原作は「ホーンブロワー」シリーズや「アフリカの女王」で知られる冒険小説作家フォレスターによる65年前の「駆逐艦キーリング」(原題The Good Shepherd)。今回の映像化に合わせて新訳版が復刊している。

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当然のことだが、書籍の方が乗員たち個々のキャラクター、戦局や戦略の意味などが深く理解できるが、読むだけではなかなか想像しにくい各艦の距離感や迫り来る魚雷の影、敵を破壊したときのカタルシスは、やはり映像の方が堪能できる。最近の「バトルシップ」「ハンターキラー」的なCGを駆使しつつ、海の攻防戦を俯瞰あるいは寄りで撮りきったアクション満載の映像は、カメラマン出身のシュナイダー監督だから出来たことなのかも知れない。

トム・ハンクスが手がけた脚本は、従来の潜水艦映画のような敵ナチスの司令官や兵士たち人間を表現することは一切せず、「狼」と恐れられたUボート(わざわざ艦体に狼のペインティング)自体をひとつの生き物のように描くことで、得体の知れない不気味さを演出している。その分、常に冷静沈着に振る舞いつつ、ひとり重圧に耐えるクラウスがより人間的に見えてくる。うがった見方をすれば、主役ハンクス自身が一番目立つシナリオに仕上げた、ということか。とは言え300ページ超の原作を、実質80分にまとめた手腕はさすがだ。

ソニー・ピクチャーズの夏映画の目玉として公開される予定だったが、コロナ禍で公開延期となったため、結局Apple TV+での独占配信が決定したこの作品。定額配信系の中では、最も意識の高いラインナップのApple TV+に、ゴリゴリ直球の戦争アクションは浮き気味だが、トム・ハンクスの存在がそれを和らげている。コロナの影響とはいえ、この規模の作品が手軽に配信で見られるとは、すごい時代になったものだ。

本田敬

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