第三夫人と髪飾り

劇場公開日:

第三夫人と髪飾り

解説・あらすじ

北ベトナムの富豪のもとへ嫁いできた14歳の第三夫人を主人公に、彼女を取り巻く愛憎や悲哀、希望を、美しく官能的につづったドラマ。ベトナムの新鋭アッシュ・メイフェア監督が自身の曾祖母の実話をもとに描き、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞した。19世紀の北ベトナム。14歳の少女メイは、絹の里を治める大地主の3番目の妻として嫁いでくる。一族が暮らす大邸宅には、唯一の息子を産んだ穏やかな第一夫人と、3人の娘を持つ魅惑的な第二夫人がいた。まだ無邪気だったメイは、この家では世継ぎとなる男の子を産んでこそ“奥様”になれることを知る。やがてメイも妊娠し、出産に向けて季節が流れていく中、第一夫人も妊娠していることが判明する。同じ頃、メイは第一夫人の息子ソンと第二夫人のある秘密を知る。出演は「青いパパイヤの香り」のトラン・ヌー・イェン・ケー、「クジラの島の忘れもの」のグエン・ニュー・クイン。

2018年製作/95分/R15+/ベトナム
原題または英題:The Third Wife
配給:クレストインターナショナル
劇場公開日:2019年10月11日

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映画レビュー

5.0ベトナムの恥部と美をともに描く

2019年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これが長編デビュー作というアッシュ・メイフェア監督だが、素晴らしい才能の持ち主だ。19世紀の女性の苦難と男性の不自由さをともに描き、安易な男女対立として描かない。女性は男を産むことだけが価値とされ、男性には自由な恋愛は許されない。一方の不自由がもう一方の不自由を生み出し、不自由が循環していることが描かれている。
美術にトラン・アン・ユンが参加していることもあって、セットとロケーションが美しい。ベトナムの歴史の恥部を描くと同時にベトナムの美しさも同時に描いているのが印象的だ。14歳の第三夫人が主人公だが、第一夫人、第二夫人の苦労も描かれており、3人が協力しあって困難を乗り越えようとしているのも本作の特徴で、大奥のような愛憎劇ではない。それは監督の祖母から聞いた話を基にしているそうだが、監督の家族とベトナム文化への深い愛が感じられる素晴らしい作品だ。今後、アジアを代表する監督に成長してほしい。

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杉本穂高

「エロさ」がキーワード

2025年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 19世紀のベトナムの村を舞台に、14歳にして富豪のオヤジの第三夫人となった少女が見つめる毎日を描いた物語です。全く何の予備知識もなく、このポスターと予告編だけに惹かれて足を運んだのですが、始まって暫くして、

 「この作品の監督って女性でないかな」

と感じました。僅かにハイキーな階調と、被写界深度を浅く取って背景を綺麗にぼかす映像が女性的に映ったのです。更に、エロい場面が非常に繊細で柔らかな点も特徴的でした。観終えてから調べると、やはりベトナムの女性監督でした。

 そう、本作は「エロさ」がキーワードです。実際の性愛場面は殆どないにもかかわらず、ふとした女性の表情や指先の動き、更には森の深い緑や川面に映る山々まですべてが穏やかなエロさを湛えています。そして、その裏側には、「女は後継ぎの男を産む道具」程度にしか考えられていなかった当時の女性の涙が滲んでいるのです。それだけに、森や川は一層哀しく映り、東南アジアの温度や湿度までもが感じられました。人の心を抱き込んで輝く自然の美しさです。いやぁ、参った。

 我々の知らない所にこんなに若くて凄い才能の監督がおられた事にまず驚きます。そして、この監督もやはりニューヨークに出て映画を学び、スパイク・リーに見出されて、本作でも彼の基金から助成を受けているのだとか。ベトナムに居たままだったら、この映画を撮る機会も得られなかったでしょう。日本の若い監督さん、冒険をしようとしない日本の映画界なんかに見切りを付けて世界に飛び出しましょう。

 2019/12/5 鑑賞

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La Strada

5.0人は仏の陰に積もる塵に過ぎないかもしれない でも、そこには赤い血が流れている

2025年3月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

去年あたりから、タイやらマレーシアやらの東南アジア発の作品が公開されているのを見つけたら、積極的に鑑賞しています。ベトナム発のものを見たことないなと思ってたら、先日公開の『その花は夜に咲く』を発見(と書きたくなるのは映画館貸切状態だったからです)、鑑賞しました。なんだか自分には合うなと感じたので、この監督の別の作品を、となって、配信でこれを探し当てた次第です(アッシュ•マイフェア監督のことはまったく知りませんでした)。

タイトルから真っ先に思い出したのはチャン•イーモウ監督の『紅夢』です。そう言えばコン•リーが第四夫人を演じてたな、あんな感じの憎悪剥き出しの愛憎劇かなと思って見始めたら、違っていました。確かに三人の夫人の間に嫉妬や競争心はうっすらとは見えるのですが、ひとつ屋根の下で暮らす運命共同体の成員として助け合って生きています。第一から第三までの夫人それぞれの性格が典型的な長女、次女、三女のそれのように描かれており、三姉妹ものを見ているのかと錯覚さえしました。

そんな物語が印象派の絵画を動かしてみたらこんな風になるのではないかといった美しい画面とともに展開します。見始めてすぐに映画館のスクリーンで見たかったなと思いました。ちょっとソフトな感じの画面で青を基調に緑の木々が繁り、黄色も散りばめられます。そこに交錯するのが赤、血の色です。赤い血が流れている人や生き物の様々な生と死が描かれます。食物連鎖で人より下位にある鶏の死。それと同じような、生殺与奪の権利を自分ではない誰かに握られている者の理不尽な死。

二作だけでの印象ですが、この監督は川や川の流れの使い方が非常に巧みです。川べりのあのシーンで生殺与奪の権利は行使されなかったと信じたいし、上流から下流に流れていった女性の象徴はやがて女性たちの明るい未来に流れつくと信じたいです。

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Freddie3v

3.0ラストシーンの解釈について

2023年10月14日
iPhoneアプリから投稿

第二夫人の娘が髪を切っていて、最後に一瞬だけ視線が誰かに向けられていて、ちょっと微笑んでいるようにも見える。多分、赤ちゃんと一緒にいるメイを見つけたのだろう。つまり、メイは赤ちゃんを黄色い花で毒殺していないということ。もし殺しているなら自分も死んで心中しているはず。彼女の性格から、子供だけ殺して、自分は生き延びるはずはない。したがって、メイと赤ちゃんは生きている・・・と解釈したい。

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ジョニーデブ