1917 命をかけた伝令のレビュー・感想・評価
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苦手な洋もの戦争映画だが
この映画を観ていてわかったことが。これまで洋ものの戦争映画は苦手だったが、その理由はテーマの重さもさることながら登場人物が多すぎて、個々の差別化が難しく感情移入がしにくかったことだと。その点、この映画は描き方が一人称に近くとても臨場感を持ちながら観ることができた。
ちょっと惜しかったのは市街地の場面。荒野の戦場に比べると、少しデフォルメしすぎで、リアリティに欠ける気がしたのが残念でした。
走れ
圧巻のワンカット
宣伝文句の没入感は伊達じゃない
どうやって撮ったんだ?というシーンが沢山
地図に強いからと伝令に選ばれたブレイク、偶然に同行することになったスコ
故郷に帰ることを快く思っていなかったスコだが、ブレイクの身の上話をジョークを交えながら聴く
兄のこと、母親のこと、農園のこと
ブレイクは優しさのために任を離れることになる
伝令を引き継ぐスコ、その目的は攻撃中止を伝え、ブレイクの兄に会い、ブレイクの母に手紙を送ること
様々な苦難に見舞われるも、散る桜を見て自らを奮い立たせる
自分の身を顧みず前線を身一つで駆け抜けるシーンが印象的
役目を終えたスコは遠くを見据えながら家族への想いを馳せる
超長回しにかけた作品
ストーリー導入部分から塹壕の爆発までカット割りを使わず一貫してカメラワークによる追尾でまるでリアルタイムを映しているかのような臨場感
こちらに選択権などは無く、気付けば導入~中盤まで連れていかれてしまう。
もちろん本当の長回しではなく、CGを使ったり所々で繋ぎ部分はあるのだが、おそらく気にしていなければ気付かない程度に工夫して【超長回し】を再現していて
映像に臨場感を与えたい、観客を驚かせたいという工夫が伝わるのでとても好感を抱けます。
ただ、中盤以降の映像はそこまでの情熱は感じない
悪い意味でマーベル作品のようなゲームのムービーシーンのような映像が続いてしまうのは
序盤に撮りたい全てを詰め込んだのだろうと思う。
満身創痍 このまま溺死してしまうかも知れないという時、桜の花びらを見て亡くした相棒の想いを思い出して奮起する描写はベタだがベタ好きな私には丁度良い。
プライベートライアンより長い冒頭シーンを撮ってみたい!という気持ちで始めたんだろう
一方的な思想の刷り込みは薄いので 戦争を題材にしたアトラクション映画
見事な映像技術
いやぁ、圧巻のワンカットですよね。
ラストの戦場を横切っていくシーンはグッとくる。
ワンカットだからこそ伝わるものがあるなーと。
個人的に首を絞めるシーンのところはなんか心にきた。
評判通りと言うのはこの事か・・・
見る前から高い評価を獲得していて、僕も同意見だ。技法や手法はどんなに奇抜でも肝心の映画の中身が伝わらなければ意味がない。この作品ではプロの仕事を見せて貰った。文句なし。
拘り抜いた撮影法から生まれる異常な緊張感
第一次世界大戦下において1600人もの兵士を救うための撤退命令を戦線に届けるべく戦場を駆け抜ける2人の若き兵士を描いた戦争映画。
全編ワンカット撮影を売りにした本作はどこに敵や罠が潜んでいるかわからない戦場を駆ける2人の主人公たちのリアルな視点により生まれる異常な緊張感と恐怖を表現した他に類を見ない作品だった。
各メディアでも特集されていた通りその撮影方法は多岐に渡り、ハンディカムはもちろん、車に乗ったままの撮影をすることで疾走感を演出したり、ワイヤーを用いた撮影でまるで宙に浮いてるような不思議な画角の映像などにより、常に主人公たちの目線もしくはその同行者のようなアングルで鑑賞できるため没入感が尋常ではなく、終始息苦しい笑。
さらには映像に一貫性を持たせるために全ての撮影を曇りの日に行ったそうでその拘りも尋常ではないと感じた。
また一つ新たな映像体験を味わえる作品だと思う。
第一次世界大戦の最前線、敵の罠である英国軍の作戦中止を伝令するとい...
第一次世界大戦の最前線、敵の罠である英国軍の作戦中止を伝令するという重要な任務。
ワンカット撮影されたというこの作品、戦争映画にあるような派手な戦闘シーンはないが、終始続く緊張感がすごい。のんびりとした風景から戦場へ場面が変わっていくシーンも戦争の怖さが伝わってくる。
違う角度から戦争を観る、新鮮な映画でした。
「ワンカット」は、製作側の自己満足
第一次世界大戦時。独軍の罠に嵌る部隊を救うために決死の伝令に出る一兵士を描く物語。
実際は違っていたようですが、公開時に「ワンカット」と宣伝されていた作品ですね。
「ワンカット」にした理由をサム・メンデス監督は「すべての瞬間、主人公たちと一緒に歩いている感覚を共有してほしいと思った」と述べているようです。
ただ、私にとっては、その試みはマイナスにしかなりませんでした。私が感じる緊迫感は、登場人物への共感ではなく、役者や撮影スタッフに対するそれ。ミスしたら最初に戻ってやり直しになるその緊張感にあてられて、物語が頭に入ってきません。
主人公が困難や脅威にさらされる設定も不十分だったように感じます。大切な戦友を失いますが、その後は友軍と行動を共にして一息付き、少し幻想的な夜でまた一息付き、いつの間にか目的の部隊に辿り着いてしまいます。
正直、「拍子抜け」の言葉を感じてしまいました。
ALL TIME BESTにも選ばれ、ネットで高い評価も散見されますが、私には合わない映画だったようです。
私的評価は厳しめです。
長回しの臨場感。そして登場人物への寄り添い。
○作品全体
長回しの映像の強みは臨場感だ。
その場で起こっていることがありのまま映されているように見せることができる。1917年の戦場という100年以上前の時代設定でありながら、作品に惹き込まれる要素はこの臨場感が大きかった。
長回しの演出はウィルに襲いかかる幾多の危機的状況や緊張を強いられる場面で発揮されていたが、それ以上にウィルの心情の変化をノンストップで映し出していたのが素晴らしかった。
最初は危険を冒してまで任務を受けるべきじゃない、という立場だったウィルが最終的には命を賭して任務をこなそうとする姿へと変わる。その変化の間には、兄を救おうとするトムとの時間があった。トムとともにいつ敵が現れるかわからない無人地帯を歩き、トムによって仕掛け爆弾から救われ、ジョークを話し、トムの最後を見届ける。それぞれの出来事は時間を切り取って映したものでなく、長回しによってずっと映されていた時間だ。二人の間にある友情のエクスキューズとして、二人で乗り越えてきた絶え間ない時間があり、その時間の描写によってウィルの心情変化に納得することができる。これはカメラを通してずっと近くで二人を見ていた、という体験があるからこそできる、納得なのだと思う。
ラストの「無事に戻って」と書かれた写真はトムのものなのかウィルのものなのかは分からない。
しかし、「帰りたくない」と断言していたウィルが、トムの死を介して心情に変化があったことを示すような「無事に戻って」という言葉だったと思う。誰かに伝えるべき言葉を守るためには、無事でいることと誰かの元へ向かう勇気が必要だと、一緒にいた時間の中でウィルがトムから受け取った「伝令」がその言葉なのかもしれない。
将軍から引き受けた伝令は終わったが、トムから引き受けた伝令はまだ終わっていない。トムの母へ手紙を書くという任務が、ウィルにはまだ残っている。そう感じさせるラストの視線だった。
○カメラワークとか
・ファーストシーンとラストシーンがほぼ同一。青空、草原、一本の木。二人で眠っていたファーストシーンの静けさと、ウィルだけが静かに遠くへ目線を送るラストシーン。いずれも同じような空間なのに静謐を感じるファーストシーンと寂寥を感じるラストシーンになっていた。
・冒頭、最前線まで行く塹壕の道は、10分近く歩き続ける。似たような絵になるからか、会話のなかで主導権を握る人物が前に出るっていう仕掛けがあった。ウィルが主導権を握ったのはトムにパンを分け与え、帰らないほうが楽だと話すところと、ソンムでの戦いやメダルについて話すところ。あとは任務に躍起になるトムが主導権を握る。主導権、というよりも前に出た人物の人物紹介みたいな感じだろうか。モノローグも使わず、二人がどういう人物なのか話す時間もない状況で、会話の中で紹介をしていく、といったような。
ドキュメンタリータッチ
兵士の目の高さのカメラが二時間、塹壕の中を進んでゆきます。
手持ちカメラ的映像で閉塞感抜群、スリラーも最上です。
米軍とは違う英軍の格調の高さがよく表現されています。
全編ワンショットみたような撮影だそうですが、あらかじめ知らせておかないと映画学校の生徒以外は気づきません。せっかく苦労したのにもったいないです。そうと知って観るとなかなか感心します。
戦争の不条理と人生の無常
観終わって、戦争の不条理、人生の無常という言葉が浮かんできた。戦争映画ではあるが、従来作とは些か異なる作品だった。戦争映画というよりは、哲学的な領域まで踏み込んだ作品だった。アカデミー賞作品賞ノミネートに相応しい作品だった。
本作の舞台は1917年、第一世界大戦中のフランス。主人公は、連合国軍のイギリス軍兵士・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)、ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)。彼らは、ドイツ軍追撃中のマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)への追撃中止命令の伝令役を命じられる。彼らは、危険な任務に戸惑いながらも、懸命に様々な困難に立向っていくが、そこには、熾烈な運命が待ち受けていた・・・。
本作は、ワンカットのような映像、前後と左右のカメラワークの使い分け、戦争の緊迫と静寂を巧みに織り込んで、主人公達の道程を描いている。それによって、いつ、何が起きるか分からない、生と死が常に隣り合わせの、不条理な戦争の姿を浮き彫りにしている。
冒頭の塹壕シーンからラストまで、画面から目を離すことができない。全編、ワンカットのように見える映像で主人公達を追っていくので、彼らに帯同しているような雰囲気になる。
加えて、カメラワークが絶妙である。緊迫したシーンでは、カメラは主人公達を前後から捉える。カメラの前後の映像は、観客に不安感を与える。主人公達の居る戦場に放り込まれたような臨場感、緊迫感でハラハラドキドキ感が止まらない。
一方、主人公達が一時の静寂の中で語り合うシーンは、彼らをカメラの左右の動きで捉えるので安心感があり、落ち着いた気持ちで彼らの会話を聞くことができる。
後半になると、物語は、戦争とともに、主人公達の生き方、人生に迫っていく。人生の無常といった哲学的な雰囲気が漂ってくる。切なさで胸が熱くなる。
本作は、臨場感ある映像で、戦争の不条理と、それに翻弄される人間の想いを綴った秀作である。
戦場を疑似体験するが如くの臨場感のある映画の形と、そこに込められた戦場の実態から戦争を考える
第一次世界大戦の悲惨な西部戦線を舞台にした戦争映画の力作。監督サム・メンデスが大戦に従軍した祖父アルフレッド・H・メンデスから聞かされたエピソードを基に脚本を創作したと云う。その為史実の正確な記録とは違い、描かれた細部に関しては単純な疑問が残る。ドイツ軍の戦略的退却に気付かず、1600人もの兵士を抱えるデヴォンシャー連隊第二大隊が独断で総攻撃を判断するものなのかどうか。その孤立を生むドイツ軍が電話線をすべて切断した通信不能に対して、他に伝達手段は無かったのか。それらを認めた上でも、伝令の任務をたった二人の下士官に任せることが作戦として不十分ではないのか。と言って、戦場の実態を知らない者が悩んでも結論は出ない。この映画は、そんなことよりも制作最大のコンセプトが別にあるようだ。
前評判通り、この映画のワンカット撮影に一見の価値があることは紛れもない事実である。その持続する緊張感がもたらす臨場感に終始心がひりひりしてしまう。まるで戦場を同時体験させるようなカメラアングルを貫き、観る者を画面の中へ取り込もうとしているからだ。それによって残酷で非情な戦場を疑似体験することに、この映画の醍醐味ある。その為の2時間に収めたギリギリの映像体験を目的とした作品と捉えていいのだろう。個人的には、これ以上の時間では心身ともに持たないと思った。それでいて緩急のメリハリが付けられたエピソードの展開が巧みに計算されていて、フィクションとしては完成度が高い。第一次世界大戦を象徴する塹壕戦をメインに、地下崩落からの脱出、空中戦から墜落して炎上する敵飛行機の襲来、別行動の連隊に出くわし車移動する一時の安息、ひとりで立ち向かう敵敗残兵との戦い、照明弾の明かりと燃え上がる建物の火で照らされる廃墟と化したエクーストの町、ドイツ兵から逃げ切った後の川下り、そして故郷を想う歌を静かに聴くデヴォンシャー連隊がいるクロワジルの森。常に主人公の傍近くを同行するように観客を仮想体験させる撮影の密着度が、この映画の命であるし肝と云える。
この一人称的主観描写は、ベルギーのダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」でも試みたように、登場人物が抱える問題を真剣に且つ深刻に考えさせる効果がある反面、客観的なショットが無いため映像空間の広がりが感じられない欠点がある。それを補うように、この作品では計算されたカメラワークで戦場を多角的に撮影して、しかも途切れが無いワンカットに繋げる技術を駆使していることは、素直に称賛に値する。墜落する敵飛行機が一端丘の裏に消えてから手前に向かってくるシーンの撮影など、高度なテクニックを必要とする場面が連続する。またこのシークエンスでは、血の気が引いて徐々に顔面蒼白になるトムの表情を雄弁に表現していて、その丁寧な拘りに感心せざるを得なかった。
死屍累々のこの世の地獄を克明に再現した映像の表現力にも抜かりが無い。今日の映像技術を遺憾なく発揮した努力は正当に評価されてしかるべき。ただ観終えて感じるのは、創作されたエピソードの連続が、欲を言えば出来すぎていて何処か人工的な色彩が勝ること。それが、川から死体の上を這い上がり川縁で泣き崩れるウィリアムの心情を、より映画の表情を持って共鳴を呼ばないことに繋がる。演出上の自然さが活きないシーンになっている。リアリティをとことん追求する映画の宿命であろう。その中で、この映画の最も素晴らしいショットは、最後の場面でウィリアムが伝令を命がけで遂行するため、塹壕から身を乗り出し突撃する仲間兵士と交差しながら丘を疾走するところだ。ここには戦争を強いられた兵士たちの勇敢さと、それを止めようとする一人の兵士を美しくも悲愴感のある一枚の絵画として象徴的に映し出した映画ならではの表現力と表情がある。それは時代と場所を選ばず世界の何処かに存在してしまう、人の世を批判して訴える普遍性に至っている。本音を申せば、このショットだけで感動してしまい、このメンデス映画を全面的に認めても良いと思っている。観て良かった映画の一本になった。主演のジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマン共に一兵士になり切って、いい演技を見せてくれる。この二人の好演が人工的な映画に血を通わせている。
全630件中、21~40件目を表示