1917 命をかけた伝令のレビュー・感想・評価
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「ワンカット」は、製作側の自己満足
第一次世界大戦時。独軍の罠に嵌る部隊を救うために決死の伝令に出る一兵士を描く物語。
実際は違っていたようですが、公開時に「ワンカット」と宣伝されていた作品ですね。
「ワンカット」にした理由をサム・メンデス監督は「すべての瞬間、主人公たちと一緒に歩いている感覚を共有してほしいと思った」と述べているようです。
ただ、私にとっては、その試みはマイナスにしかなりませんでした。私が感じる緊迫感は、登場人物への共感ではなく、役者や撮影スタッフに対するそれ。ミスしたら最初に戻ってやり直しになるその緊張感にあてられて、物語が頭に入ってきません。
主人公が困難や脅威にさらされる設定も不十分だったように感じます。大切な戦友を失いますが、その後は友軍と行動を共にして一息付き、少し幻想的な夜でまた一息付き、いつの間にか目的の部隊に辿り着いてしまいます。
正直、「拍子抜け」の言葉を感じてしまいました。
ALL TIME BESTにも選ばれ、ネットで高い評価も散見されますが、私には合わない映画だったようです。
私的評価は厳しめです。
ドキュメンタリータッチ
戦争の不条理と人生の無常
観終わって、戦争の不条理、人生の無常という言葉が浮かんできた。戦争映画ではあるが、従来作とは些か異なる作品だった。戦争映画というよりは、哲学的な領域まで踏み込んだ作品だった。アカデミー賞作品賞ノミネートに相応しい作品だった。
本作の舞台は1917年、第一世界大戦中のフランス。主人公は、連合国軍のイギリス軍兵士・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)、ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)。彼らは、ドイツ軍追撃中のマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)への追撃中止命令の伝令役を命じられる。彼らは、危険な任務に戸惑いながらも、懸命に様々な困難に立向っていくが、そこには、熾烈な運命が待ち受けていた・・・。
本作は、ワンカットのような映像、前後と左右のカメラワークの使い分け、戦争の緊迫と静寂を巧みに織り込んで、主人公達の道程を描いている。それによって、いつ、何が起きるか分からない、生と死が常に隣り合わせの、不条理な戦争の姿を浮き彫りにしている。
冒頭の塹壕シーンからラストまで、画面から目を離すことができない。全編、ワンカットのように見える映像で主人公達を追っていくので、彼らに帯同しているような雰囲気になる。
加えて、カメラワークが絶妙である。緊迫したシーンでは、カメラは主人公達を前後から捉える。カメラの前後の映像は、観客に不安感を与える。主人公達の居る戦場に放り込まれたような臨場感、緊迫感でハラハラドキドキ感が止まらない。
一方、主人公達が一時の静寂の中で語り合うシーンは、彼らをカメラの左右の動きで捉えるので安心感があり、落ち着いた気持ちで彼らの会話を聞くことができる。
後半になると、物語は、戦争とともに、主人公達の生き方、人生に迫っていく。人生の無常といった哲学的な雰囲気が漂ってくる。切なさで胸が熱くなる。
本作は、臨場感ある映像で、戦争の不条理と、それに翻弄される人間の想いを綴った秀作である。
戦場を疑似体験するが如くの臨場感のある映画の形と、そこに込められた戦場の実態から戦争を考える
第一次世界大戦の悲惨な西部戦線を舞台にした戦争映画の力作。監督サム・メンデスが大戦に従軍した祖父アルフレッド・H・メンデスから聞かされたエピソードを基に脚本を創作したと云う。その為史実の正確な記録とは違い、描かれた細部に関しては単純な疑問が残る。ドイツ軍の戦略的退却に気付かず、1600人もの兵士を抱えるデヴォンシャー連隊第二大隊が独断で総攻撃を判断するものなのかどうか。その孤立を生むドイツ軍が電話線をすべて切断した通信不能に対して、他に伝達手段は無かったのか。それらを認めた上でも、伝令の任務をたった二人の下士官に任せることが作戦として不十分ではないのか。と言って、戦場の実態を知らない者が悩んでも結論は出ない。この映画は、そんなことよりも制作最大のコンセプトが別にあるようだ。
前評判通り、この映画のワンカット撮影に一見の価値があることは紛れもない事実である。その持続する緊張感がもたらす臨場感に終始心がひりひりしてしまう。まるで戦場を同時体験させるようなカメラアングルを貫き、観る者を画面の中へ取り込もうとしているからだ。それによって残酷で非情な戦場を疑似体験することに、この映画の醍醐味ある。その為の2時間に収めたギリギリの映像体験を目的とした作品と捉えていいのだろう。個人的には、これ以上の時間では心身ともに持たないと思った。それでいて緩急のメリハリが付けられたエピソードの展開が巧みに計算されていて、フィクションとしては完成度が高い。第一次世界大戦を象徴する塹壕戦をメインに、地下崩落からの脱出、空中戦から墜落して炎上する敵飛行機の襲来、別行動の連隊に出くわし車移動する一時の安息、ひとりで立ち向かう敵敗残兵との戦い、照明弾の明かりと燃え上がる建物の火で照らされる廃墟と化したエクーストの町、ドイツ兵から逃げ切った後の川下り、そして故郷を想う歌を静かに聴くデヴォンシャー連隊がいるクロワジルの森。常に主人公の傍近くを同行するように観客を仮想体験させる撮影の密着度が、この映画の命であるし肝と云える。
この一人称的主観描写は、ベルギーのダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」でも試みたように、登場人物が抱える問題を真剣に且つ深刻に考えさせる効果がある反面、客観的なショットが無いため映像空間の広がりが感じられない欠点がある。それを補うように、この作品では計算されたカメラワークで戦場を多角的に撮影して、しかも途切れが無いワンカットに繋げる技術を駆使していることは、素直に称賛に値する。墜落する敵飛行機が一端丘の裏に消えてから手前に向かってくるシーンの撮影など、高度なテクニックを必要とする場面が連続する。またこのシークエンスでは、血の気が引いて徐々に顔面蒼白になるトムの表情を雄弁に表現していて、その丁寧な拘りに感心せざるを得なかった。
死屍累々のこの世の地獄を克明に再現した映像の表現力にも抜かりが無い。今日の映像技術を遺憾なく発揮した努力は正当に評価されてしかるべき。ただ観終えて感じるのは、創作されたエピソードの連続が、欲を言えば出来すぎていて何処か人工的な色彩が勝ること。それが、川から死体の上を這い上がり川縁で泣き崩れるウィリアムの心情を、より映画の表情を持って共鳴を呼ばないことに繋がる。演出上の自然さが活きないシーンになっている。リアリティをとことん追求する映画の宿命であろう。その中で、この映画の最も素晴らしいショットは、最後の場面でウィリアムが伝令を命がけで遂行するため、塹壕から身を乗り出し突撃する仲間兵士と交差しながら丘を疾走するところだ。ここには戦争を強いられた兵士たちの勇敢さと、それを止めようとする一人の兵士を美しくも悲愴感のある一枚の絵画として象徴的に映し出した映画ならではの表現力と表情がある。それは時代と場所を選ばず世界の何処かに存在してしまう、人の世を批判して訴える普遍性に至っている。本音を申せば、このショットだけで感動してしまい、このメンデス映画を全面的に認めても良いと思っている。観て良かった映画の一本になった。主演のジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマン共に一兵士になり切って、いい演技を見せてくれる。この二人の好演が人工的な映画に血を通わせている。
息つく暇も…
まるで自分もスコフィールドと共に戦場を走ってるかのように、こちらも息が上がるように感じる長回し撮影には驚いた。内容としては伝令を届けるというシンプルなものだが、最初は乗り気でなかった無謀な任務にも親友の死を看取った後、親友の兄を含む1600人の同胞の死を防ぐべく、命を賭けて無我夢中で走る姿は良かった。
まさに命懸けだ
2019年アカデミー賞の「撮影」「視覚」「音響」部門受賞作。
ということだけ知ってました(授賞式見てた)。
ストーリーはざっくり。
1917年イギリス対ドイツの戦争時。
「戦線から退避せよ」という将軍→大佐の命令を伝える兵士の話。
それだけですが。
真っ直ぐすすめは15kmほど。だけどそうはいかない。
待避壕の中を進む時もあれば、何もない野原の中を走る。
最初は二人、でも途中からはたった一人で。
静かなところと、砲弾行き交う中の爆音。
メリハリがすごくあって、もう何度も「わあ!」って驚いたり。
中盤以降は「走れ〜、行け〜」って、走れメロス状態の脳内。
自分の伝令が届かなかったら、より多くの味方が傷を負う。
いやいやどうする、どうなるの?とハラハラしどおしでした。
戦争物特有のどんより感(負傷とか)は、画面からさほど感じないので。
そういうのが苦手な人でも、大丈夫。
後意外な英国紳士俳優が、ゲストで出てました(ネタバレ省略)。
この話はサム・メンデス監督の祖父の体験や、戦友の話が参考になっているそうで。
その話も今の時代の時空を超えた伝令、だったのかもしれない。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「Yes、I will」(必ず届ける)
一兵卒の運命!
4
タイムリープできるなら映画館で観る
生と死の狭間
ストーリーがあんまり・・・
ワンカット映像の最高傑作
美しく静かで強烈な反戦映画
「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」とアドルノは言ってるし、アウシュヴィッツはどんな戦争とも同じレベルで語れないことはわかっている。でも、沢山の溺死体や怪我人や延々と続く塹壕の一方で、緑したたる草花や花びらの映像や照明や音楽や詩や歌がこれほど美しい戦争映画は初めて見たような気がする。とても静かで詩のようだった。
水の中に落ちて必死に泳ぎながら力つきたウィルが、舞ってきた花びらで意識が戻り陸にあがってひとり嗚咽して泣いた。自分の感情を吐き出すことができたんだろうか。そしてまた前進していく原動力はどこから来るんだろう。
のどかな牧場とミルクの後はやはり不穏で危険だった。でもそのミルクはひとときの屋内での静けさと赤ちゃんが生きのびる為のプレゼントに繋がった。
そもそもはCumberbatch鑑賞のために見た映画なので、若い二人の兵士が目指していたマッケンジー大佐=Cumberbatchを自分も心待ちにしていた、一刻も早く大佐の所に行かなくては!そしてうなじが映る後ろ姿のマッケンジー大佐!手紙を読んですぐに「攻撃停止!」かっちょいい!
1600名の命が助かった。責任の所在と命令系統が明確で、軍や隊同士の争いも見栄の張り合いもない。先の大戦で日本が負けたのは当然だ。万が一、戦争がこれから起こっても日本は負けるだろう。というか、世界レベルの戦争が起こったら地球は滅亡する。戦争映画は苦手だけれどCumberbatch主演のTVドラマ「パレーズ・エンド」を見ておいて良かった。第一次大戦中の英国軍の鉄ヘルメットと塹壕と軍服に目が慣れてた。「シャーロック」のモリアーティ役のアンドリュー・スコットが最初の方に出ていて嬉しかった。
ディーンが息絶える前に自分を抱えてくれてるウィルに聞いた「僕は死ぬのかな」、ウィルは「そうだよ」と答えた。この場面はベルモンドの「プロフェッショナル」前半のアフリカだった。走馬灯のようにモリコーネの音楽が頭の中を流れた。
臨場感 臨場感 臨場感
「戦争映画」というジャンルがあるとしたら、
これまで臨場感NO1は「プライベートライアン」
でした。
“臨場感”という点において
1917は越えてしまいました。
この映画が最も凄いのは
戦闘シーンがほとんど無いのに、
(戦争を止めるための伝令なのですから当然)
臨場感盛りだくさんに仕上げっている点です。
それには当然ワンカット(風)という
表現手法のおかげなのですね。
しかも、屋外のワンカットなんて・・・
見たことありません。
ストーリー展開も絶妙で、
静と動が交互に連続するので
見ていて緊張感を保ちやすいのです。
ずっと戦闘シーン(動)だと
疲れちゃうし、
エピソードシーン(静)ばっかりだと
臨場感が薄れるし。
「戦争映画」というジャンル全体が持つ
永遠のテーマが戦争賛辞ではなく、
戦争回避にあるとしたら、
この映画の描き方が”現在”において
的確なのです。
おそらくこの映画の第一印象は
世代によって異なるはずです。
若い世代はきっと“ゲームぽい”と
感じるはずです。ワンカットという手法が
完全にバトルロワイヤルTPSゲームだからです。
「西部戦線異状なし」を見た世代にも
「プライベートライアン」後に生まれた世代にも
両方に刺さるのです。
まだあります。
「戦争」という設定から離れたとしても、
全体の校正がロードムービーや
冒険活劇アドベンチャーとも言える展開なのです。
だから戦争映画は嫌いだ。という映画ファンにも
楽しめる構成になっているんです。
サムメンデスがそこまで考えたかどうかは
知りませんが。
これは傑作です。
どこでシーンを繋いでいるかに意識が取られ過ぎて…
「ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド」で第一次大戦物に触れた関係で
「西部戦線異状なし」に引き続いて鑑賞。
あたかもワンカットで撮ったと感じさせる
映像で話題になった作品だが、
逆にどこでシーンを繋いでいるかに
意識が取られ過ぎて、
観客が“戦場にいるような状態を味わう”
との謳いには、
皮肉にもむしろ反作用してしまい、
戦場になかなか入り込むことの出来ない
一要因になってしまった。
そもそも話の設定がよく解らない。
敵の罠だと判ったのが偵察飛行によるもの
だったほど
元々制空権を制しているのだから、
何故飛行機からの伝令投下にしないのか
との基本的な疑問から(祖父の話からの
引用ストーリーだとしても、
話の膨らませ方に無理があるのでは?)、
伝令に出発した後の各エピソード、
ドイツ軍が放棄した塹壕でのトラブル、
トラック部隊との合流移動、
敵スナイパーとの対決、
そして目指した森の近くでの女性と赤子との
触れ合い等々、
それぞれが本旨を上手く補完出来ていない
冗長なイメージで、
アカデミー賞では技術系部門のみの受賞に
終わったのが肯ける印象だった。
だから、信じられないようなカメラワークや
作品の全てをワンカット風に描くとの
撮影技術には驚かされるばかりの、
その点において優れた作品ではあるものの、
しかし、それ以上でもそれ以下でもなく、
正直なところ、
塹壕戦の描写やテーマ性の点において
「西部戦線異状なし」に及ぶべくもなく、
私にとっては、
長々と続く塹壕での主人公二人の移動の
序盤のシーンが全ての作品に思えた。
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